独立時計師ダヴィッド・カンドー(David Candaux)氏が、彫刻的な39.5mmのケースに新しいダブルテンプのムーブメントを搭載した新作を発表した。
ダヴィッド・カンドー(David Candaux)氏は、ほぼすべてのディテールにおいて独自のユニークな創造性にあふれた新作を発表した。これは、彼がムーブメントのアーキテクチャとデザインのアイデアを初めて考案してから10年以上を経て生まれた作品である。DC12 マーヴェリックは、ジュウ渓谷で生まれたこの独立時計師にとって新しいムーブメントであり、ディファレンシャル機構で接続されたダブルテンプを備え、それぞれのエネルギー入力を調整し平均化することで、同期を保っている。
C30と名づけられた新しいムーブメントは、そのほとんどがチタン製の部品とブリッジで構成されている。ドラマチックな曲線を描くケースもまた、サテンとポリッシュ仕上げを施したチタン製で、きわめて着用しやすい直径39.5mmだ。凹状のニッケルシルバー製ダイヤルには、ブルースティールのスモールセコンド針の歯車を収めたディファレンシャルが見え、建築的な高さのあるアプライドインデックスが緩やかな傾斜のホワイトのミニッツトラックを囲んでいる。DC12 マーヴェリックは、カンドー氏を故郷であるスイスの歴史的なウォッチメイキング技術への敬意を示しつつ、ムーブメントのデザインと仕上げにおいて徹底的にモダンな時計デザインである。
ジュネーブ・ウォッチ・デイズで、カンドー氏が今回リリースされる前に本作を我々にプレビューしてくれた際、彼は17年以上も前にダブルテンプムーブメントのデザインを検討し始めたと語った。そして今年6月になってようやく、彼は動作するプロトタイプムーブメントを完成させたばかりなのだ。限られた生産能力のため(2017年にスタートしたカンドー氏の名を冠したブランドは彼、彼の父、そしてパテック フィリップの元時計師を含むわずか3人で構成されている)、彼は年間10本から15本の時計を生産する予定。価格は9万8000スイスフラン(日本円で約1855万円)だ。
カンドー氏によると、DC12 マーヴェリックという名前は意外な海外の人物からインスピレーションを得ているという。その人物とは、テキサス州の弁護士、政治家、牧場主、土地所有者であったサミュエル・A・マーヴェリック(Samuel A. Maverick)だ。“maverick(編注;異端者を意味する)”という言葉は彼に由来しており、このモデル名はカンドー氏自身の独立性と、彼自身のやり方で物事を貫くというこだわりを強調していると語る。
その一例が、いわゆる“マジッククラウン”だ。これはカンドー氏の代表的な発明品のひとつで、以前のモデルでも採用されていたもの。ケース前面下部にぴったりと収まっており、下向きに押すと飛び出し、ムーブメントの巻き上げや時刻調整ができる仕組みだ。もう1度押すとリューズは元の位置に戻る。リューズの上、6時位置の下ではダイヤルに“LE COEUR & L’ESPRIT”(心と精神)と記されている。
ケース自体は、サテン仕上げとポリッシュ仕上げを施したチタン表面が、ドラマチックな曲線と傾斜した楕円形を際立たせている。ラグは彫刻的で長く、先細りになっているが、手首に沿うように内側に曲がっているため着用しやすい。シースルーバックからは、繊細でありながら主張のある、緻密な仕上げを施したチタン製ブリッジを見ることができ、ふたつのブリッジはそれぞれのテンプを対称的な曲線で包み込んでいる。
ニッケルシルバー製のダイヤルは、伝統的なブルースティール製ハンドセットが、シルバーグレインのテクスチャーの施されたダイヤル上で、カンドー氏独自の視認性に優れたデザインを表現している。ダイヤルは、3、6、9の数字が配されたホワイトオパールのアワーハンドトラックに囲まれている。12時位置は、ブルースティールのスモールセコンド針も稼働するオープンなディファレンシャル機構の底部で示されている。段差のついたアプライドのチタンインデックスは、凹状に傾斜したダイヤルの外周ミニッツトラックに劇的な立体感を与えている。
我々の考え
このユニークなムーブメントによって、カンドー氏はダブルテンプを備え、オープンワークを施し、そしてユニークな位置に配置されたディファレンシャル機構を驚くほどコンパクトで着用しやすいチタン製ケースに収め、きわめて読み取りやすいダイヤル構造とデザインを実現した。この時計はモダンな外観と感触を持ち、チタンケースの傾斜した曲線のおかげで、私のように手首が小さな人にもかなりしっくりとくる。
見えるムーブメントは眺める喜びを与えてくれると同時に、フィリップ・デュフォーのデュアリティなど、過去にダブルテンプを探求したジュウ渓谷の偉大な時計師たちに敬意を表している。このダヴィッド・カンドーによる並外れてモダンで比類なき新作は、彼らから間違いなくインスピレーションを受けているのだ。
基本情報
ブランド: ダヴィッド・カンドー(David Candaux)
モデル名: DC12 マーヴェリック(DC12 Maverik)
直径: 39.5mm
厚さ: 11.7mm
ケース素材: チタン
文字盤色: グレイン仕上げを施したシルバーとホワイトオパール
インデックス: 様々な高さで盛り上げられている、チタン製アプライド
夜光: なし
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: 手作りラバーストラップ、メタル&ベルクロクラスプ付き
ムーブメント情報
キャリバー: C30
機能: 時・分表示、12時位置にスモールセコンド、ディファレンシャル機構付きダブルテンプ
直径: 29.5mm
厚さ: 6.9mm
パワーリザーブ: 58時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万1600振動/時(3Hz)
石数: 45
クロノメーター認定: なし
価格&発売時期
価格: 9万8000スイスフラン(日本円で約1855万円)
発売時期: 最初のモデルは11月から納品開始
限定: なし、だが年間10本〜15本の限定生産