ブランパンスーパーコピーは、限定モデルのフィフティ ファゾムス 70thアニバーサリー アクト1を発表。

今年は多くの大型時計にとって、アニバーサリーイヤーであることをご存じだろうか。そして、時計ブランドは記念日を祝うのが好きなことも。ブランパンは、1953年に初のダイバーズウォッチを発表したことを記念して、限定モデルのフィフティ ファゾムス 70thアニバーサリー アクト1を発表。その名が示すように、この210本の限定モデルは、ブランパンのフィフティ ファゾムス70周年記念の幕開けを示し、アメリカ大陸、EMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)、アジア太平洋地域の3つの市場で、70本ずつの3シリーズが発売される。各シリーズの名称は、文字盤の6時位置に記載される(例えば、ここに掲載されているプレスリリースの画像では「シリーズI」となっている)。

この新しいフィフティ ファゾムスは、市場でも人気の高い42.3mm径で、通常生産されている45mmモデルよりも小さく、また最近発表された40mmの限定モデル(最近では、同じケースを使用したフィフティ ファゾムス ノー ラディエーション)よりも拡大された。鏡面仕上げのステンレススティール製ケース、発光するタイミングスケールを備えたドーム型サファイアベゼル、水深300mの防水性を実現するねじ込み式リューズなど、わずかに縮小された新しいケース以外、この時計の他の部分は、皆さんがご存じのフィフティ ファゾムスそのものだ。

ブラックのサンバーストダイヤルには、おなじみの(しかし賛否両論ある)4時半位置に日付表示窓が配置されているが、ひとつだけ目立った改良が施された。アプライドマーカーと数字は、スタンダードなフィフティ ファゾムスのように金属製の枠で囲まれておらず、代わりにマーカーのエッジまで夜光の塗布が行き届いている。実機でケースをまだ見ていないが、おそらく暗闇でより明るく発光するのだろう。また、その金属枠を取り除くことで、より伝統的なツールウォッチらしさも表現されている(チューダーではこのような手法を採用しているものもある)。サブマリーナーやゾディアックのシーウルフ(シーウルフのファンの方を忘れてませんよ)と並んで、近代的なプロフェッショナルダイバーズウォッチであるオリジナルのフィフティ ファゾムスへのトリビュートとして作られたこの時計にとって、これは意味のある小さなディテールだ。フィフティ ファゾムス アクトIには、「100%リサイクルされた、完全にリサイクル可能な漁網の糸」で作られたブラックのNATOスタイルのストラップが付属する。

ブランパン フィフティ ファゾムス アクトIは、2007年以来、安定した性能を発揮しているマニュファクチュール製Cal.1315を搭載。このムーブメントにはシリコン製ヒゲゼンマイが使用されており、トリプルバレルによって5日間のパワーリザーブを実現している。このアニバーサリーモデルでは、サファイアケースバックから見えるプラチナローターに記念のエングレービングが施され、特別感を演出している(70周年は「プラチナジュビリー」と表現されるためだが、お気づきだろうか)。

1980年代から2003年まで、フィフティ ファゾムスはほとんど眠っていた。そして、マーク A. ハイエックがブランドの代表取締役兼CEOに就任すると、熱心なダイバーである彼は、フィフティ ファゾムスをリローンチさせるときが来たと判断した。そこでブランパンは2003年、フィフティ ファゾムスの50周年を記念し、このモデルを現代に蘇らせる特別な限定モデルを発表したのだ。

今回の70周年記念限定モデルは、時計の外観から3つのシリーズをリリースする戦略まで、50周年記念限定モデルを意識したものだ。本機は、まさにロシアのマトリョーシカ人形とでも言うべき記念モデルだが、ブランパンによればこれはフィフティ ファゾムスの70周年を祝う1年間のイベントの「第1幕」に過ぎないと約束している。

もし、これがあなたの欲しいフィフティ ファゾムスでないとしても心配なしだ。まだ1月7日だ。ブランパンは、さらに多くのものを用意している。私のように、オリジナルのフィフティ ファゾムスを再現した40-41mmの日付なしモデルを待っているのであれば、期待しておこう。その一方で、これは素晴らしいリリースであり、フィフティ ファゾムスのラインナップに42mmケースが導入されたということは、いつか近いうちに、40mm限定版と大型45mmケースとの差を埋める、42mm径の通常モデルが登場することを期待させるものだ。

ブランパンはまだ価格を発表していないが、1万5000ドル以上(約200万円弱)になると予想される(Cal.1315を搭載した45mmの通常生産のフィフティ ファゾムスは、少なくとも190万円以上だ)。限定版、プラチナローター、インフレ、その他すべてを考慮し、特にNATOストラップのみの付属であるとはいえ、決して安いダイバーズウォッチとはならないだろう。

1950年代のブランパン フィフティ ファゾムスのオリジナルのブロンズケース。

70周年記念の第一幕で、ブランパンはクラシックウォッチの核心部分と、現代の買い手にアピールするために現代の製造品質(とサイズ)を更新することでバランスを取ったようだ。これは、ブランパンがフィフティ ファゾムスの本質を「理解」し、「台無しにしない」ことを理解していると示したのだと思う。まともな演劇のように、第一幕がセットアップの役割を果たすのであれば、2023年の残りの期間、ブランパンがフィフティ ファゾムスの70周年に何を用意しているのか、私は楽しみでならない。クライマックスはまだまだ先だ。

基本情報
ブランド: ブランパン(Blancpain)
モデル名: フィフティ ファゾムス 70th アニバーサリー アクト1(Fifty Fathoms 70th Anniversary Act 1)
型番: 5010A/B/C-1130-NABA

直径: 42.3mm
厚さ: 14.3mm
ラグ幅: 21.5mm
ケース素材: 鏡面仕上げのステンレススティール(サファイアベゼル)
文字盤色: ブラックのサンバースト
防水性能: 300m
ストラップ/ブレスレット: ブラックのNATOスタイルストラップ

Blancpain Fifty Fathoms 70th Anniversary Limited Edition Act 1
ムーブメント情報
キャリバー: ブランパンCal.1315(プラチナ製ローター)
機能: 時間表示と日付表示
直径: 30.6mm
厚さ: 5.65mm
パワーリザーブ: 120時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 4 Hz
追加情報: フィフティ ファゾムス70周年記念で追加された特別なプラチナローター

価格 & 発売時期
価格: 未定
発売時期: 2023年1月
限定: あり、合計210本 米州、EMEA(欧州、中東、アフリカ)、アジア太平洋の3地域で各70本。

オーデマ ピゲ ロイヤル オーク Ref.16202ジャンボにホワイトゴールドモデル登場、

オーデマ ピゲはその最も象徴的な時計に、おそらく長いあいだ待たされていたとはいえ、大規模な変更を加えた。オーデマ ピゲ ロイヤル オーク “ジャンボ”エクストラシンだ。我々はRef.15202に別れを告げ、生まれ変わったRef.16202を目にすることとなった。新しい時計のプロポーションはそのままに(昨年のベン・クライマーによる紹介記事)、内部のムーブメントは完全にオーバーホールされた。16202は、スティール、イエローゴールド、ピンクゴールド、プラチナの4種類の金属で発表された。そのなかで、(チタン以外に)意外にも存在しなかったのがホワイトゴールドだった。それが今日、大きく変わったのだ。

オーデマ ピゲは、16202のラインナップに新たに加わったRef.16202BC.OO.1240BC.02(このやけに長いリファレンスを覚えられるだろうか)を発表。39mmのロイヤル オーク“ジャンボ”エクストラ シンは、このモデルシリーズに期待されるものと同じケーススタイルだが、上部と下部にそれぞれいくつかの相違点がある。そして、このモデルは限定モデルで、その数量はまだわかっていない。

昨年の新作はオーデマ ピゲの特徴であるプチタペストリーが使われていたが、このホワイトゴールドのジャンボはテクスチャーの選択でより興味深いものとなった。このブルーグレインダイヤルは、1992年にロイヤル オークコレクション20周年記念として製作されたロイヤル オークモデル(当時はプラチナ製のRef.14802に採用)からインスピレーションを得たものだ。

もちろん、これは1992年製ではないので、このリバイバルダイヤルには改良が加えられている。オーデマ ピゲはダイヤルのテクスチャーを改良し、粒子をより細かく(そしてより明るく)することで、光の状況によって異なる表情を見せる効果を生み出した。ブルーの色調はPVD加工で得られ、さらに半透明のコーティングが施され、その色調を引き出している。日付表示窓は、ミッドナイトブルーの背景でダイヤルとカラーマッチングされている。

そのすべてがホワイトゴールドケースに収められ、ロイヤル オークの象徴とも言えるホワイトゴールドのブレスレットが装着された、まさにジェンタのフルパッケージと言えるモデルだ。内部には、2022年に向けて一新されたAP Cal.7121が搭載されている。昨年の紹介記事で述べたように、このムーブメントの製造には5年の歳月を要し、その過程で特許(クイックセットデイト機構)を取得する必要があった。この時計にはないが2022年の新作には存在するのが、50周年記念ローターだ。これはつまりロイヤル オークの50周年が終わり、前に進んでいるということを表しており、代わりにローターには大きなAPのロゴがあしらわれたものが採用された(それでもとても素敵だ)。

厚さ8.1mm、直径39mmのホワイトゴールド製だ。予定価格は973万5000円(税込)だ。

我々の考え
ロイヤル オークだ! それだけでテンションが上がる。この作品に関しては、ふたつのことを認めざるを得ない。最初に画像を見たとき、スティール製だと思い、過剰なまでに興奮してしまったこと。文字盤が画面から飛び出してきて、プチタペストリー(タペストリー疲れとでもいうのだろうか)よりも気持ちを揺さぶられてしまったのだ。そして、じっくり考えてみた。本当に昨年はホワイトゴールドの16202が発売されていなかったのだっけ? そこでHodinkeeの同僚にも聞いてみた。すると、どうだろう。確かにホワイトゴールドがないのだ。

しかし、それだけではなく、BC(ホワイトゴールド)のロイヤル オークを復活させる前に、基本的にRef.15202からのすべてのダイヤルのバリエーションがRef.16202のラインナップに占められ、そのなかにはグリーンダイヤルのプラチナモデルも含まれていたからだ。もし私が賭けをしていたら(実際はしていないが)、BCは期待していなかったと思う。サーモンダイヤル? そう、今日発売のホワイトゴールドモデルには、サーモンダイヤルの16202がないことにお気づきだろうか。15202の文字盤モデルで16202の枠に移し替えられてないのは結構存在するのである。

ロイヤル オーク 15202:2種類のケース素材と2色のカラーバリエーション

2021年にベン・クライマーは、グリーンダイヤルを備えたプラチナ製の15202と、、サーモンタペストリーダイヤルを有したホワイトゴールド製の15202の比較について記事を書いている。詳しくは、記事「オーデマ ピゲ ロイヤル オーク “ジャンボ” についての考察 – 新しいプラチナモデルをなぜ誰も好きと言おうとしないのか?」をご覧ください。

これはサーモンダイヤルの15202に希少性を与え、オーデマ ピゲがなぜこのダイヤルを新モデルのアップデートから除外したのかという疑問を抱かせる。もしかしたら、ホワイトゴールドは、中道左派的な面白いダイヤルを選択するための新しい温床になっているのだろうか? 現時点では何とも言えない。サーモンダイヤルの15202BCが発売されたとき、かなりの混乱があった。数量限定なのか? 限定生産なのか? 言うまでもなく、オーデマ ピゲのラインナップのなかで最もクールな時計のひとつは、答え以上に多くの疑問が生まれた。そしてそれは16202BCがリリースされた今日も変わらない。 

この些細なことにこだわるコレクターもいれば、こんなこともあったかもしれないと空想にふけるコレクターもいることだろう。また、このホワイトゴールドの斬新なブルーグレインのテクスチャーに目を奪われる人もいることは間違いない。

この新作は、私にとって二重の意味で興味深い。ひとつ目の理由は、ケースとブレスレットの素材そのものに結びついたものであり、ふたつ目の理由は、ふたつしかない非タペストリーのRef. 16202モデルとして、グリーンダイヤルのプラチナモデルと並べて置かれていることだ。それが、このモデルを特別なものにしているのである。

現時点では、ロイヤル オーク “ジャンボ”エクストラ シンは美学とスタイルがテーマだ。昨年は、機械的なアップグレードが行われた。ケースの寸法に干渉しないようなアップグレードである。クイックセットもついている。つまり、機能面では完璧なロイヤル オーク “ジャンボ”エクストラ シンなのだ。あとは、見た目のカッコよさを追求するだけ。

そして、この1本が、私のなかではとてもクールに思えるのだ。ブルーの文字盤表面の暗い色合いが好きだし、―遠くから見ると―街というものを見たことがないよう住人が暮らすような辺境の地で、夜空を見つめているようなシボ感があるのだ。そこから火星が見える。それがこのテクスチャーの意図するところであろうとなかろうと、私には関係ない。美しさは見る者の目のなかにあるのだから。

実物を見ずに言うのは気が引けるが、もし現在のコレクションのなかから選べるなら、私はブルーグレイン仕上げのホワイトゴールド製ジャンボを推したいと思う。シンプルでありながら、何か特別なものが散りばめられている。そして結局は、ロイヤル オークなのだ。

基本情報
ブランド: オーデマ ピゲ(Audemars Piguet)
モデル名: ロイヤル オーク “ジャンボ”エクストラ シン(Royal Oak “Jumbo” Extra-Thin)
型番: 16202BC.OO.1240BC.02

直径: 39mm
厚さ: 8.1
ケース素材: 18Kホワイトゴールド
文字盤色: ブルーグレイン
インデックス: アプライド
夜光: あり
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: ブレスレット

AP Royal Oak Jumbo 16202 WG
ムーブメント情報
キャリバー: 7121
機能: 時、分、日付
直径: 29.6mm
厚さ: 3.2mm
パワーリザーブ: 約55時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 4Hz (2万8800振動/時)
石数: 33
クロノメーター認定: なし

価格 & 発売時期
価格: 973万5000円(税込予価)
発売時期: 発売中、オーデマ ピゲブティックでのみ取り扱い

シャネル初のオートオルロジュリーメンズウォッチだ。

ラグジュアリーの世界において、企業が思いもよらないことをしたときに直面する問題は、例を挙げればきりがない。何かが破壊的で魅力的な革命であるのか、それともただ単に不快でブランドから外れているのか、それを予測することは非常に難しい(そしてそれを確実に実行できる人間は誰でも大儲けできるだろう)。もちろん、企業のアイデンティティを構成するものが何であるかは、誰に尋ねるかによってさまざまな答えが返ってくるものだが、大まかに言えば、有名企業の基本言語は少し決まっているように見えることがある。シャネルが男性向けの腕時計を作ると初めて聞いたとき、我々は何を期待したらいいのかわからなかった。しかしバーゼルワールドで見たムッシュー ドゥ シャネルに非常に感銘を受け、再びこの時計と出合い、長い時間をともにすることは、時計だけでなく、時計に付随する偏見や期待も含めて、より深く観察する機会となった。

ムッシュー ドゥ シャネルというのは難問である。まず、メンズウォッチと銘打たれていることで、メンズウォッチやレディスウォッチとは何かという議論の真っ只中に置かれているということ。第2に、この時計は、女性がファッションに求めるものをあらゆるレベルで理解するうえで(明らかに)極めて高い専門性を持つと思われる会社によって作られているが、伝統的に男性のスタイル特性と考えられているものとの関連性がほとんどない(最も一般的なものを除いて、センスのよさは万国共通)ということ。そして第3に、時計であることだ。つまりブランディングやジェンダーの問題など、さまざまな枠でカテゴライズすることができるが、最終的には時計としてどれだけ成功しているかということが、その評価を決めることになる。しかしどんなデザインも、その歴史的、社会的、経済的文脈から評価を切り離すことはできないということを理解しておいて欲しい。

この時計は、シャネルが特に男性を意識して製作した初めての時計と銘打たれているにもかかわらず、同社はすでにJ12にオーデマ ピゲのCal.3125を採用した例があり、特に38mmと42mmの大きなサイズは、伝統的な女性向けの時計として考える必要はないこということは指摘するだけの価値がある。Cal.3125を搭載した42mmのJ12は、性別に関係なく誰もが、大胆であえて人と違う時計が欲しいと思ったときに選びそうな時計であることは確かだ。シャネルの女性向け時計には、オーデマ ピゲ・ルノー エ パピ(APRP)との提携によって作られたトゥールビヨンや、極めて珍しく興味深いJ12 レトログラード ミステリユーズもあり、ムッシューが同社にとって初の高級時計コレクションではないこともまた確かなことだ(そしてレトログラード トゥールビヨン ミステリユーズなどは、明らかに伝統的な女性向けの時計ではない)。

ムッシュー ドゥ シャネルは、ジャンピングアワーとレトログラードミニッツを搭載している。

さて、いろいろな意見が飛び交い、収拾がつかなくなりそうなときは、本題に入るのが賢明だ。ムッシューは、レトログラードミニッツとジャンピングアワーを備えた40mm×10mmの腕時計である。ムーブメントはシャネルのために開発された自社製で、キャリバー1というシンプルなネーミングだ。シャネルによると、このムーブメントの設計は、ラ・ショー・ド・フォンにあるシャネルの自社工場で8人のチームによって行われ、最初の開発作業は2011年にまでさかのぼるという。ムーブメントのサイズは32mm×5.5mmで、3日間のパワーリザーブを備え、瞬転式のジャンピングアワーは前後どちらにも設定できる。このムーブメントの興味深い点は、分針が240°の弧を描いていることで、レトログラードの分針としてはかなり長い。このモデルのケースは、ローズゴールドのバリエーションであるシャネルでいうところの“ベージュゴールド”だが、より柔らかくで控えめな光沢と輝きを放っている。

このようなムーブメントを作ることで、シャネルが本格的な時計愛好家に何かを与えたいと考えていることは明らかで、このムーブメントの見た目は従来のありきたりなムーブメント構造とはまったく異なる。裏蓋から見える輪列は、円形のブリッジの下に配置され、テンプに到達するまで歯車がぐるりと円を描くように視線を運ぶ。テンプ受けと地板にはADLCコーティングが施され、全体として魅力的なバランスと幾何学的な厳密さがあり、クラシックでありながらコンテンポラリーでもある。シャネルが説得力のあるメンズウォッチを作ることができるかどうかという不安はともかく、こうしたことから、おそらく彼らは何かを掴んでいるのではないかと感じている。その構成的な完璧さと手段の経済性において、このムーブメントに備わった美学は非常にシャネルらしいと思う。視覚的な効果が従来の男性的なものであるということよりも、よく考えられた、シャネルらしいデザインであるため、男性的であるかどうかで評価するのではなく、デザインとしての本質的なクオリティに感銘を受けるだけだ。

シャネルらしいデザインといえば、私はこの輪列を見ていると、どうしても彗星を連想してしまう。もちろん、彗星はココ・シャネルが好んで用いたモチーフで、1932年に初のハイジュエリーコレクションとして発表したコメットネックレスがその始まりだ(この星のモチーフは、APRP製ムーブメントを搭載したJ12 フライングトゥールビヨンでも見ることができる)。

ムッシュー ドゥ シャネルは、つけるのにすぐ慣れるはずだ。 40mm×10mmというサイズは、決して大きくもなく小さくもなく、その美しさはもちろんのこと、そのサイズに躊躇する人は皆無だろう。ムーブメントと同様、文字盤の構成も、ある種の明確な、そして非常に厳格な幾何学的構造から成り立っている。例えば、古代ギリシャ建築の直線的な美しさを思い浮かべれば、非常に古典的なデザインの側面を感じ取ることができる。ムッシューの文字盤は、四角と丸を基調としており、ミニッツトラックに使用されている書体の鋭い角、5分を示す小さな黒い四角(スモールセコンドダイヤルの四角も同様)は、ミニッツトラックとスモールセコンドディスプレイに見られる多重構造の丸と穏やかに、しかしシャープに調和している。なかで最も目を引く幾何学的な要素は、ジャンピングアワー表示の周りにあるフレームだ。最初は少し重いように感じられたが、この時計と一緒に過ごすうちに、必要なものだと思うようになった。このフレームがあることで、全体の配置が決まるのだ。これがないと、あるいはもう少し軽いものであっても、文字盤のおもしろみが半減してしまうだろう(八角形のフレームの形は、ココ・シャネルが長年滞在していたオテル・リッツ・パリのある、パリのヴァンドーム広場の全体図を反映していると思われる)。

シャネルのロゴと分・秒表示のほかで丸みを帯びたフォルムは、ジャンピングアワーに使用されたサンセリフ体のローマ数字のみだ。毎正時に分針が素早く戻り、時間表示が切り替わる瞬間は、とても楽しい。ジャンピングアワーとレトログラードの機構が見えるといいのに、と思ってしまうほど、メリハリのある動きである(ジャンピングアワーやレトログラードの機構が見えるといいとは思うが、そうするとムッシューはまったく別の時計になってしまい、必ずしも成功するとは限らないが…)。

この時計の作りは、おもしろくとても興味深いものだ。この時計は、特に男性のための時計として紹介され、取り上げられているが、実はそれがいちばんつまらない。おもしろいのは、デザインがいいからであり、興味深い時計づくりがなされているからなのだ。時計製造において、従来の性別にとらわれないデザインコードが根強く残っているのには理由があり(伝統、デザイン言語のわかりやすい歴史、商業的配慮など)、ココ・シャネルとシャネルというメゾンは、今日我々が考える女性のためのハイスタイルの多くを構築してきたと言えるだろう。しかしJ12と同様に、ムッシューのデザインが必ずしも男性向けであると考える理由はまったくないのだ(例えば、ボーイフレンドのデザインが女性向けであると考える理由がないのと同じく、ムッシューはタキシード用の時計として非常に優れている)。

チャペックがブランド再生10周年の節目を象徴するキャリバー10.1搭載 限定モデル「TIME JUMPER」を発表。

Czapek「TIME JUMPER」──ブランド再生10周年を象徴する新キャリバー10.1搭載モデル 10 FOR 10~創業10周年を祝うキャリバー10

ブランド再生から10周年、初代、フランソワ・チャペックが工房を開いて180周年というダブルのアニバーサリーを迎えたCzapek & Cie(チャペック)は、新作「TIME JUMPER(タイム・ジャンパー)」を発表します。

【TIME JUMPER(タイム・ジャンパー)発表の背景】
フランソワ・チャペックの19世紀の懐中時計に着想を得ながら、自社開発の新キャリバー10を搭載。伝統的なギョーシェ装飾と未来的な造形を融合させ、時の表現そのものを再構築する1本です。
Czapekは2015年のブランド再興以来、「頭は空想に、足は地に」という哲学のもと、クラフトと革新の融合を追求してきました。今回のTIME JUMPERは、その歩みの節目を飾る“10 FOR 10(10周年のためのキャリバー10)”というテーマのもと誕生。10年の集大成であり、次の10年を象徴する作品でもあります。

Czapek「TIME JUMPER」正面とケースバック。24時間ジャンピングアワーと外周ディスクによる独創的な時の表示。裏面にはキャリバー10.1の精緻な仕上げが輝く。

TIME JUMPERは、時の読み取り方を一新するジャンピングアワー・ウォッチです。10の位と1の位を2枚のサファイア・ディスクで表示する24時間制アワー表示に、外周リングの分ディスクを組み合わせました。

デザイン開発段階のスケッチ – 1
ハーフハンター構造とジャンピングアワー機構の融合という、Czapekの挑戦の原点を示す。

デザイン開発段階のスケッチ – 2

≪ハイライト≫
・新開発キャリバー10.1:24時間制ジャンピングアワー(2枚のサファイア・アワーディスク)+外周ディスクによるトレーリング・ミニッツ表示

・ハーフハンター・カバーに新しい3次元ギョーシェ(Metalem社製)を採用。中央のルーペ越しにスケルトンムーブメントを覗く遊び心

・ケース径40.5mm。ステンレススティール100本限定/3Nイエローゴールド30本限定

TIME JUMPER着用イメージ。40.5mmのケース径とラバー・ストラップにより、存在感と快適さを両立。

・自動巻、約60時間パワーリザーブ、4Hz、パーツ数275、石数44、リサイクル950プラチナ製センターローター
・発表:ジュネーブでの10周年記念イベント。
・販売:Czapekブティック(ジュネーブ)、指定販売店、公式サイト

Metalem社製3Dギョーシェを施したハーフハンター・カバー。
開くとキャリバー10.1のスケルトン構造が現れ、時間の跳躍が視覚的に体感できる。

ハーフハンター型のカバーには、中心に吸い込まれるような立体的ギョーシェを刻み、中央のバブル型ルーペからムーブメントの鼓動を覗くことができます。遊び心と技術的洗練を併せ持つ、Czapekならではの“詩的メカニズム”です。

TIME JUMPER ステンレススティールモデル(100本限定)。
サテンとポリッシュの質感対比が際立つ、Czapekの現代的解釈。

キャリバー10の哲学
キャリバー10は、Czapekが次の10年を見据えて開発した新しい自社製オートマティック・プラットフォームです。従来のモジュール構造ではなく、各複雑機構を完全に統合する「統合設計」に基づいており、キャリバーシリーズ全体の基盤となる存在です。

自社製キャリバー10.1のディテール。
リサイクル950プラチナ製センターローターとブリッジ装飾の精緻な仕上げが見どころ。

初号機10.1では、リサイクル950プラチナ製センターローターを採用し、優れた巻き上げ効率と視覚的美しさを両立。直径36mmのコンパクトケースにも搭載可能な柔軟性を持ちます。

TIME JUMPERのケースバック全景。
サファイア・クリスタル越しに自社製キャリバー10.1の動きを鑑賞できる。
デザインとクラフト
ケースデザインは“空飛ぶ円盤”を思わせる有機的フォルム。CzapekのデザインパートナーであるABコンセプトが手掛け、ラグやリューズに至るまで柔らかな曲線で統一されています。カバーのギョーシェ彫りはMetalem社によるCzapek専用の新パターンで、深い中心に向かって光を吸い込むような視覚効果を生み出します。

3Nイエローゴールドモデル。
6時位置のプッシュボタンでハーフハンター・カバーを開閉できる独自構造。

TIME JUMPER ステンレススティールモデル。
“空飛ぶ円盤”を思わせる有機的なフォルムが、ケース全体を流れるように包む。

仕上げの細部にまで伝統的手法と現代技術が融合し、サンドブラストやサーキュラー・ブラッシュの質感対比が、光と影の奥行きを強調します。

【仕様】
TIME JUMPER ステンレススティール
税込予価 11,550,000円
限定:100本限定

TIME JUMPER 3Nイエローゴールド
温かみのある輝きと立体ギョーシェが調和する、希少なリミテッドエディション
税込予価 16,830,000円
限定:30本限定

【仕様】
ムーブメント:Cal. 10.1
・自動巻/約60時間パワーリザーブ(シングルバレル)
・振動数 4Hz(28,800 vph)/石数 44/パーツ数 275
・リサイクル950プラチナ製センターローター(スケルトン)
・スイスレバー脱進機/フリースプラング(4つの慣性ウェイト)
・仕上げ:ロジウム・プレートのブリッジ(サンドブラスト&サーキュラー・ブラッシュ、面取り)
機能
・ジャンピングアワー(24時間/2枚のサファイア・アワーディスク、スーパールミノバ)
・トレーリング・ミニッツ(レーザー着色・テクスチャ加工ブルー・ミニッツディスク)
ケース/ストラップ
・ステンレススティール+ホワイトゴールドの象嵌細工または、3Nイエローゴールド+象嵌細工
・径40.5mm、厚さ10.5mm(ハーフハンター・クリスタル含む12.35mm)
・サファイア・クリスタル(反射防止)/サファイア製ケースバック
・6時位置:カバー開閉プッシャー/ねじ込み式リューズ/防水 3気圧
・ブルーラバー・ストラップ、ピンバックル(ケース素材に準ずる)

【お問い合わせ】
株式会社 ノーブルスタイリング
〒153-8580
東京都目黒区三田1-4-1 ウェスティンホテル東京 1F
電話番号:03-6277-1604
FAX:03-6277-1689

[Czapek & Cie]
チャペックは、19世紀のチェコ生まれのポーランド人ウォッチメーカー、フランソワ・チャペック(François Czapek)の精神を受け継いだ現代のウォッチ・メゾンです。1831年にチャペックは、ワルシャワでの政治的混乱から逃れ、ジュネーブに亡命しました。そして1830年代に数々のビジネスを創業しました。1845年にCzapek & Cie.(チャペック時計会社)を設立したのち、彼はナポレオン3世の宮廷時計師となり、パリのヴァンドーム広場に最初期の時計ブティックを開きました。
チャペックの名前は、2015年にメゾンの歴史とクラフトマンシップを再興しようとする時計愛好家のグループによって復活しました。1850年代のチャペック製ポケットウォッチからインスピレーションを得た、ファースト・コレクションである「ケ・デ・ベルク33bis」は、2016年のGPHG(ジュネーブ・ウォッチ・グランプリ)でパブリック・プライズを受賞しました。2020年同社は、初の自社製ムーブメントを搭載したスポーツシックなコレクションである、アンタークティックを発表しました。現在、チャペックの時計は、独特なデザイン、高品質の職人技、限定生産で知られています。ジュネーブに本社を置き、ラ・ショードフォンに自社工房を構えるチャペックは、”etablissage”(エタブリサージュ – 水平分業)の精神を現代的に継承しながら、スイス高級時計製造の伝統を未来へとつなげています。

ジェイ・Z(Jay-Z)は、現代のポップカルチャーの頂点に立つ存在である。

彼はアーティスト、プロデューサー、起業家として多くのキャリアを積み上げてきた。もはや音楽を制作したりスーパーボウルのハーフタイムショーをプロデュースしたりする必要がないのだが、彼はとにかくなんでもやっているのだ。要は彼の一挙手一投足すべてが、波紋を巻き起こす可能性があるということである。それは時計コレクトも含めてだ。

 彼は常に、静かになにかを披露する力を持っていることを理解している。彼は1990年代後半にプラチナの時計を身につけていて、現在はディープな時計好きが好むマニア向けアイテムにまで手を広げている。彼の好みは現在のポップカルチャーを反映するというよりも、彼自身のハイエンドな嗜好を象徴するものとなっている。ファンにとってジェイ・Zの時計をウォッチスポッティングするということは、彼という人物や好み、そして彼がより大きな世界でどのように自身を見つめているのかを、理解しようとする方法となった。

 だから今年のグラミー賞でパテックのグランドマスター・チャイムをつけていたとき、我々は注目したのだ。そしてアカデミー賞の翌日、ビヨンセと開いたアフターパーティの写真が公開され始めた。ロック・ネイション(Roc Nation)の上級副社長であり、ジェイ・Zの友人で写真家でもあるレニー・サンティアゴ(Lenny S)が、スマートフォンで撮影した2枚の写真を見て欲しい。これは時計業界やファンページで、本人がパテック フィリップの希少なヴィンテージのRef.2499を着用している姿の写真であり、瞬く間に拡散された。

Jay Z wearing a Patek 2499 at Gold Party
オスカー後のゴールドパーティにて、1980年製のパテック フィリップ Ref.2499を着用するジェイ・Z。Photo courtesy Alex Todd.

Jay Z wearing a Patek 2499 at Gold Party
とてもしっかりとクローズアップした写真だ。Photo courtesy Alex Todd.

 1980年代に作られたファクトリーメイドのチェーンリンクブレスレットを備えた、信じられないほど複雑で珍しいこの時計がジェイの手首に巻かれているのを見られるというのは非常に大きな出来事だった。同僚にこの時計を試着したことがあるかどうか聞いてみたが、誰も身につけた記憶はなかった。大物コレクターは金庫を開けて見せびらかすことを嫌がるため、今まで誰も見たことがなくても不思議ではない。

 私はその写真をInstagramで共有し、それでこの件は終わりかと思った。数分後、ふと見ると、あるプライベートの時計コレクターであり、世界でも有数のパテックとAPのコレクションを築いていることを知ることになった元ディーラーから、ふたつのWhatsAppメッセージが表示されていた。彼は以前、自分のコレクションについて話をしてほしいという、私の依頼を断っていた。それでも我々は連絡を取り合っていた。

「こんにちは、マーク。元気に過ごしているだろうか」

 あまりにもタイミングがよすぎた。そして、素晴らしいストーリーがあるという予感が確信したと同時に、ジェイ・Zがなぜこのようなアイコニックな時計のオーナーになったのか、その真相を探るべく、特に人に話したがらないであろうことを承知で調査を開始したのだ。

 こうしてジェイ・Zは、史上最も希少なヴィンテージのパテック フィリップを手に入れることになったのである。

なぜこの時計が問題なのか
パテック フィリップのRef.2499は、多くのコレクターから史上最高の腕時計といわれているモデルだ。

 パテック フィリップは1950年から1985年のあいだ、永久カレンダー(ひと月の長さとうるう年を考慮したカレンダーのことだ)、ムーンフェイズ、クロノグラフを組み合わせたRef.2499を継続して生産し、市場を独占していた。しかしそれは年産10本にも満たなく、計349本と多くは製造されなかった。

The Patek 1518 pink on pink that sold for a record price in 2021.
パテックのRef.1518。2021年に、同リファレンスとしては過去最高の価格である957万ドル(日本円で約10億9750万円)で落札された、別名“ピンク・オン・ピンク”。

 35年間も市場を支配し続けるというのは並大抵のことではない。しかしパテックにとっては目新しい機構ではなかった。1941年から1954年までブランドは、Ref.2499の前身であるRef.1518を生産しているが、その数はわずか281本である。Ref.1518のほうがオリジナルだが、Ref.2499のほうがまだ珍しい存在だったのだ。

アスプレイのサインが入った唯一のパテック フィリップ Ref.2499が、サザビーズで388万ドルで落札される

2018年のオークションで落札された、最も希少なRef.2499の1本を取材している。高価格を記録した個体だが、将来の価格がそれすら吹き飛ばした。ご覧あれ。

「私見ですが、このサイズであったからこそ、パテック フィリップの“マストハブ”である永久カレンダークロノグラフという技術が注ぎ込まれたのだと思います」と、クリスティーズの元時計部門国際責任者であり、パテックに関するあらゆるものの愛好家兼研究者にして、そしてパテック フィリップのヴィンテージおよび中古品を販売するコレクタビリティ(Collectability)の創設者であるジョン・リアドン氏(John Reardon)は言う。「ミッドセンチュリー時代のパテック フィリップにとって、2499のデザインは、永久カレンダー クロノグラフをより大きなケースにするということが自然な流れでした」

 しかし、より現代的で着用しやすい37.5mmというのは、美観、腕の上での物理的なバランス、視認性、着用感に優れるサイズであり、純粋なパテックらしさを残したデザインとも思っている。後のモデルでケース直径が2.5mm大きくなっているが、すべてにおいて取るに足らない。

 1990年代前半になると、多くの人によりRef.2499の駆け込み需要が発生し始めた。リアドン氏と同じくクリスティーズの元時計部長であり、最近までオーデマ ピゲのコンプリケーション部門長だった友人のマイケル・フリードマン(Michael Friedman)氏は、過去に2499を集めていた“開拓”時代について語る。文字盤と金属を多様に組み合わせた極上のピースたちはオークションやプライベートで、また情報通のコレクターや裕福なコレクターのあいだで争奪戦が繰り広げられていたという。

「これはパテック フィリップのコレクターにとって優良株中の優良株です」とリアドン氏は話す。「そして、市場で買うべき優良株がないときはどうなるのか? さらに高額な値段がつくのです。1950年から1985年のあいだに製造された349本のRef.2499のうち、現在まで公になっているのは半分強ほどです」

The Platinum ref. 2499
 最も希少なのは、プラチナケースでできたRef.2499の2本のうちの1本だ。この時計はもともと、パテック フィリップ・ミュージアムに保管される予定だったものである。だがこの時計は何らかの理由でブランドの手を離れてしまい、そして1989年4月にアンティコルムが主催したオークション、“The Art of Patek Philippe”に出品された。パテック創業150周年を記念したそのオークションでは、インフレに合わせて調整されたプラチナ製の2499が約61万5000ドル(日本円で約8485万円)で落札されている。当時としては驚くべき価格だったが、これから迎える2499の狂乱には到底及ばない。

オーデマが昨日言った明日がある
Ref.2499が流行り始めた90年代半ばの頃に、ショーン・“ジェイ・Z”・カーター(Shawn “Jay-Z” Carter)も流行りはじめた。

 1996年、自身のロッカフェラ・レコード(Roc-A-Fella records)レーベルからリリースした『リーズナブル・ダウト(Reasonable Doubt)』というアルバムで、ジェイ・Zは腕時計に目をつけていることを世界に知らしめた。しかし、ジェイ・Zは、世間が持っているものと同じものを所有するだけでは満足しないと知っていた。「想像のとおり、具体的なもので示せ、プラチナロレックスだ、俺たちはリースなんてしない」(Can I Liveの歌詞より)

 みんながスティールやゴールドのロレックスを買っているときに、ジェイ・Zは(不思議なことに)ド派手な時計やモバードについての歌詞の次にリーズナブル・ダウトのトラック、“Can I Live”でより贅沢することについて話していた。

Jay-Z on the cover of WatchTime Magazine
Courtesy WatchTime Magazine.

 実は彼の初期のアルバムには、時計に関する歌詞が12曲ほどある。オーデマ ピゲへの思いは、2001年リリースの『The Blueprint 2: The Gift and the Curse』に収録されていた「Show You How」で、“アリゲーターストラップ付きのオーデマ ピゲ”と叫んだことから本化的に始まったようだ。1999年にロカウェア(Rocawear)を設立し、その2年後にはリーボックとエンドースメントを契約するなど、彼はビジネスマン、起業家として本領を発揮し始めた頃だった。2004年にはデフ・ジャム(Def Jam)レーベルの社長兼CEOにも就任している。

 ジェイ・Zが、時計分野で初めて大きなビジネスを興したのは2006年のこと。ジェイ・Zはオーデマ ピゲと協力して、彼のサインを裏蓋に刻んだ100本限定のロイヤルオーク オフショアを製作した。

 このスペシャルエディションは最後ではない。2011年に『Watch the Throne』でウブロについてラップしたジェイは、その後の2013年に同ブランドとのコラボレーションが実現しており、ブラックセラミックとイエローゴールドの両方で、ショーン・カーター ウブロ クラシック・フュージョンをリリースした。それからビヨンセが、彼の43歳の誕生日に500万ドル(日本円で約4億円)ものダイヤモンドをセットしたウブロをプレゼントしたとも報じられている。

Hublot Sean Carter watch
ショーン・カーター ウブロ クラシック・フュージョン。Courtesy Hublot

 歌詞のリストと時計のリストは延々と続く。

 彼はHODINKEEに何度も登場しては、ラップシーンでは当たり前になった(いまやほぼ着用必須)、ユニークピースである数百万ドルものリシャール・ミルを着用し、そして彼はAPも着用し続けている。サプライズでJLCもあった。そしてもちろん、今もロレックスを愛用している。なかにはフランク・ミュラーがベーシックなデイトジャストを改造して永久カレンダーにした、ユニークなロレックスだったこともある。

 しかし近年、ヒップホップ界のリーダーは、希少でアイコニックなパテック フィリップに引かれているようだ。ジェイは背後から迫ってくるシーンを、彼が好きでつけているものを拾い始めているのを見ると、それは次のステップに進む合図にしかならない気がするのだ。

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 そしてパテック以外にどこを動かせばいいのだろうか? 何しろ、ビヨンセとジェイ・Zは、ティファニーとのパートナーシップを成功させているからだ。ビヨンセは黒人女性として初めてティファニーの象徴である128.54カラットのダイヤモンドをまとい、夫とともに広告に出演している。ティファニーは、パテック フィリップと長年にわたり友好的な関係を築いているブランドだ。その関係を祝して、パテックは最も人気の高い時計であるノーチラス Ref.5711に、ティファニーをテーマ(ティファニーカラーの文字盤)にしてから別れを告げた。そのうちの1本が、フィリップス社のオークションで620万ドル(日本円で約8億1505万円)で落札されている。その8日後に、ジェイ・Zは自分のものを身につけていた。

Jay-Z wearing a Tiffany-dialed Patek.
Credit: Netflix

 またジェイは、最も高価で複雑なパテックのプロダクトモデルである、グランドマスター・チャイム Ref.6300Gをつけているところも目撃されている。2019年のディディ(Diddy)の50歳の誕生日パーティや、妻がグラミー賞の最多ノミネート記録を更新した今年の授賞式など、これまでに何度も着用しているモデルだ。希少なパテックを身につけることは、群衆から自分を引き離して、喧噪のなかにある自身の居場所で落ち着くための方法のように感じられる。

Jay-Z at the Grammys
グラミー賞でのジェイ・Z。Photo credit: Getty Images

 それは言葉を選ばずにいうと、「私は自分が何者か知っているし、他の誰とも似ていない。あなたは私になりたいかもしれないけどなれない。私の時計でさえ、それを示している」ということだ。

問題の2499
プラチナ2499と同じ1989年のオークションにて、永久カレンダークロノグラフなど、いくつかのパテックの興味深いユニークピースがあった。なかでもムーブメント番号869,392、ケース番号2,779,153を持つ、Ref.2499/101Jが際立っていたもののひとつだ。

 この時計はサファイアクリスタルを採用しており、4つのシリーズのうち4番目のリファレンスに位置づけられる。また43年前の1980年4月25日に、最初のオーナーに売却されている。しかし末尾に“101”と記載があることで、35年間の生産期間中に、ケースにブレスレットを組み込んだ状態で工場を出た、4本以下のRef.2499のうちの1本という、特別な特徴を与えている。

The Art of Patek catalogue
“The Art of Patek”のカタログにて、2499と同様のブレスレットのRef.3448、“パデローン”が掲載されている。Photo by Tony Traina.

 ブレスレットのヴィンテージパテックは、今でこそ多くのコレクターから評価されるようになっているが、当時はもっと需要が少なかったのだ。通常、ユニークピースには高いプレミア値がつくものだが、ゴールドを編み込んだブレスレットという思い切ったデザインは、当時のパテックの控えめなエレガンスさと相容れないと判断され、インフレに合わせて調整された最終価格は20万ドル(日本円で約2760万円)弱に抑えられていたようである。

 2013年にムーブメント番号869,392を持つ個体が、クリスティーズのオークション会場に再び姿を現したとき、この時計の外観はまったく変わってしまっていた。この変更により1週間は、まったく新しいケースが使われただとか、偽造や、シリアルナンバーの重複といったありとあらゆる憶測が飛び交った。しかし、本当のところはどうなのだろうか。

The 2499/101J as it came to Chrstie’s.
2013年にクリスティーズにやってきた2499/101J。Photo courtesy Christie’s.

 真ん中には、前述した超プライベートなコレクターと元ディーラーが座っている。Instagramで“Only_TheRarest”と名乗っているトニー・カヴァック(Tony Kavak)氏は、約10年前に時計ディーラーの仕事を引退し、それから故郷のストックホルムとチューリッヒにあるショップで、新品やヴィンテージといった希少な時計を扱っていたが、その後息子に事業を引き継いでいる。しかしそれ以上に大切なのは、カヴァック氏は何十年にもわたってヴィンテージパテック フィリップ(およびオーデマ ピゲ)の熱心なコレクターだったということだ。

Tony Kavak’s Instagram Feed
トニー・カヴァック氏のInstagramフィード。

「私が初めてRef.2499を買ったのは、2001年の33歳の時でした」とカヴァック氏は言う。「今まで購入した時計のなかでも高価な部類に入りますが、非常にクラシカルなモデルでした。私はすぐに恋に落ちました。手首にもしっくりきたのです。しかし2499の歴史について読み進めると、この時計だけではなく、パテックのウォッチメイキングの時代にもすっかり魅了されてしまったのです」

 しかしそのオークションに関してカヴァック氏は注目されることを望まなかった。実は観察力のあるパテックファンが、アフターゴールドパーティのジェイ・Zの写真に早々に気づき、そしてカヴァック氏のコレクションを思い出してピースを組み合わせてから、Instagramに投稿したようである。その人たちはジェイ・Zのファンアカウントやジェイ・Zの友人らと並んで、先週からしょっちゅうカヴァック氏をタグ付けして投稿していた。秘密はすでに明らかになっていたのだ。

 また、これまでインタビューに応じたことのないカヴァック氏は、この希少な2499/101Jがジェイ・Zの手にわたった経緯について多くを語ろうとはしなかった。だが注意深く検討し、さらに慎重に言葉を選びながら、ストーリーと時計との歴史のギャップを埋めていくことに快く応じてくれたのである。カヴァック氏はジェイ・Zと彼のプライバシーに配慮して、ジェイ・Zとの時間や時計の入手経路についてほんのわずかな情報しか語らず、もちろん価格の詳細については一切触れなかった。

 しかし彼がシェアした内容は、ジェイ・Z、そして彼のおかげで、これまで以上にヴィンテージのパテック フィリップに注目し始める可能性がある瞬間だと示唆している。

2013年、2499/101Jが再び市場に現れたとき、落札者は1989年当時の価格を下回る22万ドル(日本円で約2150万円、インフレに合わせて調整後)強を支払い、比較的お得に手に入れている。

 ケースとムーブメント番号はアンティコルムのオリジナルと一致したのだが、ロットタイトルには“ラグは後から追加”という追記があったため、入札者のなかには怖気づいた人もいたようである。カヴァック氏の見解では、以前のオーナーはRef.2499を所有することを気に入っていたが、ブレスレットの主張が強すぎると考えていたかもしれないとのことだった。ある時、オーナーは革ベルトで着用できるようにラグを追加するなどしてほしいとパテック フィリップに直接依頼して、通常の時計と同じように、時代に合わせてケースを作り直した。今なら冒涜と言われるようなことだが、この要望は叶えられた。