ジラール・ペルゴ ロレアート グリーンセラミック アストンマーティン エディション 38mmでグリーン。

これはフルセラミック製で、クルマにインスパイアされた時計だ。

時計とクルマへの情熱の融合はなにも目新しいものではない。これらの共通の利益は常に交差している。ロレックスのデイトナであれ、ホイヤーのカレラであれ、さらにはポルシェデザインであれ、すべてそこにあるのだ。このふたつの分野が歴史、クラフトマンシップ、パフォーマンスといったアイデアを融合させる。単独でもストーリーテリングにうってつけだが、一緒になればなおさらいい。

2021年、ジラール・ペルゴとアストンマーティンは婚約を結び、ふたつの歴史あるブランドがさまざまなアイテムでコラボレーションできるようになった。そして今年初め、彼らはモーターヘッドたちのあいだでよく知られるブリティッシュレーシンググリーンでできた特別なロレアート(GPを象徴する一体型スポーツウォッチ)を発表した。

ジラール・ペルゴ ロレアート 38mm グリーンセラミック アストンマーティン エディション
少なくとも現代の背景では、クルマとコラボレーションした時計はやや強引であることが多い。燃料計のように見えるダイヤルやクルマを想起させるようなデザインヒントがあるものは、同じように現代的な自動車デザインを連想させることを意図していると考えておいて欲しい。そんななかアストンとGPは今回のリリースで、はるかにシンプルな方法を採用した。

“破綻していないのであれば直さない”という時計デザインの力強さを理解したうえで、GPのロレアートをベースに42mmと38mmという2サイズの時計をつくるという選択をした。今回は38mmモデルに注目しよう。というのも、それが本当に魅力的な時計で、同じようにサイズ感もいい感じだからだ。それになにより…緑一色なのだ。

ジラール・ペルゴ ロレアート 38mm グリーンセラミック アストンマーティン エディションのリストショット
それこそが、この時計の際立った特徴だ。私にはこれがブリティッシュレーシンググリーンだとは思えないが、この配色を選択した背景には、このグリーンのインスピレーションがあったのだろう。そのポイントをしっかりと強調するためには、ホワイトのストライプの要素が足りないと思う。結局のところ、この時計が優れているのはモダンとクラシックが融合しているというところだ。最も注目すべきモダンな要素は、時計全体、すなわちケースとブレスレットにセラミックを使用していることである。この特殊なセラミックはジルコニウムと金属酸化物から組成されており、サテン仕上げとポリッシュ仕上げの組み合わせが可能だ。

文字盤はケースやブレスレットと同じグリーン。クルマのグリルを連想させる、独特のクロスハッチパターンを施しているが、実機を見ているぶんには気にならない。実際に光が当たると、グリーンの海のなかで欠けていた視覚的な魅力がいっそう増す。時、分、センターセコンド、日付(3時位置)機能を備えており、全体的なダイヤルレイアウトはシンプルだ。12時位置にはアプライドされたGPロゴがあり、6時位置の近くにはLAUREATOとAUTOMATICからなる2行のテキストがある。後者はセリフの多い70年代風の独特なフォントで、新旧モチーフの架け橋となっている。

ジラール・ペルゴ ロレアート 38mm グリーンセラミック アストンマーティン エディション

グリーンに使用されているセラミックは、スティール製の時計よりも7倍の硬度を誇り、傷にも強い。グリーンの時計を裏返すと、アストンマーティンのブランドロゴが施されたシースルーバックが現れる。そのブランドロゴの後ろには、約46時間パワーリザーブを誇る自社製Cal.GP03300が搭載されている(ちなみに42mmバージョンはCal.GP01800を採用しており、パワーリザーブは約54時間)。

ブレスレット一体型のスポーツウォッチの海のなかで、単調さを打破するためにクルマ(のインスピレーション)が必要になることもある。私の手首サイズは6.5インチ(約16.5cm)弱であり、こちらの38mmバージョンに心引かれる。腕にはめてみると、1975年から続くロレアートの歴史が実感できた。当時のフォントや八角形ケースのような華やかさ、さらに特徴的なグリーンセラミックなどの装飾が相まって、“全体は部分の総和に勝る”という考え方に基づいた時計であることを感じさせてくれる。

ジラール・ペルゴ ロレアート 38mm グリーンセラミック アストンマーティン エディションのリストショット
この時計につけられた327万8000円(税込)という値札を見て、パンチが効いていると捉える人もいるだろう。ただ、このジャンルで似たようなスタイルを手掛ける多くのライバルと比較しても、妥当な価格であることは間違いなく、ムーブメントと素材の革新性の両方がそれを裏付けている。この時計が内外に提供しているすべての事象を考えると、私はこのパートナーシップに今後も注目していくことだろう。

ジラール・ペルゴ ロレアート 38mm グリーンセラミック アストンマーティン エディション。直径38mm、厚さ10.27mm、100m防水。グリーンセラミック製ケース&ブレスレット、無反射サファイアクリスタル、クロスハッチパターンのサンレイ仕上げグリーン文字盤、グリーン夜光。Cal.GP03300、時・分・センターセコンド、日付表示、約46時間パワーリザーブ、27石、2万8800振動/時。価格は327万8000円(税込)。

チューダー ブラックベイ フィフティ-エイトを紹介しよう。

現代における全ツールウォッチに対して私が抱いていた印象を一変させた時計、チューダー ブラックベイ フィフティ-エイトを紹介しよう(重要な補足として、この記事の撮影はBB54が発表される前に行われたものであり、それも私を夢中にさせたものだ)。

正確にはこの時計はスモールサイズではないのだが、私の主張を通すためにこれを“スモール/ミディアム”と呼ぶことにする。直径39mm、厚さ11.9mmというプロフィールに、そのすべてが詰まっている。無駄がなく、しかしこの上なくスポーティであり、現代のツールウォッチの枠組みにおいて驚くほど表現しにくい要素を兼ね備えている。

なぜこの時計が優れた時計として私の目に留まるのか? 聞いて欲しいのだが、私はチューダーのようなモダンなものを賞賛することはおろか、身につけることなど考えたこともなかった時計愛好家であるが、イエローゴールドに軽い優越感を持ちながらもこのツールウォッチの仲間入りを(盲目的に)果たした(この文章で混乱させて申し訳ない。真意を理解して欲しいが、99%の時計ブランドは女性に話しかけるのが下手なのだ)。実際、私が時計の世界に深く足を踏み入れる前に、このブランドをどう思うかと聞かれたら、おそらく“チューダーね。それはいいからロレックスをちょうだい”と嘲笑しただろう。

この時計がリリースされた2018年まで巻き戻すと、当時のダイバーズウォッチはケースサイズが大きくなりがちであったが、BB58はそれに逆行するサイズだった。そしてチューダーの歴史的モデル、Ref.7922 サブマリーナーを踏襲しながらも、現代的な素材と自社製Cal.MT5402を搭載した、ヴィンテージ風ウォッチという一面も持っていた。

BB58には、スポーツウォッチにありがちな頭でっかちな雰囲気がない(それに先立ったオリジナルのブラックベイ 41mmも含んで)。不格好な時計は、直径がどうであれ、私のような程い手首にはほとんど役に立たない。BB58は決して小さいわけではなく、ヴィンテージの基準からしても小振りではないが、バランスはよくてすっきりとしている(っぽい)。

個人的なツールウォッチの選び方に関して、私は現代的なものに偏る傾向がある。忘れちゃいけないのは、私はまだツールウォッチを使い始めたばかりなので、あとに何が起こるか誰にもわからないということだ。BB58は多用途で、耐久性に優れている点が気に入っている。むしろ、あまり大事に扱わないほうがカッコよく見える。ライダースジャケットや(リーバイスの)501のように、使い込んで自分のものにするのがいい。

価格はもうひとつのボーナスだ。この価格帯のモダンな時計は、いま欲しい時計のカテゴリーに入ることはあまりない。でも決して50万4900円(税込)が安いと言っているわけではない。とはいえ、私はYGやジュエリーのようなデザインに引かれるので、当然、欲しいものがすぐ手に入るとは限らない。Googleによると、これは私をシバライト(贅沢にふける人)にしているそうだ。ただ単に私のセンスがいいということだと思うのだが。結果はまだでていない。

ありがたいことに、私は伝統的な時計趣味に縛られていないので、少し違うレンズを通してBB58を見ることができる。機能性ではなく見た目のために実用に富んだ時計を身につけるというアイデアが大好きだ。ピンクゴールドの金メッキは私の好みにはちょっと合わないかもしれないが(この間にBB54が登場したが、これは完璧だ)、マットで日付のない文字盤というこの時計が持つ純粋さはとても気に入っている。それとブレスレットにした方が100%いい。

とても完璧に近いヴィンテージのディテールにより、BB58は、デザイン的には洗練されているがスポーティな雰囲気を醸している。すべてのヴィンテージマニアのために、知る人ぞ知る小さなディテールが取り入れられているのだ。ディテール(例えば12時位置の赤い三角形、ケースのハッシュマークや太い面取りなど)は、製品をより技術的にではなく上品なものにしてくれる。私はこれまでの人生で、合計4回ほどベゼルを回転させたことがある。だから私は、潜水するときのタイミングを計るのではなく、これがどう見えるかに注意を払っている。だって正直言って、この時計を買う人がダイビングのタイミングを計っているとは思えない。

39mmという直径は、私が求めるサイズより少しデカいかもしれないが、もう少し重厚で存在感のある手首を好む女性にはぴったりだろう。

これは極端な事象を好む女性たちのためのものだ。よきスモール/ミディアムライフを。

ルック1: マッチポイント
私はジムの外でテックウェアを着ている女性に強い魅力を感じる。ナイキ Dri-FITのトップス、アローのヨガレギンス、ホカのスニーカーなど、彼女らがマンハッタンのアップタウン通りを練り歩く姿を目にする。間違いなくそれがユニフォームだ。

個人的に、アスレジャー(スポーツウェアを普段着などに取り入れること)を着るのは大嫌いだ。本当に嫌いなんだ。ナイキのGyakusouトラックパンツに、セリーヌ バイ エディ・スリマンのツイードジャケットをミックスする以外、どうか私に近づかないでほしい。でもマーティン・ローズ×ナイキは、ストーリーを見失ったと感じる前に自分でできる範囲だ。

いつものことだが、私はスポーティな時計が好きなので矛盾に満ちている。BB58はスポーティだが、スポーティさとエレガントさを兼ね備えている。カントリークラブのスポーティさとか、芝生のクロケットのスポーティさとか、トライアスロンのようなスポーティさではない。

プレッピースポーツウェアは、それ自体がひとつのカテゴリーだ。そしてポロシャツは、世界中のだれもが認めるプレッピーのエンブレムである。もしあなたが2000年代の子どもだったとしたら、ラコステのポロが引き起こしたノスタルジックな要素は間違いなく計り知れない。

ただし、これは『The O.C.』でマリッサ・クーパー(Marissa Cooper)が着用していたラコステのポロではない。2004年のY2Kパステルとポップカラーのポロシャツによるレイヤードスタイルからはほど遠い。それらはきつくてピチピチな、ティーンエイジャー向けのものだった。これはミュウミュウのFW22にインスパイアされたプレッピーバージョンだ。BB58をつけるように、少しルーズに、少しバギーに、そして少し無造作に着るのだ。

カルティエのヴィンテージ タンク サントレが物語る修復の未来。

1920年から1960年までカルティエが生産した腕時計は1万5000本にも満たない。ちなみに1905年に創業したロレックスが100万本目の時計を製造したのは1960年頃で、同時期のパテックの生産本数は50万本程度と推定されている。

そのため、ヴィンテージのカルティエウォッチは希少である。本当に珍しいのだ。この話を持ち出したのは、今春のオークションシーズンでカルティエのヴィンテージウォッチがあまり出品されない、ちょっとしたオフシーズンだったという話が上がったからだ。そのなかでも特筆すべきロットは、1920年代製のプラチナ タンク サントレである。私はオークションプレビューの際、この実物のサントレを見てもピンと来なかったと書いた。ただ市場は私の考えをまったく気にしていない。この時計はクリスティーズで4万スイスフラン(日本円で約653万8000円)というエスティメートだったにもかかわらず、30万2400スイスフラン(日本円で約4585万円)で落札されたのだ。それ以来、世界有数のディーラーのうちのひとりが、この時計を“オークションシーズン最高のトロフィー”と称していた。

ヴィンテージのプラチナ カルティエ タンク
5月のクリスティーズにて、35万ドル以上で落札されたプラチナのカルティエ タンク サントレ。

この重要な結果は、私の見解がみるからに間違っていたことを示唆していたということだ。それを認めることになんら問題はない。ところで私はこのタンク サントレについて、そして今日の時計収集における希少性と復元の意味について、もう少し掘り下げてみる価値があると考えた。

オークション前に説明したように、このサントレの文字盤は1999年にカルティエによって修復されたものである。オークションカタログのサムネイル画像を見て、最初は現代のカルティエだと思ったほど(の修復)だ。文字盤はバーティカルサテン仕上げを施したシルバーという非常にモダンなデザインで、20年代製のヴィンテージカルティエの文字盤にこのようなものはなかった。この時代の代表的な文字盤はオフホワイトであり、しばしば美しいパーチメント(薄茶色)カラーに経年変化していくようだ(100周年記念のタンク サントレはこれを再現している)。その上、このプラチナ製サントレのケースは、すべてサテン仕上げを施していた。ほとんどのヴィンテージサントレでは、細長いブランカード(担架のように見えるケースシェイプ)がポリッシュ仕上げされているのがわかるが、この仕上げは現代の限定版サントレでも再現されている。こうしてカルティエが修復のために預かったサントレは、1926年製でありながら1999年製の時計のように見えるように仕上がったのである。

100周年記念のタンク サントレ

しかし、1920年から1960年までのカルティエ タンクの生産本数は2000本にも満たない。そしてそのなかで最も望まれているのは、現代のコレクターの好みに合った大きくて薄く、細長い形状のタンク サントレだ。これらはドレスウォッチで水に強いとは言えなかったため、ほとんどの文字盤はひどく損傷しているか、時間の経過とともに失われているものばかり。その希少性に加えて、この特別な個体は元の所有者の家族からの出品であり、1926年(この年にカルティエが製造したタンクはわずか135本だった)に委託者の叔父から譲り受けたものであった。以前にも述べたように、最近のコレクターはどんな属性よりも“市場に出たばかり”かを重要視している。だからこそ、私やほかの人がモダンなデザインの復元をどう思ったかにかかわらず、35万ドルで落札されたのだ。

確かにヴィンテージのロレックスやオメガ、あるいはパテック フィリップを評価する際にはコンディションが最も重要なポイントかもしれないが、それらの時計は何十万という玉数があることを忘れてはならない。一方カルティエは、60年頃までは年に数百本しか腕時計を製造していなかった。つまりカルティエの時計はどれもが希少ということになる。コンディションはそれほど問題ではなく、復元がどれだけ忠実かどうかもそれほど重要ではない。要は希少性なのだ。

“忠実な復元”について意見を述べる
フレッド・アステアのカルティエ タンク サントレ
その席には、俳優のフレッド・アステア(Fred Astaire)が友人のフェリックス・リーチ・ジュニア(Felix Leach Jr.)にプレゼントしたタンク サントレも姿を見せた。過去数十年のある段階で、カルティエはこの時計を入手し、最終的に修復を施した。これは80年代のオークションカタログに文字盤が損傷した状態で初めて掲載されていることからわかる。しかしリーチ・ジュニアのサントレの修復はオリジナルに忠実であり、ホワイトダイヤル、特徴的なインデックス、ポリッシュ仕上げのケースサイドなどすべて保たれていた。

ホワイトゴールドの、非常によく似たタンク サントレが2021年11月のフィリップスオークションに登場し、約29万ドル(日本円で約3182万8000円)で販売された。オークションに出品される前、この時計はカルティエが2年間にわたって復元を行い、オリジナルに忠実な形で再生を遂げた。その時計は、ある日本の著名なカルティエコレクターから譲り受けたもので、彼は当時私に連絡を取ってくれて、修復前の写真を見せてくれた。そこには100年ものあいだ、風雨や水の浸入、その他あらゆるもので摩耗された文字盤が写っていた。これらの2本のヴィンテージタンク サントレは、クリスティーズで販売されていたプラチナの個体よりも、時計本来の美観へと忠実な復元が施されているようだ。

ヴィンテージウォッチを愛する多くの人と同じように、私もコンディションとオリジナリティを大切にするように教えられてきた。ヴィンテージウォッチに魅力があるのはそのためであり、復元をすることでその美しさを奪ってしまう(と思う)のだ。しかし私たちが最近改めて思い知らされたように、修復は現代の時計収集のひとつの常識である。ここで話しているタンク サントレは100歳の誕生日を迎えようとしており、自然なままの状態やオリジナリティを完全に望むことはできない。特にカルティエのヴィンテージウォッチはすでに希少価値が高く、そのような期待を抱くことはディーラーやオークションハウスにとって逆のインセンティブを生む出す可能性がある。

ヴィンテージロレックスの場合、何十万本もの時計が生産されていたなかで(しかも実際には防水性にも優れていた)良好なコンディションを保った、日々出合える何十ものありふれた例から収集可能な個体を区別するものだ。ヴィンテージ カルティエの場合は、これに当てはまらない。

一方で、この例のように最近修復された時計がオークションで数十万ドルに達することを不思議に思う。なかには意図しない結果もあるかもしれない(これはどのようなコンディションのヴィンテージウォッチであっても購入し、 “忠実な修復”のためにメーカーに送り返すことを期待するインセンティブになるのではないだろうか?)。クライアントが新しい時計をカスタマイズする、カルティエのNSO(ニュー・スペシャル・オーダー)プログラムに似ていると感じるかもしれない。ここでいう“カスタマイズ”は、あくまでもオリジナルの時計をベースにしたものである。ロレックスやパテックなど、復元した時計を単に“手つかず”であるかのように見せかけられる、コンディション重視のコレクションで起こりうるものとは異なり、このようなメーカーの復元は容易にわかるというのがこれからコレクターになる人にとって朗報である。

一方で希少なものは希少のままで、20年代のタンク サントレほどレアなものはない。これらの時計があと100年存在し続けるには、そのほとんどに手を加える必要がある。私の意見は文字どおりオリジナルの時計の美しさを復元する、忠実なレストアの価値を認めるべきであり、代わりに現代の美的感覚や流行に合わせた自由な修復を避けるべきだということだけだ。これらの古い時計はヴィンテージを超えてアンティークになっていくにつれ、おそらくこれがオリジナルの魅力を維持する唯一の方法なのだろう。

アトリエ・ド・クロノメトリーのユニークピース、AdC17を紹介しよう。

7年経った今、オーダーメイドウォッチへの需要は、その仕上がりの素晴らしさと同じぐらい強いようだ。
先週、アトリエ・ド・クロノメトリー(Atelier de Chronométrie)がInstagramにユニークピースを投稿したとき、私は心を奪われた。
その最新作、AdC17 ラトラパンテ(AdC17 rattrapante)は、直径39mmに厚さ13.3mmのグレーとローズゴールドの18K製ツートンカラーケースに、ゴージャスなガルバニックローズゴールドのツートンカラーダイヤルを備えた、とにかくゴージャスなモデルである。ダイヤルにはローズゴールドのバーインデックスとブレゲ数字、ローズゴールドとブルースティールの針、そしてローズゴールドのリューズとプッシャーが配されている。針、リューズ、プッシャーのローズゴールドの色調は、ダイヤルのローズよりも明らかにイエローが強く感じられる。これは時として衝突することもあるが、このモデルではうまく機能している。
本当はHands-Onで紹介したいところだが、今回は残念ながらほんのひと握りの写真で我慢してもらいたい。カスタムメイドであり、そして現在3人の従業員で構成されるこのブランドの年産10本のうちの1本であるため、私がAdC17を実際に見ることはおそらくないだろう。しかし提供された4枚の画像からでも、アトリエ・ド・クロノメトリーとこの時計を依頼したクライアントについて多くを知ることができる。ここで1歩引いて見てみよう。
バルセロナを拠点とするビスポーク時計製造チームについて初めて取り上げたのは7年前だが、当時は信じられないというコメントもあった。そのうちのひとりはハイエンド市場が“縮小”しているなかで、高額なオーダーメイドウォッチの需要はどこにあるのかと考えていたようだ。このエピソードは、ここ数年のブームをそのとき誰も予想していなかったことを物語っている。そのあいだにもアトリエ・ド・クロノメトリーはOnly Watchのためのふたつの時計や、今年発表された初の自社製キャリバーなど、魅力的な作品を発表し続けている。
この時計に対する私の最初の感想は、AdC17の、そしてアトリエ・ド・クロノメトリー全体をさらに素晴らしいものにしているのは、ここ数週間で議論を巻き起こし、我らがトニー・トレイナによる素晴らしい記事のきっかけとなったものだ、というものだった。これはオマージュなのか? ほかのブランドによる“芸術性”の引用なのだろうか? 私はそうは思わないが、この時計がヴィンテージ趣味の持ち主によってデザインされたことは明らかだ。コルヌ・ドゥ・ヴァッシュのラグ、ブレゲ数字、ツーレジスターのレイアウトは、多くのブランドからインスピレーションを得たものだろうが、決して特定のブランドが独占しているわけではない。
コルヌ・ドゥ・ヴァッシュのラグはヴァシュロン・コンスタンタンの時計に使用されていることで知られているが、JLCも同じケースサプライヤーを使用し、コルヌ・ドゥ・ヴァッシュのラグを採用していることが多い。ブレゲ数字も、パテック(と当然ブレゲ)がクロノグラフの代名詞としているとしても、多くのブランドで使用されている。初期のパテック Ref.130を彷彿とさせるダイヤルには長めのバーインデックスと、ブロック体のローマ数字の代わりにブレゲ数字が12時と6時に配されている。ツートンカラーのケースもRef.130のバリエーションにインスパイアされたものだろう。
アトリエ・ド・クロノメトリーに連絡を取り、デザインプロセスについて詳しく聞いた。すべての時計は、それぞれの顧客にとって唯一無二のものであり、決して同じものは作られない。顧客は多くの場合、アイデアを持ち込んできて(なかには何も考えずアドバイスを受け入れる人もいる)、それを元に図面、2次元イメージ、3次元イメージが作られる。この場合、顧客は航空分野が非常に好きだったため、ノット単位で表示されるタキメータースケールなど独自のアイデアを提案した。デザインが固まったらキャリバーとケースの製作に入る。今は注文が多いので、納期は約3年となっている。
AdC17 Chronograph
ムーブメントはヴィンテージのヴィーナス179をベースに、パラジウムメッキのブリッジ、ピンクゴールドメッキのホイール、SSの装飾に、ブラックのポリッシュ仕上げが施されている。センターのラトラパンテホイールはチタン製だ。
ブランドは私にこの作品の価格を教えてくれなかったが、コレクターに話を聞いた結果、おそらく6桁ドル前後であろうことは間違いない。その価値があるかどうかは、それを見る人の目にかかっている。目新しい自社製ムーブメントがあれば、もっと強い主張ができると思う。しかしデザインについては、私がオーナーになれたらと思うほど美しく仕上がっている。
ジャズの世界では、自分のバリエーションを演奏する前に、そのベースとなる曲の基本を知っておかなければならないと考えられている。ジャズのスタンダードナンバーを自分なりにアレンジしようとする前に、人々は『リアルブック(原題:Real Book)』に載っている曲のあらゆるソロやバリエーションを研究する。ポップスからロックまで、あらゆるところで内輪ネタのように登場する短いフレーズ、“リック”というものもある。偉大なミュージシャンたちでさえ、互いの演奏のソロのバリエーションを披露し合う。
私はAdC17をそのように見ている。誰かが偉大な作品の優れた部分を取り入れ、それを自分のものにしたのだ。そして、実際に見ることができないのが残念でならない。
アトリエ・ド・クロノメトリー AdC17。機械式手巻き時計、スプリットセコンドクロノグラフ。直径39mm 、厚さ13.3mm、グレーおよびローズゴールドの18K製ケース。“ヴィーナス179”をベースにした手巻きムーブメント、パラジウムメッキのブリッジ、ピンクゴールドメッキのホイール、SS製の装飾、ブラックポリッシュ仕上げのパーツ。9時位置にランニングセコンド、3時位置に30分積算計。ガルバニック仕上げのローズゴールド製ツートンダイヤルにノット表記のタキメータースケール。18Kローズゴールド製の針4本とブルースティール製の針2本。カスタムオーダーも受け付けている。

リシャールミルの人気モデルの値段を紹介するとともに、

リシャールミルの値段はなぜ高い?人気モデルの定価を一挙紹介

リシャールミルは、数百万円から億を超える価格帯で取引される超高級時計ブランドです。この記事では、リシャールミルの人気モデルの値段を紹介するとともに、素材・構造・生産方法など多角的な視点から、高額である理由を詳しく解説します。

リシャールミルとは?

リシャールミル(Richard Mille)は、2001年に創業した比較的新しい高級時計ブランドです。創設者のリシャール・ミル氏は「時計界の革命児」として知られ、従来の高級時計の概念を覆すような革新的なアプローチで業界に衝撃を与えました。

F1レーシングの先端技術を時計製造に応用し、超軽量かつ耐衝撃性に優れた腕時計を次々と生み出しています。ラファエル・ナダルやフェリペ・マッサといったトップアスリートが着用し、あらゆる状況でも機能する頑丈さと精密さを兼ね備えています。

また、伝統的な高級時計ブランドが歴史や伝統を重視するのに対し、リシャールミルは最先端の技術と素材にこだわり、革新性を追求しているのが特徴です。

リシャールミルの人気モデルの値段
リシャールミルの腕時計は、最も手頃な入門モデルでも数百万円からスタートし、限定モデルともなれば1億円を超えるものも珍しくありません。ここでは、人気モデルの定価目安を紹介します。

なお、公式サイトには具体的な価格は記載されておらず、正規販売店で直接問い合わせるか、実際に購入申し込みをしないと正確な定価がわからないケースもあります。あくまでも目安として参考にしてください。

モデル 定価(約)
RM 011 オートマティック フライバック クロノグラフ フェリペ・マッサ 約1,500万円
RM 012 トゥールビヨン 約5,000万円
RM 027 トゥールビヨン ラファエル・ナダル 約4,700万円
RM 052 トゥールビヨン スカル 約4,708万円
RM 056 トゥールビヨン クロノグラフ サファイア 約1億5,400万円
RM 056 ジャン・トッド 約2億4,750万円
RM 11-04 オートマティック フライバック クロノグラフ ロベルト・マンチーニ 約7,000万円
RM 52-05 トゥールビヨン ファレル・ウィリアムス 約3億1,460万円
RM 057 トゥールビヨン ジャッキー・チェン 約4,900万円
RM 011 オートマティック フライバック クロノグラフ フェリペ・マッサ
RM 011 オートマティック フライバック クロノグラフ フェリペ・マッサは、F1ドライバーのフェリペ・マッサとのコラボモデルです。フライバッククロノグラフや12時間積算計、60分カウントダウンタイマー、デイト表示を搭載しています。定価は約1,500万円です。

RM 012 トゥールビヨン
RM 012 トゥールビヨンは、建築的なデザインを追求したパイプ構造を採用し、スケルトン仕様のモデルです。30本限定の展開で、定価は約5,000万円です。

RM 027 トゥールビヨン ラファエル・ナダル
RM 027 トゥールビヨン ラファエル・ナダルは、テニス選手のラファエル・ナダルとのコラボモデルです。重量20g以下の超軽量設計が特徴で、定価は約4,700万円です。

RM 052 トゥールビヨン スカル
RM 052 トゥールビヨン スカルは、スカルモチーフを大胆に配置し、ムーブメントの一部として機能するモデルです。15本限定の展開で、定価は約4,708万円です。

RM 056 トゥールビヨン クロノグラフ サファイア
RM 056 トゥールビヨン クロノグラフ サファイアは、ケース全体にサファイアクリスタルを使用し、スケルトン構造を強調したモデルです。5本限定の展開で、定価は約1億5,400万円です。

RM 056 ジャン・トッド
RM 056 ジャン・トッドは、FIA会長のジャン・トッドのキャリア50周年記念モデルです。全面サファイアクリスタル製で、定価は約2億4,750万円です。

RM 11-04 オートマティック フライバック クロノグラフ ロベルト・マンチーニ
RM 11-04 オートマティック フライバック クロノグラフ ロベルト・マンチーニは、サッカー監督のロベルト・マンチーニとのコラボモデルです。カーボンTPTケースを採用し、定価は約7,000万円です。

RM 52-05 トゥールビヨン ファレル・ウィリアムス
RM 52-05 トゥールビヨン ファレル・ウィリアムスは、音楽プロデューサーのファレル・ウィリアムスとのコラボモデルです。グレード5チタンを使用し、定価は約3億1,460万円です。

RM 057 トゥールビヨン ジャッキー・チェン
RM 057 トゥールビヨン ジャッキー・チェンは、ジャッキー・チェンの中国名「成龍」をモチーフにしたデザインのモデルです。36本限定の展開で、定価は約4,900万円です。

リシャールミルはなぜ高いのか?

リシャールミルの腕時計が数千万円、時には1億円を超える価格で取引されるのには、単なるブランド力以上の明確な理由があります。ここでは、製造工程や素材選びから販売戦略まで、リシャールミルの腕時計が高額である理由を詳しく解説します。

高級素材を使用
リシャールミルの腕時計は、カーボンTPTやグレード5チタン、シリコンナイトライドなど、F1マシンや最新の航空機にも使用される先端的な素材を採用しています。

超軽量でありながら驚異的な強度を持ち、例えば重さわずか30グラム程度のモデルが1,000G以上の衝撃にも耐えるという驚くべき特性を実現しています。テニスプレイヤーのラファエル・ナダルが試合中に着用しても支障がないほどの軽さと頑丈さです。

しかし、リシャールミルの腕時計に使用されている先端素材は非常に高価で、加工も極めて難しいため、部品製造だけでも膨大なコストがかかります。また、素材開発自体にも莫大な研究費が投入されているため、最終価格に大きく反映されています。

画期的な構造と複雑機構
リシャールミルの腕時計は、見た目の美しさだけでなく、内部構造にも並外れた工夫が凝らされています。特に特徴的なのは、トゥールビヨンやクロノグラフといった複雑機構を、従来の常識を覆す形で実装している点です。

例えば、一般的な高級時計のトゥールビヨンは衝撃に弱いのが難点です。リシャールミルは独自のサスペンション機構を開発し、激しい動きにも対応できる設計を実現しています。テニスコートでのフォアハンドストロークの衝撃にも耐えられるよう設計されたムーブメントは、時計工学の常識を覆す革新です。

画期的な機構を設計・製造するには、何百もの試作と何千時間もの開発時間が必要です。1つの機構を完成させるために数年を要することもあり、最終価格に反映されています。

手作業による少量生産
大手高級時計ブランドが年間数十万本生産している一方で、リシャールミルはわずか約5,000本程度と極めて限られています。

生産量が少ない最大の理由は、ほぼすべての工程が熟練した職人の手作業によって行われているからです。1本の時計を完成させるには、数百時間から千時間以上の作業時間がかかるものもあります。例えば、複雑なケース構造は最大で40時間もの高精度機械加工を必要とし、さらに手作業による仕上げが加わります。

また、カーボンTPTなどの特殊素材は量産に向かない性質を持っており、そもそも大量生産が困難です。手作業による少量生産が、市場での希少性を高め、すぐには手に入らないというプレミアム感を生み出しています。

高いブランド戦略と限定性
リシャールミルは、一般的な高級時計ブランドと比べ、広告宣伝費を抑える独自のマーケティング戦略を展開しています。代わりに採用しているのが、F1ドライバーのフェルナンド・アロンソや、テニスプレイヤーのラファエル・ナダルなど、厳選されたトップアスリートとのパートナーシップです。

また、これらのアスリートは、実際の競技中にもリシャールミルの腕時計を着用しています。通常、高級時計は競技中に着けることは考えられませんが、リシャールミルはその軽さと耐久性を証明するため、極限状況下での着用を推奨しているのです。

また、リシャールミルの限定モデルは、コレクターの間で熾烈な争奪戦を引き起こし、価値を高めています。戦略的な希少性の演出が、ブランド全体の価値向上につながっています。

ステータスと資産価値の象徴
リシャールミルの腕時計は、セレブリティやスポーツ選手、実業家などの影響力のある人々が着用することで、「成功の証」としての地位を確立しています。

投資価値も非常に高く、特に限定モデルは発売直後から市場価格が定価を大きく上回ることも珍しくありません。例えば、定価3,000万円の限定モデルが中古市場で5,000万円以上で取引されるケースもあります。

リシャールミルの腕時計には、着用することで喜びを得られると同時に、将来的な資産価値も期待できるという二重の魅力があるのです。

リシャールミルを安く手に入れる方法
高額なリシャールミルでも、購入方法によってはより手頃な価格で入手できる可能性があります。ここでは、リシャールミルをできるだけリーズナブルに手に入れるための方法を紹介します。それぞれにメリットとリスクがあるため、自分に合った購入方法を見つける参考にしてください。

正規店で購入する
正規店での購入は、一見すると安くないように感じますが、長期的な視点ではプラスに働くことがあります。確かに定価での購入となりますが、ブランドの公式保証やアフターサービスが完全に受けられるという大きな安心感があります。

リシャールミルは複雑な機構を持ち、定期的なメンテナンスが不可欠です。正規店購入であれば、将来的な修理やオーバーホールの際に円滑なサポートを受けられます。また、正規店では購入時に値引きはほとんど期待できませんが、付属品の完備や状態の保証という点で安心です。

加えて、人気の高いモデルは購入後に価値が上昇するケースもあり、その場合は「結果的に安く手に入れた」ことになります。ただし、正規店では在庫確保や順番待ちが必要なケースが多く、希望のモデルをすぐに入手できるとは限りません。

並行輸入品を購入する
並行輸入品とは、正規代理店以外のルートで輸入された商品のことです。リシャールミルの場合、国や地域によって価格設定や為替レートの違いがあるため、並行輸入品は正規品よりも10〜20%程度安く購入できる可能性があります。

例えば、ヨーロッパで購入したリシャールミルを日本に輸入する場合、付加価値税(VAT)の還付により、実質的に税金分安く購入できることがあります。海外の正規店で購入した商品を個人輸入する形なので、品質面では正規品と同等です。

ただし、国際保証はあっても日本国内の正規店でのアフターサービスを受けにくくなる場合があるため注意が必要です。また、並行輸入業者の信頼性も見極めないといけません。実績のある業者を選ぶことで、偽物のリスクを最小限に抑えられます。

中古品を購入する
最も大きな値引きが期待できるのが中古市場です。リシャールミルの中古品は、状態や人気モデルにもよりますが、新品の30〜50%程度安く購入できるケースもあります。特に、初期のモデルやステンレスケースのモデルなど、比較的シンプルな仕様のものは、新品よりもかなり安価に入手可能です。

信頼性の高い中古時計専門店やオークションサイトでは、真贋鑑定済みの商品を取り扱っており、品質面でも一定の安心感があります。また、すでに市場価値が安定しているモデルであれば、価値の大きな下落のリスクなく購入できるでしょう。

ただし、中古品を購入する場合は、外観だけでなく、内部機構の状態や付属品の有無、過去の修理歴などをしっかり確認することが重要です。また、人気モデルでは中古市場でも新品以上の価格で取引されることがあるため、モデル選びも慎重に行う必要があります。