ダヴィッド・カンドー DC12 マーヴェリックが登場。

独立時計師ダヴィッド・カンドー(David Candaux)氏が、彫刻的な39.5mmのケースに新しいダブルテンプのムーブメントを搭載した新作を発表した。

ダヴィッド・カンドー(David Candaux)氏は、ほぼすべてのディテールにおいて独自のユニークな創造性にあふれた新作を発表した。これは、彼がムーブメントのアーキテクチャとデザインのアイデアを初めて考案してから10年以上を経て生まれた作品である。DC12 マーヴェリックは、ジュウ渓谷で生まれたこの独立時計師にとって新しいムーブメントであり、ディファレンシャル機構で接続されたダブルテンプを備え、それぞれのエネルギー入力を調整し平均化することで、同期を保っている。

C30と名づけられた新しいムーブメントは、そのほとんどがチタン製の部品とブリッジで構成されている。ドラマチックな曲線を描くケースもまた、サテンとポリッシュ仕上げを施したチタン製で、きわめて着用しやすい直径39.5mmだ。凹状のニッケルシルバー製ダイヤルには、ブルースティールのスモールセコンド針の歯車を収めたディファレンシャルが見え、建築的な高さのあるアプライドインデックスが緩やかな傾斜のホワイトのミニッツトラックを囲んでいる。DC12 マーヴェリックは、カンドー氏を故郷であるスイスの歴史的なウォッチメイキング技術への敬意を示しつつ、ムーブメントのデザインと仕上げにおいて徹底的にモダンな時計デザインである。

ジュネーブ・ウォッチ・デイズで、カンドー氏が今回リリースされる前に本作を我々にプレビューしてくれた際、彼は17年以上も前にダブルテンプムーブメントのデザインを検討し始めたと語った。そして今年6月になってようやく、彼は動作するプロトタイプムーブメントを完成させたばかりなのだ。限られた生産能力のため(2017年にスタートしたカンドー氏の名を冠したブランドは彼、彼の父、そしてパテック フィリップの元時計師を含むわずか3人で構成されている)、彼は年間10本から15本の時計を生産する予定。価格は9万8000スイスフラン(日本円で約1855万円)だ。

カンドー氏によると、DC12 マーヴェリックという名前は意外な海外の人物からインスピレーションを得ているという。その人物とは、テキサス州の弁護士、政治家、牧場主、土地所有者であったサミュエル・A・マーヴェリック(Samuel A. Maverick)だ。“maverick(編注;異端者を意味する)”という言葉は彼に由来しており、このモデル名はカンドー氏自身の独立性と、彼自身のやり方で物事を貫くというこだわりを強調していると語る。

その一例が、いわゆる“マジッククラウン”だ。これはカンドー氏の代表的な発明品のひとつで、以前のモデルでも採用されていたもの。ケース前面下部にぴったりと収まっており、下向きに押すと飛び出し、ムーブメントの巻き上げや時刻調整ができる仕組みだ。もう1度押すとリューズは元の位置に戻る。リューズの上、6時位置の下ではダイヤルに“LE COEUR & L’ESPRIT”(心と精神)と記されている。

ケース自体は、サテン仕上げとポリッシュ仕上げを施したチタン表面が、ドラマチックな曲線と傾斜した楕円形を際立たせている。ラグは彫刻的で長く、先細りになっているが、手首に沿うように内側に曲がっているため着用しやすい。シースルーバックからは、繊細でありながら主張のある、緻密な仕上げを施したチタン製ブリッジを見ることができ、ふたつのブリッジはそれぞれのテンプを対称的な曲線で包み込んでいる。

ニッケルシルバー製のダイヤルは、伝統的なブルースティール製ハンドセットが、シルバーグレインのテクスチャーの施されたダイヤル上で、カンドー氏独自の視認性に優れたデザインを表現している。ダイヤルは、3、6、9の数字が配されたホワイトオパールのアワーハンドトラックに囲まれている。12時位置は、ブルースティールのスモールセコンド針も稼働するオープンなディファレンシャル機構の底部で示されている。段差のついたアプライドのチタンインデックスは、凹状に傾斜したダイヤルの外周ミニッツトラックに劇的な立体感を与えている。

我々の考え
このユニークなムーブメントによって、カンドー氏はダブルテンプを備え、オープンワークを施し、そしてユニークな位置に配置されたディファレンシャル機構を驚くほどコンパクトで着用しやすいチタン製ケースに収め、きわめて読み取りやすいダイヤル構造とデザインを実現した。この時計はモダンな外観と感触を持ち、チタンケースの傾斜した曲線のおかげで、私のように手首が小さな人にもかなりしっくりとくる。

見えるムーブメントは眺める喜びを与えてくれると同時に、フィリップ・デュフォーのデュアリティなど、過去にダブルテンプを探求したジュウ渓谷の偉大な時計師たちに敬意を表している。このダヴィッド・カンドーによる並外れてモダンで比類なき新作は、彼らから間違いなくインスピレーションを受けているのだ。

基本情報
ブランド: ダヴィッド・カンドー(David Candaux)
モデル名: DC12 マーヴェリック(DC12 Maverik)

直径: 39.5mm
厚さ: 11.7mm
ケース素材: チタン
文字盤色: グレイン仕上げを施したシルバーとホワイトオパール
インデックス: 様々な高さで盛り上げられている、チタン製アプライド
夜光: なし
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: 手作りラバーストラップ、メタル&ベルクロクラスプ付き

ムーブメント情報
キャリバー: C30
機能: 時・分表示、12時位置にスモールセコンド、ディファレンシャル機構付きダブルテンプ
直径: 29.5mm
厚さ: 6.9mm
パワーリザーブ: 58時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万1600振動/時(3Hz)
石数: 45
クロノメーター認定: なし

価格&発売時期
価格: 9万8000スイスフラン(日本円で約1855万円)
発売時期: 最初のモデルは11月から納品開始
限定: なし、だが年間10本〜15本の限定生産

ロンジンのフラッグシップであるロンジン マスターコレクションの新作が登場した。

ロンジンについては卓越した計時技術や航空時計の歴史が多く取りざたされるが、魅力はそれだけではない。今回の新作は、その異なる側面から深遠たるブランドの真髄をあらためて探るのだ。

スイス・サンティミエで1832年に創業し、1867年に初の自社工場を建造した土地にちなんだブランド名を持つロンジン。懐中時計の製造技術に長け、いち早く近代的な量産体制を整えたことでその名を世界に知らしめた。高精度で耐久性にも優れたことから、腕時計に移行後もスポーツや航空、アドベンチャーといった分野で多くの実績を残す。こうしたウォッチメイキングの長い歴史と伝統にフォーカスするラインとして、2005年に生まれたのがロンジン マスターコレクションだ。

今回の新作は、昨年発表された190周年記念モデルをベースにしている。これは、歴史的な懐中時計やヘリテージウォッチのデザインモチーフを現代的なアレンジで再編集して、高く支持されたモデルだ。今回のマスターコレクションでは、これをセンターセコンドからスモールセコンドに変更し、ケースサイズも40mmから38.5mmに小径化。その内容はバリエーションの域を越えて、新たな個性になっているといっていいだろう。それだけの開発期間を考えれば、1年足らずの発表もただ前作のヒットを受けてというより当初からの既定路線だったと思われる。

時計の歴史とともにつねに時代の息吹を注ぐ

ロンジンというブランドを語るとき、まず挙がるのは長い歴史と伝統に培われた技術であり、名作の数々だろう。多くの栄光に輝いた懐中時計から、高精度と信頼性でスポーツ計時のパイオニアとなり、さらに探検家や飛行家の数多くの冒険を支えた。だがこうした偉業ばかりでなく、いつの時代も人々の日常に寄り添い、その憧憬やニーズを捉えた時計を提供してきたことも見逃せない。

市民革命により台頭した新興ブルジョワジーは、それまでの封建勢力とは異なる価値観を持ち、新たなライフスタイルを謳歌した。その象徴のひとつになったのが腕時計だった。ロンジンが初の腕時計を製造したのは 1894年のことだ。20世紀初頭、腕時計の需要が高まり始めると、ロンジンはこの新たなトレンドに着目し、この分野でもパイオニアとなっていく。1910年代に早くも初の腕時計を発表しただけでなく、この新しいライフスタイルに対応するために楕円形、正方形、長方形など、新しい形状のムーブメントを導入することで、さらに1歩前進させたのだ。ロンジンはまた、腕時計に対する女性のニーズや需要も意識していた。そのため、1912年には早くも女性の手首にフィットするエレガントな腕時計を提供するべく、ムーブメントの小型化に着手している。

1925年のパリ博覧会で紹介されたアール・デコ様式の影響は、建築や工業製品始め、ウォッチデザインも例外ではなかった。こうした先進的なデザインを纏い、時計は日常を彩るアクセサリーとして洗練に磨きをかけた。ロンジンはこの博覧会に出品し、グランプリを獲得。アール・デコを着想源とした多くの作品を発表している。なお、ロンジンは長方形や楕円形の小型ムーブメントを自社で製造することができたため、これが女性用のエレガントな腕時計の最先端を走るベースとなった。当時、男性用として一般的であった懐中時計ではなく、手首に時計を着用するファッションをスタートさせたのである。

世界大戦の時代が終わり、1945年にロンジンは初の双方向回転ローター搭載した時計のひとつであるCal.L22Aを開発。その効率的な巻き上げシステムは特許を取得した。また、ロンジンは1959年に作られた天文台キャリバー360で技術的なマイルストーンを打ち立てた。自動巻き時計には、ゼンマイを巻き上げる手間を必要としないという実用的な利点があり、秒単位の正確な読み取りを両立したセンターセコンドは、自動巻きの象徴として先進の時を刻んだ。こうして常に時計の進化と歩みをともに、ロンジンは時代の息吹を注ぐスタイルを生み出してきたのである。

ほどよいサイズに際立つスモールセコンド

ロンジン マスターコレクション(シルバーダイヤル)
Ref.L2.843.4.73.2 37万8400円(税込)

サンドブラスト仕上げのシルバーカラーの文字盤にブルースティール針が生える。ベースとなった190周年記念モデルよりもさらにクラシックへの回帰を感じさせる1本。

ロンジン マスターコレクションの新作の内容を見てみよう。190周年記念モデルがセンターセコンドを採用しモダンな50年代スタイルに仕上げたのに対し、スモールセコンドを搭載した新作は、さらに30年代に遡る。目を引くのは精巧なエングレービングで仕上げたブレゲ数字だ。これは細心のCNC切削でも1数字を彫るのに約6分かかり、1枚を完成させるのは計80分を要するという。その外周には大小のメリハリをつけたドットインデックスが刻まれる。視認性を高めるため、フランジ部分はすり鉢状にスロープされているが、こちらは60年代の雰囲気だ。

スモールセコンドは文字盤全体に対してバランスよくレイアウトされているが、これもケース径を40mmから38.5mmに変更した理由のひとつだろう。文字盤に凹凸をつけ、レイルウェイトラックを記したレコードパターンを刻み、存在感を際立たせる。ブルーのリーフ針や筆記体の旧ロゴがヴィンテージ感を演出する一方、文字盤を被う風防はフラットになり、コンテンポラリーな印象を与える。カレンダーを省いたのは、実用性以上に様式美を求めた好ましい英断だ。

左は昨年登場した40mm径・センターセコンドのロンジン マスターコレクション 190周年記念モデル。右は38.5mm径・スモールセコンド仕様として新たに仲間入りした新作のロンジン マスターコレクション。

キャリバーはロンジンエクスクルーシブのL893を搭載する。シリコン製ヒゲゼンマイを採用し、約72時間のパワーリザーブを備える。ちなみに190周年記念モデルが採用するL888.5(ETA A31.L01)とは、センターセコンドとスモールセコンドという仕様の異なる兄弟キャリバーであり、そのスペックは共通だ。

ロンジン マスターコレクション(サーモンダイヤル)

Ref.L2.843.4.93.2 37万8400円(税込)

サーモンカラー文字盤は主に1950年代に流行したもので、現在多くのブランドが注目するトレンドカラー。一方でバーティカルサテン仕上げは当時とは異なる現代の雰囲気を付け加える。

ロンジン マスターコレクション L2.843.4.93.2 を見る

カラーバリエーションは3種類が用意されている。シルバー文字盤はサンドブラスト仕上げにブルーのリーフ針が映え、際立つ彫り数字もモダンな印象だ。今年の注目色であるサーモンピンクを採用した文字盤には、バーティカルサテン仕上げを施し、シャープなメタル感を演出する。針や彫り数字はブラックで統一し、そのコントラストが艶のある全体を引き締める。アンスラサイトの文字盤は、粒子のようなテクスチャー感のあるシボで仕上げる。針や彫り数字、ロゴなどにはアクセントカラーを用い、シックな風格を漂わせる。

同じデザインではあっても、カラーリングや仕上げの違いで異なる個性が楽しめる。好みや自身のスタイルに合わせて選べるのもうれしいところだ。

ロンジン マスターコレクション(アンスラサイトダイヤル)

Ref.L2.843.4.63.2 37万8400円(税込)

3つのバリエーションのなかでも最も現代的なのはアンスラサイトダイヤルだろう。シボ加工が施された文字盤にピンクの針を組み合わせたコントラストの効いたスタイルは、ヴィンテージとは一線を画すものだ。

ロンジン マスターコレクション L2.843.4.63.2 を見る

マスターコレクションは2005年に誕生し、現代のリバイバルデザインの先駆けとなった。しかしその内容は前述のとおり、決して単なる復刻ではない。膨大なアーカイブのなかからより価値あるヘリテージを選りすぐったブランドの集大成である。だからこそクラシックとコンテンポラリーが独自のスタイルとして違和感なく調和するのだ。

以前ロンジンに、ブランドにおけるヘリテージの位置づけについて訊ねたことがある。それに対してロンジンは、ヘリテージは最新技術を駆使した新しいモデルを開発するためのインスピレーションの源となることが多く、クラシカルなモデルを参考にしている、と答えた。機能やデザインをただ再現するのではなく、時代の感性や技術で進化させてこそ、ヘリテージの価値を次世代に繋げられるということだ。その姿勢はロンジンがどこよりも自社ミュージアムを充実させていることにも表れている。

マスターコレクションの新作は絶妙な装着感とともに、シンプルではあっても細部まで凝った仕様や研ぎ澄まされた機能美が漂う。ひけらかすことなく腕元になじむスタイルからは、“Elegance is an attitude”というロンジンが掲げるブランド哲学が伝わってくるようだ。その佇まいを見ていると、有翼の砂時計のロゴに未来へ羽ばたく時への情熱を具現化した、ブランドのセンスを改めて感じるのである。

ブラウン×ポール・スミスのコラボレートによる2本の新作ウォッチが登場。

ドイツプロダクトデザイン大手のブラウンと、イギリスのファッションブランドであるポール・スミスが再度コラボレートし、今度はスイス製ETAムーブメントを搭載したモデルを発表した。

新作ウォッチ1本目(BN0279SLPS)は、ETA 2895-2ムーブメントを搭載したスモールセコンドと日付表示付きの40mm径マットシルバーステンレススティール製モデルだ。2本目(BN0279GNPS)も40mm径だが、マットなガンメタルのSS製ケースで、ETA 2892A2ムーブメントを搭載する。どちらもレインボーの秒針と3時位置に日付表示を備える。またシースルーバックで、ムーブメントが見えるようになっている。

生成される各リファレンスは100本のみ。しかも950ドル(日本円で約14万円)もする。

さて、ブラウンが1989年に作った最初のアナログウォッチを振り返ってみよう。お察しのとおり、AW10は33mmというシンプルな3針ウォッチだった。実際にはディートリッヒ・ルブス(Dietrich Lubs)とディーター・ラムス(Dieter Rams)による、機能性と視認性というビジョンを反映してつくられたものだ。おそらくこれは、2023年にはもっと大きなフォントサイズが必要だという事実を示しているのではないだろうか? 私たちの目が弱くなってきている? 画面からくる疲れ? よくわからないけれど。最新版のAW10は3万8500円(税込)で購入できる。

私はブラウンならAW20がいい。トニー・トライナはかつて、それが史上最高の日付窓を備えていると主張していたことがある。本当の話なら大きい。

話を戻して、この新しい40mm径自動巻きモデルには、6時位置にポール・スミスのサインが刻印されている。すっきりとしたミニマルなルックだ。これらのデザインはオリジナル製品から大きく逸脱することはない。

我々の考え
ブラウンは実は地味なコラボキングだ。オフホワイトやハイスノバイエティともコラボしたことがあり、ハイプの力はお手の物だ。しかし今回ポール・スミスと一緒に仕事をすることで、少し違ったデモを見ることができたのは確かだ。もう少し大人っぽく、もう少し洗練されていて、 “クリーニング屋から戻ってきたら、すぐにシャツをしまって、色やシーン別に掛けておく”ようだ。

ブラウンとのコラボレーションは、ディーター・ラムスのコアデザインの信条から大きく逸脱することはない。クールかつクリーンで、ミニマルなのだ。

ブラウンの腕時計に950ドル(日本円で約14万円)払うように説得するのは少し難しいかもしれないが、これは限定モデルであり、また自動巻きムーブメントとメンズウェアの生みの親であるポール・スミスによるお墨付きをもらっているのだ!

Braun x Paul Smith Watch
基本情報
ブランド: ブラウン(Braun)
モデル名: ポール・スミス + ブラウン BN0279(Paul Smith + Braun BN0279)

型番: BN0279SLPS(スモールセコンド)、BN0279GNPS(センターセコンド)
直径: 40mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤: グレー
夜光: あり
防水性能: 5気圧
ストラップ/ブレスレット: 22mm幅ブラックPUストラップ

ムーブメント情報
Braun x Paul Smith watch caseback
キャリバー: ETA 2895-2、ETA2892A2
機能: 時・分表示、スモールセコンド、日付表示(スモールセコンドモデル)/時・分表示、センターセコンド、日付表示(センターセコンドモデル)
直径: 25.6mm
パワーリザーブ: 約42時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 27(スモールセコンドモデル)、21(センターセコンドモデル)

価格 & 発売時期
価格: 950ドル(日本円で約14万円)
発売時期: 発売中
限定: あり、各リファレンス100本

ブラウン×ポール・スミスのコラボレートによる2本の新作ウォッチが登場。

そして今回はスイス製機械式ムーブメントを搭載している。

ドイツプロダクトデザイン大手のブラウンと、イギリスのファッションブランドであるポール・スミスが再度コラボレートし、今度はスイス製ETAムーブメントを搭載したモデルを発表した。

新作ウォッチ1本目(BN0279SLPS)は、ETA 2895-2ムーブメントを搭載したスモールセコンドと日付表示付きの40mm径マットシルバーステンレススティール製モデルだ。2本目(BN0279GNPS)も40mm径だが、マットなガンメタルのSS製ケースで、ETA 2892A2ムーブメントを搭載する。どちらもレインボーの秒針と3時位置に日付表示を備える。またシースルーバックで、ムーブメントが見えるようになっている。

生成される各リファレンスは100本のみ。しかも950ドル(日本円で約14万円)もする。

さて、ブラウンが1989年に作った最初のアナログウォッチを振り返ってみよう。お察しのとおり、AW10は33mmというシンプルな3針ウォッチだった。実際にはディートリッヒ・ルブス(Dietrich Lubs)とディーター・ラムス(Dieter Rams)による、機能性と視認性というビジョンを反映してつくられたものだ。おそらくこれは、2023年にはもっと大きなフォントサイズが必要だという事実を示しているのではないだろうか? 私たちの目が弱くなってきている? 画面からくる疲れ? よくわからないけれど。最新版のAW10は3万8500円(税込)で購入できる。

復刻版のブラウン AW10。Photo: courtesy Braun P&G

私はブラウンならAW20がいい。トニー・トライナはかつて、それが史上最高の日付窓を備えていると主張していたことがある。本当の話なら大きい。

話を戻して、この新しい40mm径自動巻きモデルには、6時位置にポール・スミスのサインが刻印されている。すっきりとしたミニマルなルックだ。これらのデザインはオリジナル製品から大きく逸脱することはない。

我々の考え
ブラウンは実は地味なコラボキングだ。オフホワイトやハイスノバイエティともコラボしたことがあり、ハイプの力はお手の物だ。しかし今回ポール・スミスと一緒に仕事をすることで、少し違ったデモを見ることができたのは確かだ。もう少し大人っぽく、もう少し洗練されていて、 “クリーニング屋から戻ってきたら、すぐにシャツをしまって、色やシーン別に掛けておく”ようだ。

ブラウンとのコラボレーションは、ディーター・ラムスのコアデザインの信条から大きく逸脱することはない。クールかつクリーンで、ミニマルなのだ。

ブラウンの腕時計に950ドル(日本円で約14万円)払うように説得するのは少し難しいかもしれないが、これは限定モデルであり、また自動巻きムーブメントとメンズウェアの生みの親であるポール・スミスによるお墨付きをもらっているのだ!

基本情報
ブランド: ブラウン(Braun)
モデル名: ポール・スミス + ブラウン BN0279(Paul Smith + Braun BN0279)

型番: BN0279SLPS(スモールセコンド)、BN0279GNPS(センターセコンド)
直径: 40mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤: グレー
夜光: あり
防水性能: 5気圧
ストラップ/ブレスレット: 22mm幅ブラックPUストラップ

ムーブメント情報
Braun x Paul Smith watch caseback
キャリバー: ETA 2895-2、ETA2892A2
機能: 時・分表示、スモールセコンド、日付表示(スモールセコンドモデル)/時・分表示、センターセコンド、日付表示(センターセコンドモデル)
直径: 25.6mm
パワーリザーブ: 約42時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 27(スモールセコンドモデル)、21(センターセコンドモデル)

価格 & 発売時期
価格: 950ドル(日本円で約14万円)
発売時期: 発売中
限定: あり、各リファレンス100本

アビエーションに深いつながりを持つブランドと作り上げた、トラベラーGMTウォッチ。

ロンジンから発表された比較的新しいコレクションだ。しかしその背景には、かねてより深いつながりを築いてきたアビエーションへの敬意と、ブランドがこの分野で築いてきた確かな実績がある。パイロットウォッチらしく視認性に優れた無骨なディテールと、ロンジンが創業当時より大事にしているというエレガンスを現代的な時計製造技術を用いて融合させたモダンなミリタリーウォッチだ。登場からまだ3年ながらリリースのテンポは速く、2021年にはチタン製ロンジン スピリット、2022年には42mm径のZulu Time、そして今年2023年にはZulu Timeの39mm径にフライバッククロノ(しかもそのチタンモデルまで!)と、僕たちの関心を誘うモデルが次々に登場している。

そして、その勢いに乗るかのようなタイミングで、ロンジン スピリット Zulu Time リミテッドエディション for HODINKEEを、12月5日(火)の深夜に全世界に向けて発表した。ロンジン スピリット Zulu Time 39mmをオールグレード5チタンで仕上げた、税込価格で60万円を切るハンサムなトラベルウォッチだ。

少し話は逸れるが、僕はあまり国外への渡航経験がなく、これまではGMT機能についてタキメーターやヘリウムエスケープバルブのように“自分ではおよそ活用しないが便利なもの”として分類していた。しかしパンデミックがようやく落ち着きを見せた今年、距離的にも精神的にも遠く感じていた海外が、再び僕たちの生活に戻って来つつある。2023年は時計業界でも、国内外問わず遠方に足を運ぶイベントが目に見えて増えた年だった。加えてここ最近続いているトレンドもあり、今年は(とにかく多かった)GMTウォッチのリリースに目を奪われ続けていたように思う。そんななか、リリースされたばかりのコラボウォッチが編集部に届いた。ケースを開けて手首に乗せた瞬間、僕の心は大きくざわついた。それから1週間ほど経つが、この時計とともにまだ見ぬスイスの地を行くイメージが頭の片隅にこびりついている。最初に手に取ったときに感じた高揚が何だったのか、確かめるべく再び箱から取り出してみた。

改めて、ロンジン スピリット Zulu Time リミテッドエディション for HODINKEEのサイズからチェックしていこう。ベースとなったのはロンジン スピリット Zulu Timeの39mm径モデルで、厚さは13.5mm、ラグトゥラグは46.8mmと、ジェームズがSSモデルの記事で述べているようにスポーツウォッチとしてあらゆる人が身につけやすいミドルサイズに仕上がっている。僕の手首周りは約17cmで、これは日本人男性の平均と一致するそうだが、下写真でご覧いただけるとおり大きすぎず、小さすぎもしないジャストなフィット感だ。手首の幅に対してラグの余りもない。

特筆すべきは、サイズに対しての圧倒的な軽さだ。39mm径のステンレススティール(以下SS)モデルの本体重量が99.3gであったのに対し、今作はグレード5チタンの採用によって約半分となる51gまで抑えている。ムーブメント自体に変化がないことを考えると、大変なダイエットだ。この写真を撮影した日は直前までロンジンのクロノグラフモデル(ストラップを除く重量は98.2g)をつけていたが、いざ今作を手首に乗せたときのギャップは大きかった。ブレスは従来モデル同様、21mmから16mmまで強くテーパーした品のあるスタイルだが(このブレスはジャケットを着るような日のスタイリングにもしっくりくる)、手首を大きく動かしたときもヘッドの重量に振り回される感覚はまったくなかった。

また、素材とともに仕上げにも言及しておきたい。SSと比較してチタンの質感は温かみがあると表現されることが多い。今回のコラボモデルにおいても、ベゼル正面やケースに見られるヘアライン部はチタンならではの柔らかな光を放っている。しかし一方で、ポリッシュ部はSSと見紛うほどの仕上げが施された。特に、ヘアラインとポリッシュが交互に施されたブレスのコントラストには目を引かれる。ブレスのサイドにもポリッシュがかけられており、ふと傾けて見たときに美しく光り輝く。

なお、もうご存じの人も多いと思うが、Zulu Timeは時針のみを1時間刻みで動かすことができるローカルジャンピングGMT機能と、回転ベゼルによる第3時間帯表示を備えた時計だ。前者は完全に針を停止させることなく現地時間に調整することができる便利な機能であり、“トラベラーGMT”と呼ばれることもある。同価格帯での競合は今でこそ増えているものの、かつてはGMT針単独稼働型のいわゆる“オフィスGMT”がこのレンジの主流だった。2018年、チューダーのブラックベイ GMTが開拓して以降発展してきたミドルプライスのGMT市場において、100年以上前からロンジンのようにGMTウォッチを展開してきた歴史あるブランドのトラベラーGMTウォッチが手に入るというのはありがたいことだ(1908年にオスマン帝国向けに世界初のデュアルタイムゾーン懐中時計を、1925年には角型腕時計“ズールータイム”をリリースしている)。

なお、ローカルジャンピングGMTについて、HODINKEEではフライヤー(Flyer)GMTと表記することがある。実際に飛行機に乗って異国を行き来するジェットセッターにとって非常に重宝される機能であることから、そう呼ばれている。彼らはときに大きな荷物を抱えて、トランジットを含めて片道1日、いや2日はかかるような旅に出かける。その道中、体に密着している時計は1gでも軽いほうがいいだろう。12時間を超えるようなフライトは新婚旅行でスペインを訪れたとき以来経験していないが、そのとき手首にあったダイバーズウォッチを到着時にひどく重たく感じたことを今でも覚えている。この日は撮影を含めて3時間ほど着用しただけだったが、そのあいだ手首の上でわずらわしさを感じることは一度もなかった。

今回、もっとも気に入ったのはダイヤルデザインだ。すでにZulu Timeを持っているなら手元で見比べて欲しいが、いくつかの要素が省略され、非常にすっきりとまとまっていることがわかると思う。例えば、“LONGINES”の文字下にあった両翼の砂時計のロゴ。ブランドの創業時から使用されている由緒と歴史のあるものであり、これがダイヤルにあるとどこかエレガントさと気品が漂う。だが、ヘリテージ アヴィゲーションシリーズや、一部のヘリテージ クラシックでは省略されていることが多い。僕が持っているアヴィゲーション ビッグアイも12時位置には“LONGINES”とそっけなくプリントされているだけなのだが、このほうが古きよき時代のパイロットウォッチといった趣が強まるように思える。また、今作ではロンジン ヘリテージコレクションに共通していた6時位置の5つ星も省略され、デイトは6時位置から3時に移動してインデックスに溶け込むようなカラーリングが施された。アンスラサイトの控えめなダイヤルはマットな質感のチタンベゼルと相性がよく、総じて現代的なスポーツウォッチに見られるギラつきや主張を抑えたクラシカルな顔立ちに仕上がっている。ミッドセンチュリー特有のさりげない美しさを目指したとローンチ時の記事にも書かれているが、確かにどんな手首にも自然に馴染む、トレンドに左右されない飽きのこないデザインだと思う。

リューズの砂時計ロゴはそのまま残されていて、シンプルなサイドビューのアクセントとして機能している。ソリッドケースバックで“ZULU TIME”の文字があった場所には“HODINKEE LIMITED EDITION”と刻印が施され、ロゴを挟んだ下部にはシリアルの表記もある。また、ブレスレットはインターチェンジャブルシステムを採用しており、工具を使わずに簡単に着脱が可能だ。