オメガ「第4世代」シーマスター プラネットオーシャン:インデプスレビュー

オメガ(Omega)の「第4世代」シーマスター プラネットオーシャン 600mが発表される数日前、私はその実物を目の当たりにした。変化の大きさに、思わず息をのんだほどである。
当時私は、これが「第4世代」の新型モデルだと知らされていなかった。そのため、もしかしてシーマスターの新シリーズ(サブシリーズ)かと勘違いするほど、そのデザインは従来モデルからの大転換であった。
本日、私は責任を持ってこう断言できる。オメガ「第4世代」シーマスター プラネットオーシャンは、ここ20年間の同社の歴史、ひいてはオメガ全体の歴史において、最も革新的かつ破壊的な新作であると。
これは私の個人的見解に留まらない。すでに海外の時計愛好家コミュニティでも、同様の評価が急速に広がり始めている。
主な変更点:これまでの常識を覆す
まず、第4世代モデルの最も衝撃的な変更点を挙げておこう。詳細は後述するが、この3点が大きなキモとなる。
全新設計のケース形状(大幅な薄型化)
デイト表示とヘリウムガス抜きバルブの廃止
ソリッドバック(非透過構造)の採用
ちなみに、価格は約61,900円(当時の為替レート換算)からと、ややアップしている。
設計哲学の転換:「一新」されたケース
今回の第4世代モデルは、過去の設計思想を完全にリセットした。
シーマスター プラネットオーシャンの前3世代(2005年の1代目、2011年の2代目、2016年の3代目)は、本質的に同じ外観設計を踏襲していた。世代交代の際は、主にムーブメントやベゼル材質の改良が中心だった。
しかし、今回の第4世代はそれまでのケースデザインを完全に捨て去った。
エッジの利いた造形:曲線的だった旧モデルに対し、新ケースは大量の直線・面取り・切り込みを特徴としている。
1960-70年代の復古調:ケース両端に大きな断面積を持ち、かつてのヴィンテージスポーツウォッチのような「横張り」の存在感を演出。
一体化されたラグ:従来の「ねじれたラグ(ラグがねじれている)」から脱却。ケースとブレスレットの一体化が大幅に強化され、装着時の一体感が増している。
強調されたリューズガード:リューズプロテクターがより明確に主張されるデザインに。
薄型化の秘密:技術の粋を結集
これまでのプラネットオーシャンは、厚み(16mm前後)が唯一の難点だと指摘されていた。しかし、第4世代はその厚みを劇的に低減した。
サイズ比較:第4世代(42mm径、厚さ13.79mm) vs 第3世代(43mm径、厚さ16.1mm)。
視覚的変化:これほどまでに「薄く」なったプラネットオーシャンを見たとき、私は正直驚いた。これはもはや、従来の「海洋宇宙」のイメージとは一線を画す。
この薄型化を実現するために、オメガは以下のような大胆な技術選択をしている。
フラットな風防:過去の隆起した風防ではなく、平面のサファイアクリスタルを採用。
チタン製裏蓋:そして何より驚くべきは、裏蓋の非透過化(ソリッドバック)である。厚みを抑えるため、そして重量を軽くするため、チタン金属の裏蓋が採用された。
Ultra Deep 技術の流用:実は、ケース内部にチタン製の耐圧リングを内蔵している。これにより、600m防水を維持しつつ、耐圧性能が向上。その結果、ヘリウムバルブが不要になったのである(これは実質的に、6000m防水モデル「Ultra Deep」の技術を、通常のダイバーに降りてきたとも解釈できる)。
文字盤とブレスレット:ミニマルかつレトロ
ケースほどの変化はないが、文字盤周りにも重要な変更点がある。
デイト表示の廃止:今回、最も議論を呼ぶかもしれないのがコレだろう。過去数年、オメガは「日付無し」をトレンドとしてきた(海馬300無历、新型鉄霸など)。今回のモデルも、視覚的なバランスとレトロな趣を重視し、デイト表示を完全に廃止した。
ベゼルの変遷:セラミックベゼルは相変わらずの高品質。しかし、旧モデルでお馴染みの「4分の1橙色ベゼル」は新モデルから消え、定番の黒、青、そしてオレンジの3本針のみとなる。
針とインデックス:象徴的な「広剣針(Broad Arrow)」は健在。ただし、3・6・9・12時のアラビア数字フォントは僅かに変更され、特に6と9の数字が「開口部」を持つデザインに刷新された。
ブレスレット:さらなる進化
オメガのブレスレットは近年、質感の面で大きく進化している。
第4世代モデルは、全新設計のブレスレットを装備。
滑らかな接続:ケースとの接続部が一体化され、手首になじみやすい形状に。
立体的な造形:3連リンク構造を維持しつつ、外側リンクはヘアライン仕上げ、中央はポリッシュ仕上げという、より緻密な仕上げが施されている。
フォールドバックル:留め金具もより細長く、中央をポリッシュ、周囲をヘアラインという立体感のあるデザインに変更。もちろん、マイクロアジャスト機構を内蔵している。
ムーブメント:変わらぬ強さ
多くの仕様が変わっても、唯一変わらなかったのが中身の強さだ。
Cal.8912:引き続きオメガ自社製の8900シリーズ自動巻きムーブメント(今回は非日付版8912)を搭載。
スペック:25,200振動、動力貯蔵60時間、シリコン製遊丝(無卡度)、そして15,000ガウスの耐磁性能(至臻天文台認定)。
見えない美しさ:裏蓋は非透過のため見えないが、アラビア風のコート・ド・ジュネーヴ(日內瓦波紋)装飾が施された美しいムーブメントを搭載している。
総括:価格と価値
第4世代モデルの価格(約61,900円)は、前モデル(約54,500円)よりも確かに上昇している。
しかし、その価格差には理由がある。
チタン製裏蓋、ケース内部のチタン耐圧リング、Ultra Deep由来の防水技術——これらは一見して見えない「隠れたアップグレード」であり、製造コストが確実に上昇している。
まとめ
シーマスター 300mとシーマスター プラネットオーシャン 600mは、オメガのダイバーズウォッチにおける二本柱だ。
今回の第4世代は、「薄く」「コンパクト」「ミニマル」という新たな価値を提案してきた。
これまで「プラネットオーシャンは大きすぎる、厚すぎる」と敬遠していた層にとって、今回のモデルはまさに「装着しやすい600m防水ラグジュアリーダイバー」として、最高の選択肢となるだろう。