シチズン プロマスターより、ブランド初となる機械式GMTウォッチが登場。

プロマスターらしい頑強なパッケージにタフネスあふれるスペックを搭載した、パフォーマンスに優れるFlyer GMTウォッチが登場した。

シチズン プロマスターは1989年の登場以来、陸・海・空の分野で活躍するプロフェッショナルたちに向け、高い耐久性と卓越した機能性を有するアクティブな時計を作り続けてきたブランドだ。ダイヤルやリューズに施された矢印型のアイコンはより高い空の上、より深い海の底への挑戦を示すものであり、その意志は昨今のプロダクトに至るまで機能やスペックの面で徹底して反映されている。そんなシチズン プロマスターは2024年、生誕35周年を迎えた。そして記念すべき年の始まりを祝し、航空分野にフォーカスした“SKY”カテゴリに2本のニューモデルが投入される。それが、1月25日(木)に発売を控えたブランド初の機械式GMTウォッチ、メカニカル GMTだ。

プロパイロットの使用を視野に入れたSKYシリーズからは、これまでもワールドタイム機能を搭載したモデルが数多く輩出されてきた。だがそのなかに、4本目の針、すなわちGMT針をゼンマイの力で動かす古典的なGMTウォッチは見当たらず、例えば1994年にリリースされたナビホーク(SKYシリーズの記念すべき1本目だ)からしてすでに液晶とサブダイヤルを併用したデジタル制御のワールドタイマーを採用していた。あらかじめモジュールに登録されている都市の時刻をリューズとボタン操作で呼び出すことで、簡単に第二時間帯やUTC(協定世界時)を表示できる仕様だ。その後、2000年台には電波受信方式による調整を取り入れたモデルやGPS衛星電波時計搭載モデルなども続いたが、SKYシリーズとしては基本的に電子制御によるワールドタイム表示の形を取ってきた。

1994年のナビホーク。アナログ部とデジタル部の完全同期を図った多モーターコンビネーションウオッチ。UTC時刻のほか、アナログ部時刻、デジタル部時刻の3時刻同時表示が可能だった。

2016年のエコ・ドライブGPS衛星電波時計。GPS衛星電波時計、F900を搭載したモデルとして登場した。

まあこれは、プロマスターが高精度で高機能なプロフェッショナルツールにこだわってきたことの表れかもしれない。しかしブランド35周年にして、プロマスターは初めて機械式ムーブメントによって駆動する“Flyer”GMTウォッチを発表した。44.5mm径のソリッドなステンレススティール(SS)製ケースにグレーのメッキを施した固定式の24時間表示ベゼルが装着されていて、GMT針がこのベゼルを指し示すことで第二時間帯を知らせてくれる極めてアナログな時計だ。

フランジ部分は既存のSKYシリーズ同様に回転計算尺となっており、8時位置のリューズで操作することが可能だ。また、ベゼルの丸みを帯びた形状は航空機の機体をイメージしており、バンドのエンドピースに入れられた斜めのカットは翼断面に着想を得て空気の流れを表現したものだという。“プロマスター初の機械式GMT”という新たな取り組みを示す冠がついてはいるが、各ディテールはこの時計があくまでプロマスターのSKYシリーズに属するモデルであることを主張しているようにも見える。なお、ヘアライン仕上げを主体としたケースには要所にポリッシュによるミラー仕上げが施されており、全体のルックスにメリハリと高級感を生み出している。

防水性能は20気圧。搭載しているムーブメントはCal.9054で、最長約50時間のパワーリザーブと第2種耐磁を備えている。なお、今回のリリースでは、ベゼルのみにメッキを施したSSモデル Ref.NB6046-59Eと、ブレスを含めて全体にメッキを施したNB6045-51Hの2型が用意された。価格は前者が13万2000円(税込)、後者が13万7500円(税込)となっている。

ファースト・インプレッション
シチズンは同社のなかでも特に機械式時計に注力するブランドであるシリーズエイトから、2023年にFlyer GMT機能を搭載する880 メカニカルを22万円(税込)という価格でリリースした。2017年のチューダー ブラックベイ GMTの登場以来続いているFlyer GMT民主化の流れに、シチズンも合流した形だ(880 メカニカルについては、僕が去年、ジェームズが今年Hands-On記事を書いている。チェックして欲しい)。そして今回発売されるシチズン プロマスターのメカニカル GMTは、プロマスター SKYシリーズの正統進化というよりも、880 メカニカルに搭載されていたCal.9054を用いながら無骨なパイロットウォッチのパッケージで再構築したものだと僕は捉えている。

2003年のプロマスター エコ・ドライブ電波時計。

強いて言えば、メカニカル GMTは2003年にリリースされたプロマスター エコ・ドライブ電波時計を思い起こさせるデザインとなっている。針とインデックスの組み合わせにインナーベゼルの回転計算尺、リューズのローレット加工や特徴的なカッティングが入ったエンドピースなど、共通点は多い。だが、シチズンからのリリースには該当モデルの復刻やオマージュを匂わせる内容は一切見受けられない。直近のSKYシリーズを見てみても、デジアナ表示に43都市のワールドタイムを搭載し、それらをエコ・ドライブ光発電によって駆動させるハイスペックなモデルが目立っている。メカニカル GMTのデザインは、昨今の流れからするといささか唐突に見える。今作においてはプロマスター SKYシリーズのデザイン文脈を踏襲し、パイロットウォッチとしての“らしさ”を追求した結果、2003年のモデルに近いデザインに帰着したのではないかと考えている。

どちらかというとメカニカル GMTは、880 メカニカルに続く機械式GMTウォッチカテゴリの拡充に投じた一石としての意味合いが強いように思う。ムーブメントはそのままに、デザインの方向性や価格帯までも調整し、異なる層にアプローチをかけたというわけだ。880 メカニカルで特徴的だった情緒的な文字盤のあしらい(東京の夜景を表現したロマンチックなものだった)やツートンベゼルはその面影もなく、カラーと装飾を抑えたマッシブなデザインに終始している。

個人的には、この選択肢は非常に魅力的だと感じている。シチズンのFlyer GMTに価値を見出しつつも、880 メカニカルのコンセプチュアルなルックスがマッチしなかった人もいたのではないかと思っていた。(わかりやすいツールウォッチが好き、という僕の好みは置いておいても)シンプルなダイヤルデザインは、万人に受け入れられる受け皿として確実だ。また、税込で14万円を切る価格帯も注目すべきだろう。もちろんシリーズエイトは金属の表面仕上げに定評があるブランドではあるし、メカニカル GMTは固定式ベゼルのために第三時間帯まで表示できないといったデメリットもあるが、これまでFlyer GMTのベンチマークにされがちであったミドーのオーシャンスター GMTを大きく下回るプライスだ。GMTウォッチに求めるスペックが明確なら、メカニカル GMTは有力な候補となる。

ちなみに、個人的にはブレスまでブラックメッキで統一したRef.NB6045-51Hを推したい。リリースの画像では、サンレイダイヤルは控えめなグレーに見えるし、ダイヤル上の“GMT”表記やGMT針も全体に馴染むようモノトーンに抑えられている。まだGMT針の視認性にありがたみをおぼえるくらい旅をしていないからかもしれないが、視認性を重視する既存のSKYシリーズには見られないこのアプローチはかえって新鮮に映った。実際の色味がどうか、というところは実機で確認をしてみたい。

懸念すべきポイントがないわけではない。SKYシリーズとしては当たり前の寸法だが、直径44.5mmをどう捉えるかはあると思う。参考までに、ムーブメントを同じくする880 メカニカルは両回転式ベゼルを備えて直径41mmに収めていた(もちろん、880 メカニカルは10気圧防水でメカニカル GMTは20気圧防水と、ケースサイズはスペックにも反映されているのだが)。比較的小径が求められる昨今において、往年のパネライに迫るようなサイズ感は手首の上でどのように感じられるのだろう。写真を見た限りだがラグは短めに取られているし、厚みも12.7mmと少し控えめだ。より幅広い層に受け入れられる14万円以下のFlyer GMTにおいて、このサイズがどう影響するかは、タイミングがあれば追ってお伝えしたい。

基本情報
ブランド: シチズン プロマスター(CITIZEN PROMASTER)
モデル名: メカニカル GMT
型番:NB6046-59E、NB6045-51H

直径: 44.5mm
厚さ: 12.7mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤色: ブラック
インデックス: アプライド
夜光: 時分針、GMT針、インデックス
防水性能: 20気圧
ストラップ/ブレスレット: ステンレススティール

ケースバックには空のプロフェッショナルに向けて作られたことを主張する、パイロット用ヘルメットのイラストを刻印。

ムーブメント情報
キャリバー: 9054
機能: 時・分・秒表示、3時位置にデイト表示、GMT針による第二時間帯表示
パワーリザーブ: 約50時間(最大巻上げ時)
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 24

価格 & 発売時期
価格: 税込13万2000円(NB6046-59E)、税込13万7500円(NB6045-51H)

ジン レボリューションとコラボした暗闇で輝く新しいパイロットクロノグラフ。

レボリューションはジンとタッグを組み、イエローの夜光、スティールケース、クラシカルなベゼルなど、古いパイロットクロノグラフを比較的忠実に再現したクールな“ダークスター”を発表した。そして今回、両者は新しい(名前にやや矛盾があるかもしれない)“ブライトスター”をリリースした。ダークスターの製造量の倍にあたる300本が生産され、3600ドル(日本での入荷と価格未定)で入手可能なブライトスターには、数多くの魅力が詰まっている。

まず最初に、この新しい時計はよりモノトーンカラーでまとめ、43mmのSSケースはジン独自のテギメントテクノロジーで仕上げている。テギメントとは表面硬化の一種で、硬度(および耐傷性能)を標準的なSSの5倍にまで高めたものだ。テギメント加工されたこのSSはPVDブラックでコーティングされている。ほとんどの場合、SSに圧が加わるとひび割れや剥離、剥がれが生じることが多いため、(実用的にも審美的にも)特に優れた効果を発揮する。ベゼル、プッシャー、およびリューズも同様の加工が施されている。

今回の新作は両方向回転ベゼル、30分積算計、鮮明で読みやすい針、スーパールミノバインデックスを備えたパイロット用クロノグラフ(セリタ製SW510を搭載)だ。ダイヤルには(レボリューションのブランド名にふさわしい)明るく輝く星があしらわれており、サファイア風防を使用。ブンドストラップで提供されるほか、追加でNATOストラップも付属する。

この新しいジン 155S ブライトスターをひそかに見る機会を得たのだが、私がブラックケースの時計にどれほど心を奪われているか知っている人なら驚くことではないが、私の目を引いたことは確かだ。

Sinn x Revolution Bright Star
数人が時計を手に取るなか、新たにテギメント加工されたケースと、シリーズ史上初のサファイア、また完全にブラックアウトされた初の155モデルを評価していたのは私だけではないようだった。レボリューションはコーティングに力を入れているようで、最近リリースされたウニマティックとのモデルも注目されているようだった(そちらはもっと派手なブルーセラミックだが)。直径43mmと、確かに大ぶりだが、100mの防水性と大きくて読みやすいダイヤルを備えているため、目的に合わせてつくられたツールとして、空から海への移行がうまくいくはずだ(ただし、あまり早く移行する必要はない)。

基本情報
ブランド: ジン(Sinn)
モデル名: 155S レボリューションII(155 S Revolution II)

直径: 43mm
厚さ: 推定15.15mm(過去のリリースに基づく)
ケース素材: ブラックハードコーティングを施したステンレススティール(テギメント加工)
文字盤: ブラック
インデックス: アラビアインデックス、ミニッツトラック、両方向回転パイロットベゼル
夜光: あり、スーパールミノバ
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: ブンドストラップ(NATOストラップ付属)

Revolution Sinn Bright Star
ムーブメント情報
キャリバー: セリタ製SW510
機能: 時・分・スモールセコンド、クロノグラフ(30分積算計)
パワーリザーブ: 約56時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 27
追加情報: 高い耐磁性能

価格 & 発売時期
価格: 3600ドル(日本での価格未定)
発売時期: 発売中(日本への入荷未定)
限定: あり、世界限定300本

多様な時計を生み出すパルミジャーニ・フルリエらしい答えを出した。

パルミジャーニ・フルリエから、トンダ PF マイクロローター ゴールデン・シエナが登場。

2021年9月の誕生以来、控えめでピュアなミニマルスタイルを追求し続けるトンダ PFコレクション。なかでもトンダ PF マイクロローターは、特にパルミジャーニ・フルリエの大きな特徴であるエレガンスと奥ゆかしさの象徴、“不必要なものすべてを取り除き、本質のみを生かす”というブランドフィロソフィーを体現するモデルとして、時計をよく知る愛好家を中心に高く評価されてきた。そんなトンダ PF マイクロローターに魅力的な新作が加わった。

2024年の新作として発表されたのは、トンダ PF マイクロローターのノーデイトモデルだ。もともとミニマルなデザインのモデルではあるが、日付窓をダイヤルから取り去ることで、より一層表現の純度が増し、繊細なカラーリングと装飾が施されたダイヤルの存在が強調されている。この新作の発表に際し、パルミジャーニ・フルリエCEO、グイド・テレーニ氏は次のようなコメントを寄せた。

「新しくトンダ PF マイクロローターを製作するにあたり、私たちは“至上の純粋主義者”へ向けて、明瞭さを体現するものを届けようと努めました。奥ゆかしさとタイムレスな美しさに対するメゾンのビジョンが、すべての要素に反映されています。複雑な読み取りを省いたミニマルデザインと、ゴールデン・シエナのダイヤルカラーのニュアンスまで、すべてのディテールは美観的な純粋さにこだわって導かれています」

日付表示がないところも本作の特徴ではあるが、気品と穏やかな雰囲気を併せ持つダイヤルのゴールデン・シエナカラーも魅力のひとつだ。シエナとは、イタリア・トスカーナ州にあるシエナの町のことであるが、同時にかつて存在したシエナ共和国の採掘場で採取され、人類が最も古くから用いていたという土を原料とする天然顔料の1種も指している。パルミジャーニ・フルリエでは独自性を追求し、自然の彩りを表現するダイヤルとして、まさにゴールドのように煌びやかでありながら落ち着いたニュアンスのカラーリングで表現した。

そんなダイヤルカラーの魅力をさらに強調するのが、ブランドのシグネチャーモチーフであるバーリーコーン(麦の穂)ギヨシェだ。ブランドの基準に則り、ダイヤルには精巧なギヨシェが手彫りで施されているが、バーリーコーンの極小パターンが繊細な質感を与え、ダイヤル全面の広い面積にギヨシェが刻まれているため、針の存在が引き立っている。必要最低限な時・分表示のみを残し、パルミジャーニ・フルリエらしい視認性の高いクリアなダイヤルに仕上げられた。

そして搭載するのは、厚さ3.07mmのCal.PF703である。基本的には既存のトンダ PF マイクロローターに採用されているのと同じムーブメントで、マイクロローター式の自動巻き機構を備えており、地板にはペルラージュ、輪列を押さえるブリッジにはコート・ド・ジュネーブ、そしてプラチナ製ローターにもバーリーコーン装飾が施される。こうした装飾のほとんどは手作業で行われているといい、ダイヤルに引けを取らないほど丁寧に仕上げられている。

価格は既存のデイト付きSSモデルと同じ370万7000円(税込)で、発売は2024年初夏を予定している。なお、それほど数多く生産される時計ではないが、限定モデルではなく通常のコレクションとして展開される。

ファースト・インプレッション
冒頭でも触れたとおり、控えめでピュアなミニマルスタイルがトンダ PFコレクションの真髄と言える。であれば、“トンダ PF マイクロローターに日付は不要ではないか?”ということは、コレクションのローンチ当初から議論がされていた。時計好きのなかには日付不要派が多いことに加え、特にパルミジャーニ・フルリエの場合、そのデザインやスタイルはどちらかと言えばドレッシーな立ち位置にある。一方で、時計業界では圧倒的に日付表示ありがスタンダードだ。そうしたこともあり、日付は必要か不要かということは、ブランドのなかでも大きな関心事となっていたようだ。

先日公開したグイド・テレーニ氏のインタビューの際に、実はこの日付の有無について質問をしていた。氏によれば、最初のモデルに日付を付けたのは、日付がないとダイヤルの表情がのっぺりし過ぎるのではないかということで付ける判断に至ったという。もちろん日付表示を入れるにあたっては、12時側のPFエンブレムの対角線上にレイアウトしてバランスを取り、カレンダーディスクもダイヤルカラーに合わせるなど、繊細な配慮がなされた。

ただし、トンダ PFコレクションにおいて日付表示がないモデルは初めてというわけではない。過去にローンチしたトンダ PF GMT ラトラパンテやミニッツ ラトラパンテ、そして36mmモデルなどでは日付表示は省略されている。こうした既存のモデルでは日付表示がなくとも市場で好評だったこともあり、今回のゴールデン・シエナではユーザーの選択の幅を広げるためにノンデイトとしたそうだ。

デイトの有無以外の仕様は既存モデルも新作も変わらない。どちらもケースは直径40mmに対して、厚さ7.8mm、ムーブメントも直径 30.6mmに対して、厚さ3.07mmとまったく同じだ。40mmのノンデイトモデルはまだ本作のみだが、デイトの有無で選べるようになったのだ。

筆者はグイド氏の“ユーザーの選択の幅を広げるため”というコメントに、とても合点がいった。パルジャーニ・フルリエにおける最も大切なコアバリューについてグイド氏はインタビューのなかで、周囲にひけらかすのではなく、自身が満足を得ることを大切にする“プライベートラグジュアリー”が非常に大事だと答えていた。生産性やあまねく誰かのためではなく、ユーザーの満足を高めるために豊富な選択肢を用意する。まさにブランドが掲げるコアバリューを体現するような新作ではないだろうか。

日付は必要か不要か。パルジャーニ・フルリエはこの果てしない論争に、是か非かではなく、ユーザーの求めに応じてどちらも提供するという、最も理想的なカタチで決着を付けた。

基本情報
ブランド: パルミジャーニ・フルリエ(Parmigiani Fleurier)
モデル名: トンダ PF マイクロローター ゴールデン・シエナ(Tonda PF Micro-Rotor Golden Siena)
型番: PFC914-1020021-100182

直径: 40mm
厚さ: 7.8mm
ケース素材: ステンレススティール、プラチナ950製ローレット加工ベゼル
文字盤色: ゴールデン・シエナ(バーリーコーン模様の手彫りギヨシェ)
インデックス: ハンドアプライド、ロジウム加工
夜光: なし
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: ポリッシュ/サテン仕上げのSS製ブレスレット、フォールディングクラスプ

ムーブメント情報
キャリバー: PF703
機能: 時・分表示
直径: 30.6mm
厚さ: 3.07mm
パワーリザーブ: 48時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万1600振動/時
石数: 29
クロノメーター認定: なし
追加情報: プラチナ950製マイクロローター、バーリーコーン(麦の穂)模様のギヨシェ、コート・ド・ジュネーブ、ペルラージュ装飾

価格 & 発売時期
価格: 370万7000円(税込)

これまでにも限定モデルとしてキングセイコーの名が登場することはあったが、

しかし2022年のそれは待ち望まれたブランドとしての復活であり、キングセイコーの新たな夜明けとなる意義深い出来事となった。

初代キングセイコーが登場した60年代初頭は、東京が大きく様変わりしようという時期でもあった。街の風景ばかりでなく、生活習慣や社会のスピード感が変わっていくなか、新たな都市のライフスタイルにふさわしいモダンな時計が求められた。そんななか、デイリーユースにふさわしい実用性・デザイン・価格をバランスよく提供し当時の人々に受け入れられたのがキングセイコーだった。ブランド復活に当たり、かつてのキングセイコーが備えたものづくりの哲学も継承。新しいキングセイコーの開発のベースにはブランドらしさが最も強く打ち出されたモデルとして、1965年に登場した2代目のKSKが選ばれた。

KSKは平面で構成されたシンプルで潔いラウンドケースに、太い針とインデックス、ラグが力強さを伝える一方、12時位置には優美なライターカットのインデックスをさり気なく配し、個性をアピールした。こうしたオリジナルのモチーフを継承しつつ最新技術を盛り込み、現代的な美意識でその魅力に磨きをかけた。新設計のブレスレットはシャープな質感にも関わらずしなやかな動きで肌当たりも柔らかく、長時間つけても心地よい装着感を重視。かくして日常を豊かに彩る現代のエレガンスウォッチとしてキングセイコーは再構築されたのである。デビュー翌年には新たに日付表示を備えたシリーズも登場。さらに新たなダイヤルのカラーバリエーションや装飾スタイルを加えてきた。

そして2024年。キングセイコーの名が広まるなか、新たなコレクションとして導入された新作がKS1969である。

モチーフとなったのは、その名が示すように1969年に登場しブランドの歴史に名を残す45KCM。KCMとはキングセイコー カレンダー クロノメーターを意味し、10振動の45系手巻きムーブメントを搭載したことで時計愛好家から知られている。その高精度にふさわしい新たなデザインとして採用されたのが、それまで主流だった2代目のKSKのような多面構成とは異なる優美な曲線からなるよりドレッシーなケースであり、それはキングセイコーにおける第3の転換点に位置づけられるようなブランドを代表するスタイルになったのである。

丸みを帯びた優美な造形を現代によみがらせ、よりドレッシーに昇華

キングセイコーに加わったKS1969は、ラグが一体化した丸みを帯びたケースが特徴だ。これは60年代後半に登場し大きなデザイントレンドになった、いわゆる樽型のケースラインを思わせる。ともすればそのフォルムに目を奪われがちだが、キングセイコーにおいては薄さの追求こそが肝要と商品企画担当者の大宅宏季氏は言う。

「大前提として、キングセイコーは昔のモデルを復刻させるのではなく、かつてのキングセイコーから普遍的なデザインを見いだし、それを現代の技術でアップデートさせていくということがコンセプトとしてあります。その上で今回はよりドレッシーなスタイルに方向を定め、現代的な要素として自動巻きムーブメントを搭載しながら薄型で手首になじむデザインをテーマとしました。そこで選ばれたのが1969年の45KCMであり、キングセイコーの新たな表現として生まれたのがKS1969ということです」

デザイナーの松本卓也氏は45KCMのディテールについてこう説明する。

「こうした樽型のフォルムは、これまでにもかつてのキングセイコーなど60年代のほかのモデルでも採用していました。ただそのなかで当時の45KCMが目指したのは薄さだったのではないかと思います。それは横から見たときにも一目瞭然です。ケースのラインはラグの先端に向かって下げて細く絞っていくとともに、ケース上面の曲面曲率を変えることで視覚的に薄さを演出し手首にフィットする感覚も巧みにデザインしています」

一般的な造形手法では側面の厚みが残ってしまい、ただ型抜きしたように見えるが、有機的な曲面で構成し優美な薄さを表現した。

「どうしたら美しいプロポーションを持った時計が作れるか。数多ある樽型ラウンドケースで、キングセイコーならではの理想の造形を当時のデザイナーが追求していたことが伝わります」と松本氏。大宅氏がこれに続ける。

「2代目と呼ばれるKSK以降、搭載ムーブメントの多様化とともにデザインの幅も広がりました。そのなかで45KCMはそれまでの直線基調から曲線的な新しいデザインを取り入れ、型にはまらないクリエーションをした点で、以降のモデル展開に当時影響を与えたと言えます。だからこそ新しいキングセイコーの次なるモデルにふさわしいと考えたのです」

新作のKS1969では1969年の45KCMの特徴を継承しつつさらに磨きをかける一方、新しいキングセイコーならではの現代的なデザインを取り入れている。松本氏はこう説明する。

「12時のインデックスは、デザインコードとして今後ブランドのひとつのアイコンになると考えました。既存のコレクションではオリジナルにも見られたライターカットを再現しましたが、KS1969では新たに“矢羽根”をイメージしたV字形の立体的な模様を入れ、的に向かってまっすぐ突き進んでいく矢のように未来に向かって前進する躍動感を表現しました。オリジナルの時・分針はケースに合わせた繊細なシェイプの中央にラインの入る峰カットだったのに対し、KS1969では3面カットにしました。多面になることで光を受けて視認性が向上し、美観にもつながっています」

新設計した多列ブレスレットもコレクションに新たな魅力を添えている。駒の長さを短くすることで滑らかに動き、表面にカーブをつけてドレッシー感を醸し出す。これも60年代のキングセイコーのブレスレットからヒントを得たと言う。ちなみに販売されているオプションストラップとは互換性があるので、好みによって換装もできる。

特筆すべきはダイヤルだ。レギュラーでシルバー、パープル、グリーンを揃えるが、一般的なブラックやネイビーなどのカラーは今のところラインナップされていない。

「キングセイコー発祥の東京から着想を得たカラーコンセプトに基づき、シルバーは東京のビル群やモダンな風景を表現し、グリーンでは世界の都市のなかでも公園が多い東京の緑をイメージし、葉が重なり合う様を表現するためにグラデーションを施しています。まったくの新色となるパープル(江戸紫)は、江戸時代に京都の京紫に対して江戸ならではの紫を染め物で表現したことから生まれ、歌舞伎でも親しまれました。そうした由来から東京都のイメージカラーにも使われており、東京らしい色ということで選んでいます」と大宅氏。そしてそれぞれのカラーの美しさを引き出すのが仕上げと松本氏は説明する。

1日限りの時計イベントを楽しんだ。

インターセクトウォッチショーは2021年に誕生した。ノダス ウォッチがブルワリーで主催したシンプルな時計ミートアップであり、パンデミックの影響で45人に制限された参加者を迎え、そしていくつかの友好的なブランドが展示のために時計を提供した。

先週ダウンタウンのロングビーチで開催されたインターセクト ロサンゼルス 2024には600人以上の参加者が集い、私はそのうちのひとりだった。インターセクトはもともとロサンゼルスから始まり、オースティンやアトランタでもイベントが開催され、さらに多くの開催地が計画されているが、今回のイベントはこれまでで最大の規模であった。20以上のブランドが参加し、フォーメックス、ノダス、ジャックメイソンの3ブランドが共同でインターセクトの組織と運営を行った。

インターセクトは規模と野心を拡大しながらも、当初のブルワリーで行われていたミートアップの雰囲気をほぼ維持している。この日のショーは、一般的に社会通念上許容される時間より少なくとも1時間前には、コールドコーヒーではなくたっぷり注がれたビールが提供された。フードトラックからは30個のタコス・アル・パストールが注文され、真夜中を過ぎてもロングビーチに来ることができる人たちのために配られた。

少なくとも数回は、地元のコレクターとともにソファに座り、彼らが所有するヴィンテージやマイクロブランドウォッチなどが詰まったウォッチロールを広げる場面があった。これがインターセクトを一般的な“トレードショー”とはひと味違ったものにしている。依然として時計は販売されていたし、実際にいくつかは売れたが、どちらかというと気軽な集まりといった雰囲気である。

私は1日中カメラを構え、ブランドの展示はもちろん南カリフォルニア中から集まった時計愛好家たちの手首に輝く時計まで、あらゆるものを見て回った。会場であるブルワリーの2階にある風通しのいい空間では、クラフトビールや驚くほど美味しいニューヨークスタイルのピザが提供されるなど、リラックスした雰囲気である。賑わってはいたものの、しばらくぶらぶらしてから自身の時計について話をしたい人のためのスペースも用意されていた。ショー自体で利益を上げるのではなく、参加ブランドが運営費を分担しているため少しゆったりとしたムードであり、ショーを“価値あるもの”にしようとするプレッシャーも少ない。

次回のインターセクトショーは11月にテキサス州オースティンで開催される予定だ。詳細は彼らのサイトで確認してもらうとして、ここではロサンゼルス版の写真をお楽しみいただきたい。

ノダス×レイブンによるトレイルトレッカーは、参加ブランドから発表された今年の新作のなかで最もお気に入りの1本。ジェームズ(・ステイシー)もこちらのレビューで気に入っているようだ。ノダスとレイブンの両ブランドもインターセクトL.A.に参加していたようだ。

ノダスの創業者であり、インターセクトウォッチショーの発案者でもあるウェスリー・クウォック(Wesley Kwok)氏。

彼はノダスのセクターGMTを着用。

クリストファー・ウォード ベル カントは、このようなショーでは常に目立つ存在である。そのチャイムを聞くために人々が列をつくり、その音色はいつも驚きとよろこびをもたらす。

スタンダード H(Standard H)のウェスリー・スミス(Wesley Smith)氏は、ストラップ・ハビットとのコラボレーションによる新しいストラップをIWC トリビュート・トゥ・3705にセットし、身につけていた。

ヴェロ オープンウォーター 38

マットのスティールケースとセラコートベゼルが、楽しくも控えめな雰囲気を醸し出している。

ヤヌス・モーターサイクルズとのコラボレーションによるロリエ ランブラー(8月発売予定)。36mmのヘサライト風防、ミヨタ製ムーブメントを搭載し、価格は500ドル(日本円で約7万7000円)だ。ヴィンテージの雰囲気がトラブルなしで味わえる。

クリストファー・ウォード スーパーコンプレッサーの楽しいアレンジ。そう、これはダイバーが潜水する際、水圧を利用して裏蓋をガスケット(パッキン)に押し付けることで防水性を高める、本物のスーパーコンプレッサーケースである。

ミドーの“レインボーダイバー”(のちほど登場)をほうふつとさせるデザイン。

フォーメックス フィールド オートマティック。サンドブラスト仕上げのチタン製だ。

ワンちゃんも大歓迎。

アスター&バンクスの新しいシーレンジャー M2をチェックしている。こちらはふたつのリューズとインナー回転ベゼルを備えている。

最高のGMTマスター 6542。

この素晴らしいコレクターは、“Watches In The Wild: アメリカ時計大紀行 エピソード3”にて、別の時計を着用している様子を見ることができる。

ジャックメイソン ストラトオータイマー GMT

シールズの“シーストーム”モデル…これは素晴らしいスキンダイバーウォッチだが、私はブランドの次なるデザインに期待している。

先日リリースされたノダス キャニオン “スターリーナイト”は、マット・ファーラー(Matt Farah)氏とのコラボレーションにより誕生した。ブルーの文字盤は夜空からインスピレーションを得ており、ゴールドアクセントのパーツが少しドレスアップした雰囲気を加えている。

文字盤が主役だが、私はノダスがキャニオン(およびほかのいくつかのモデル)で採用しているリューズも気に入っている。しかも、このリューズはねじ込み式だ。

Mk IIは、おなじみのヴィンテージやミリタリークラシックに現代的なアレンジを加えたモデルだ。

カルティエのサントスを身につけながらクリストファー・ウォードの商品を眺めるのには、何かとても魅力的なものがあると思う。

ヴィンテージのロレックス デイトジャスト 1601、グレーの“ゴースト”ダイヤル。

新しいファーラー モノプッシャー GMT。

フォーメックス エッセンス“スペースゴールド”。フォーメックスとその姉妹会社であるデメックスは常に革新を続けており、その新しいゴールドメテオライトダイヤルはその一例である。

フォーメックスはメテオライトをカッティングしたあと、それを18Kローズゴールドでメッキする方法を考案した(メテオライトは鉄分を多く含むため電気メッキが可能なのだ)。

ゴールドといえばヴィンテージのゴールドホイヤー カマロだろう。

シェイ(Shay)氏がオリンピックの精神を感じさせるオメガ シーマスターを眺めている。

ジギーとノダス。

マリン インスツルメンツ スキンダイバー。ポーラーダイヤル、ブラックPVDケース、そして気の利いたベゼルインサートが、洗練された美しいダイバーズウォッチを生み出している。