ジェイ・Z(Jay-Z)は、現代のポップカルチャーの頂点に立つ存在である。

彼はアーティスト、プロデューサー、起業家として多くのキャリアを積み上げてきた。もはや音楽を制作したりスーパーボウルのハーフタイムショーをプロデュースしたりする必要がないのだが、彼はとにかくなんでもやっているのだ。要は彼の一挙手一投足すべてが、波紋を巻き起こす可能性があるということである。それは時計コレクトも含めてだ。

 彼は常に、静かになにかを披露する力を持っていることを理解している。彼は1990年代後半にプラチナの時計を身につけていて、現在はディープな時計好きが好むマニア向けアイテムにまで手を広げている。彼の好みは現在のポップカルチャーを反映するというよりも、彼自身のハイエンドな嗜好を象徴するものとなっている。ファンにとってジェイ・Zの時計をウォッチスポッティングするということは、彼という人物や好み、そして彼がより大きな世界でどのように自身を見つめているのかを、理解しようとする方法となった。

 だから今年のグラミー賞でパテックのグランドマスター・チャイムをつけていたとき、我々は注目したのだ。そしてアカデミー賞の翌日、ビヨンセと開いたアフターパーティの写真が公開され始めた。ロック・ネイション(Roc Nation)の上級副社長であり、ジェイ・Zの友人で写真家でもあるレニー・サンティアゴ(Lenny S)が、スマートフォンで撮影した2枚の写真を見て欲しい。これは時計業界やファンページで、本人がパテック フィリップの希少なヴィンテージのRef.2499を着用している姿の写真であり、瞬く間に拡散された。

Jay Z wearing a Patek 2499 at Gold Party
オスカー後のゴールドパーティにて、1980年製のパテック フィリップ Ref.2499を着用するジェイ・Z。Photo courtesy Alex Todd.

Jay Z wearing a Patek 2499 at Gold Party
とてもしっかりとクローズアップした写真だ。Photo courtesy Alex Todd.

 1980年代に作られたファクトリーメイドのチェーンリンクブレスレットを備えた、信じられないほど複雑で珍しいこの時計がジェイの手首に巻かれているのを見られるというのは非常に大きな出来事だった。同僚にこの時計を試着したことがあるかどうか聞いてみたが、誰も身につけた記憶はなかった。大物コレクターは金庫を開けて見せびらかすことを嫌がるため、今まで誰も見たことがなくても不思議ではない。

 私はその写真をInstagramで共有し、それでこの件は終わりかと思った。数分後、ふと見ると、あるプライベートの時計コレクターであり、世界でも有数のパテックとAPのコレクションを築いていることを知ることになった元ディーラーから、ふたつのWhatsAppメッセージが表示されていた。彼は以前、自分のコレクションについて話をしてほしいという、私の依頼を断っていた。それでも我々は連絡を取り合っていた。

「こんにちは、マーク。元気に過ごしているだろうか」

 あまりにもタイミングがよすぎた。そして、素晴らしいストーリーがあるという予感が確信したと同時に、ジェイ・Zがなぜこのようなアイコニックな時計のオーナーになったのか、その真相を探るべく、特に人に話したがらないであろうことを承知で調査を開始したのだ。

 こうしてジェイ・Zは、史上最も希少なヴィンテージのパテック フィリップを手に入れることになったのである。

なぜこの時計が問題なのか
パテック フィリップのRef.2499は、多くのコレクターから史上最高の腕時計といわれているモデルだ。

 パテック フィリップは1950年から1985年のあいだ、永久カレンダー(ひと月の長さとうるう年を考慮したカレンダーのことだ)、ムーンフェイズ、クロノグラフを組み合わせたRef.2499を継続して生産し、市場を独占していた。しかしそれは年産10本にも満たなく、計349本と多くは製造されなかった。

The Patek 1518 pink on pink that sold for a record price in 2021.
パテックのRef.1518。2021年に、同リファレンスとしては過去最高の価格である957万ドル(日本円で約10億9750万円)で落札された、別名“ピンク・オン・ピンク”。

 35年間も市場を支配し続けるというのは並大抵のことではない。しかしパテックにとっては目新しい機構ではなかった。1941年から1954年までブランドは、Ref.2499の前身であるRef.1518を生産しているが、その数はわずか281本である。Ref.1518のほうがオリジナルだが、Ref.2499のほうがまだ珍しい存在だったのだ。

アスプレイのサインが入った唯一のパテック フィリップ Ref.2499が、サザビーズで388万ドルで落札される

2018年のオークションで落札された、最も希少なRef.2499の1本を取材している。高価格を記録した個体だが、将来の価格がそれすら吹き飛ばした。ご覧あれ。

「私見ですが、このサイズであったからこそ、パテック フィリップの“マストハブ”である永久カレンダークロノグラフという技術が注ぎ込まれたのだと思います」と、クリスティーズの元時計部門国際責任者であり、パテックに関するあらゆるものの愛好家兼研究者にして、そしてパテック フィリップのヴィンテージおよび中古品を販売するコレクタビリティ(Collectability)の創設者であるジョン・リアドン氏(John Reardon)は言う。「ミッドセンチュリー時代のパテック フィリップにとって、2499のデザインは、永久カレンダー クロノグラフをより大きなケースにするということが自然な流れでした」

 しかし、より現代的で着用しやすい37.5mmというのは、美観、腕の上での物理的なバランス、視認性、着用感に優れるサイズであり、純粋なパテックらしさを残したデザインとも思っている。後のモデルでケース直径が2.5mm大きくなっているが、すべてにおいて取るに足らない。

 1990年代前半になると、多くの人によりRef.2499の駆け込み需要が発生し始めた。リアドン氏と同じくクリスティーズの元時計部長であり、最近までオーデマ ピゲのコンプリケーション部門長だった友人のマイケル・フリードマン(Michael Friedman)氏は、過去に2499を集めていた“開拓”時代について語る。文字盤と金属を多様に組み合わせた極上のピースたちはオークションやプライベートで、また情報通のコレクターや裕福なコレクターのあいだで争奪戦が繰り広げられていたという。

「これはパテック フィリップのコレクターにとって優良株中の優良株です」とリアドン氏は話す。「そして、市場で買うべき優良株がないときはどうなるのか? さらに高額な値段がつくのです。1950年から1985年のあいだに製造された349本のRef.2499のうち、現在まで公になっているのは半分強ほどです」

The Platinum ref. 2499
 最も希少なのは、プラチナケースでできたRef.2499の2本のうちの1本だ。この時計はもともと、パテック フィリップ・ミュージアムに保管される予定だったものである。だがこの時計は何らかの理由でブランドの手を離れてしまい、そして1989年4月にアンティコルムが主催したオークション、“The Art of Patek Philippe”に出品された。パテック創業150周年を記念したそのオークションでは、インフレに合わせて調整されたプラチナ製の2499が約61万5000ドル(日本円で約8485万円)で落札されている。当時としては驚くべき価格だったが、これから迎える2499の狂乱には到底及ばない。

オーデマが昨日言った明日がある
Ref.2499が流行り始めた90年代半ばの頃に、ショーン・“ジェイ・Z”・カーター(Shawn “Jay-Z” Carter)も流行りはじめた。

 1996年、自身のロッカフェラ・レコード(Roc-A-Fella records)レーベルからリリースした『リーズナブル・ダウト(Reasonable Doubt)』というアルバムで、ジェイ・Zは腕時計に目をつけていることを世界に知らしめた。しかし、ジェイ・Zは、世間が持っているものと同じものを所有するだけでは満足しないと知っていた。「想像のとおり、具体的なもので示せ、プラチナロレックスだ、俺たちはリースなんてしない」(Can I Liveの歌詞より)

 みんながスティールやゴールドのロレックスを買っているときに、ジェイ・Zは(不思議なことに)ド派手な時計やモバードについての歌詞の次にリーズナブル・ダウトのトラック、“Can I Live”でより贅沢することについて話していた。

Jay-Z on the cover of WatchTime Magazine
Courtesy WatchTime Magazine.

 実は彼の初期のアルバムには、時計に関する歌詞が12曲ほどある。オーデマ ピゲへの思いは、2001年リリースの『The Blueprint 2: The Gift and the Curse』に収録されていた「Show You How」で、“アリゲーターストラップ付きのオーデマ ピゲ”と叫んだことから本化的に始まったようだ。1999年にロカウェア(Rocawear)を設立し、その2年後にはリーボックとエンドースメントを契約するなど、彼はビジネスマン、起業家として本領を発揮し始めた頃だった。2004年にはデフ・ジャム(Def Jam)レーベルの社長兼CEOにも就任している。

 ジェイ・Zが、時計分野で初めて大きなビジネスを興したのは2006年のこと。ジェイ・Zはオーデマ ピゲと協力して、彼のサインを裏蓋に刻んだ100本限定のロイヤルオーク オフショアを製作した。

 このスペシャルエディションは最後ではない。2011年に『Watch the Throne』でウブロについてラップしたジェイは、その後の2013年に同ブランドとのコラボレーションが実現しており、ブラックセラミックとイエローゴールドの両方で、ショーン・カーター ウブロ クラシック・フュージョンをリリースした。それからビヨンセが、彼の43歳の誕生日に500万ドル(日本円で約4億円)ものダイヤモンドをセットしたウブロをプレゼントしたとも報じられている。

Hublot Sean Carter watch
ショーン・カーター ウブロ クラシック・フュージョン。Courtesy Hublot

 歌詞のリストと時計のリストは延々と続く。

 彼はHODINKEEに何度も登場しては、ラップシーンでは当たり前になった(いまやほぼ着用必須)、ユニークピースである数百万ドルものリシャール・ミルを着用し、そして彼はAPも着用し続けている。サプライズでJLCもあった。そしてもちろん、今もロレックスを愛用している。なかにはフランク・ミュラーがベーシックなデイトジャストを改造して永久カレンダーにした、ユニークなロレックスだったこともある。

 しかし近年、ヒップホップ界のリーダーは、希少でアイコニックなパテック フィリップに引かれているようだ。ジェイは背後から迫ってくるシーンを、彼が好きでつけているものを拾い始めているのを見ると、それは次のステップに進む合図にしかならない気がするのだ。

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 そしてパテック以外にどこを動かせばいいのだろうか? 何しろ、ビヨンセとジェイ・Zは、ティファニーとのパートナーシップを成功させているからだ。ビヨンセは黒人女性として初めてティファニーの象徴である128.54カラットのダイヤモンドをまとい、夫とともに広告に出演している。ティファニーは、パテック フィリップと長年にわたり友好的な関係を築いているブランドだ。その関係を祝して、パテックは最も人気の高い時計であるノーチラス Ref.5711に、ティファニーをテーマ(ティファニーカラーの文字盤)にしてから別れを告げた。そのうちの1本が、フィリップス社のオークションで620万ドル(日本円で約8億1505万円)で落札されている。その8日後に、ジェイ・Zは自分のものを身につけていた。

Jay-Z wearing a Tiffany-dialed Patek.
Credit: Netflix

 またジェイは、最も高価で複雑なパテックのプロダクトモデルである、グランドマスター・チャイム Ref.6300Gをつけているところも目撃されている。2019年のディディ(Diddy)の50歳の誕生日パーティや、妻がグラミー賞の最多ノミネート記録を更新した今年の授賞式など、これまでに何度も着用しているモデルだ。希少なパテックを身につけることは、群衆から自分を引き離して、喧噪のなかにある自身の居場所で落ち着くための方法のように感じられる。

Jay-Z at the Grammys
グラミー賞でのジェイ・Z。Photo credit: Getty Images

 それは言葉を選ばずにいうと、「私は自分が何者か知っているし、他の誰とも似ていない。あなたは私になりたいかもしれないけどなれない。私の時計でさえ、それを示している」ということだ。

問題の2499
プラチナ2499と同じ1989年のオークションにて、永久カレンダークロノグラフなど、いくつかのパテックの興味深いユニークピースがあった。なかでもムーブメント番号869,392、ケース番号2,779,153を持つ、Ref.2499/101Jが際立っていたもののひとつだ。

 この時計はサファイアクリスタルを採用しており、4つのシリーズのうち4番目のリファレンスに位置づけられる。また43年前の1980年4月25日に、最初のオーナーに売却されている。しかし末尾に“101”と記載があることで、35年間の生産期間中に、ケースにブレスレットを組み込んだ状態で工場を出た、4本以下のRef.2499のうちの1本という、特別な特徴を与えている。

The Art of Patek catalogue
“The Art of Patek”のカタログにて、2499と同様のブレスレットのRef.3448、“パデローン”が掲載されている。Photo by Tony Traina.

 ブレスレットのヴィンテージパテックは、今でこそ多くのコレクターから評価されるようになっているが、当時はもっと需要が少なかったのだ。通常、ユニークピースには高いプレミア値がつくものだが、ゴールドを編み込んだブレスレットという思い切ったデザインは、当時のパテックの控えめなエレガンスさと相容れないと判断され、インフレに合わせて調整された最終価格は20万ドル(日本円で約2760万円)弱に抑えられていたようである。

 2013年にムーブメント番号869,392を持つ個体が、クリスティーズのオークション会場に再び姿を現したとき、この時計の外観はまったく変わってしまっていた。この変更により1週間は、まったく新しいケースが使われただとか、偽造や、シリアルナンバーの重複といったありとあらゆる憶測が飛び交った。しかし、本当のところはどうなのだろうか。

The 2499/101J as it came to Chrstie’s.
2013年にクリスティーズにやってきた2499/101J。Photo courtesy Christie’s.

 真ん中には、前述した超プライベートなコレクターと元ディーラーが座っている。Instagramで“Only_TheRarest”と名乗っているトニー・カヴァック(Tony Kavak)氏は、約10年前に時計ディーラーの仕事を引退し、それから故郷のストックホルムとチューリッヒにあるショップで、新品やヴィンテージといった希少な時計を扱っていたが、その後息子に事業を引き継いでいる。しかしそれ以上に大切なのは、カヴァック氏は何十年にもわたってヴィンテージパテック フィリップ(およびオーデマ ピゲ)の熱心なコレクターだったということだ。

Tony Kavak’s Instagram Feed
トニー・カヴァック氏のInstagramフィード。

「私が初めてRef.2499を買ったのは、2001年の33歳の時でした」とカヴァック氏は言う。「今まで購入した時計のなかでも高価な部類に入りますが、非常にクラシカルなモデルでした。私はすぐに恋に落ちました。手首にもしっくりきたのです。しかし2499の歴史について読み進めると、この時計だけではなく、パテックのウォッチメイキングの時代にもすっかり魅了されてしまったのです」

 しかしそのオークションに関してカヴァック氏は注目されることを望まなかった。実は観察力のあるパテックファンが、アフターゴールドパーティのジェイ・Zの写真に早々に気づき、そしてカヴァック氏のコレクションを思い出してピースを組み合わせてから、Instagramに投稿したようである。その人たちはジェイ・Zのファンアカウントやジェイ・Zの友人らと並んで、先週からしょっちゅうカヴァック氏をタグ付けして投稿していた。秘密はすでに明らかになっていたのだ。

 また、これまでインタビューに応じたことのないカヴァック氏は、この希少な2499/101Jがジェイ・Zの手にわたった経緯について多くを語ろうとはしなかった。だが注意深く検討し、さらに慎重に言葉を選びながら、ストーリーと時計との歴史のギャップを埋めていくことに快く応じてくれたのである。カヴァック氏はジェイ・Zと彼のプライバシーに配慮して、ジェイ・Zとの時間や時計の入手経路についてほんのわずかな情報しか語らず、もちろん価格の詳細については一切触れなかった。

 しかし彼がシェアした内容は、ジェイ・Z、そして彼のおかげで、これまで以上にヴィンテージのパテック フィリップに注目し始める可能性がある瞬間だと示唆している。

2013年、2499/101Jが再び市場に現れたとき、落札者は1989年当時の価格を下回る22万ドル(日本円で約2150万円、インフレに合わせて調整後)強を支払い、比較的お得に手に入れている。

 ケースとムーブメント番号はアンティコルムのオリジナルと一致したのだが、ロットタイトルには“ラグは後から追加”という追記があったため、入札者のなかには怖気づいた人もいたようである。カヴァック氏の見解では、以前のオーナーはRef.2499を所有することを気に入っていたが、ブレスレットの主張が強すぎると考えていたかもしれないとのことだった。ある時、オーナーは革ベルトで着用できるようにラグを追加するなどしてほしいとパテック フィリップに直接依頼して、通常の時計と同じように、時代に合わせてケースを作り直した。今なら冒涜と言われるようなことだが、この要望は叶えられた。

ブラウン×ポール・スミスのコラボレートによる2本の新作ウォッチが登場。

ドイツプロダクトデザイン大手のブラウンと、イギリスのファッションブランドであるポール・スミスが再度コラボレートし、今度はスイス製ETAムーブメントを搭載したモデルを発表した。

新作ウォッチ1本目(BN0279SLPS)は、ETA 2895-2ムーブメントを搭載したスモールセコンドと日付表示付きの40mm径マットシルバーステンレススティール製モデルだ。2本目(BN0279GNPS)も40mm径だが、マットなガンメタルのSS製ケースで、ETA 2892A2ムーブメントを搭載する。どちらもレインボーの秒針と3時位置に日付表示を備える。またシースルーバックで、ムーブメントが見えるようになっている。

生成される各リファレンスは100本のみ。しかも950ドル(日本円で約14万円)もする。

さて、ブラウンが1989年に作った最初のアナログウォッチを振り返ってみよう。お察しのとおり、AW10は33mmというシンプルな3針ウォッチだった。実際にはディートリッヒ・ルブス(Dietrich Lubs)とディーター・ラムス(Dieter Rams)による、機能性と視認性というビジョンを反映してつくられたものだ。おそらくこれは、2023年にはもっと大きなフォントサイズが必要だという事実を示しているのではないだろうか? 私たちの目が弱くなってきている? 画面からくる疲れ? よくわからないけれど。最新版のAW10は3万8500円(税込)で購入できる。

私はブラウンならAW20がいい。トニー・トライナはかつて、それが史上最高の日付窓を備えていると主張していたことがある。本当の話なら大きい。

話を戻して、この新しい40mm径自動巻きモデルには、6時位置にポール・スミスのサインが刻印されている。すっきりとしたミニマルなルックだ。これらのデザインはオリジナル製品から大きく逸脱することはない。

我々の考え
ブラウンは実は地味なコラボキングだ。オフホワイトやハイスノバイエティともコラボしたことがあり、ハイプの力はお手の物だ。しかし今回ポール・スミスと一緒に仕事をすることで、少し違ったデモを見ることができたのは確かだ。もう少し大人っぽく、もう少し洗練されていて、 “クリーニング屋から戻ってきたら、すぐにシャツをしまって、色やシーン別に掛けておく”ようだ。

ブラウンとのコラボレーションは、ディーター・ラムスのコアデザインの信条から大きく逸脱することはない。クールかつクリーンで、ミニマルなのだ。

ブラウンの腕時計に950ドル(日本円で約14万円)払うように説得するのは少し難しいかもしれないが、これは限定モデルであり、また自動巻きムーブメントとメンズウェアの生みの親であるポール・スミスによるお墨付きをもらっているのだ!

Braun x Paul Smith Watch
基本情報
ブランド: ブラウン(Braun)
モデル名: ポール・スミス + ブラウン BN0279(Paul Smith + Braun BN0279)

型番: BN0279SLPS(スモールセコンド)、BN0279GNPS(センターセコンド)
直径: 40mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤: グレー
夜光: あり
防水性能: 5気圧
ストラップ/ブレスレット: 22mm幅ブラックPUストラップ

ムーブメント情報
Braun x Paul Smith watch caseback
キャリバー: ETA 2895-2、ETA2892A2
機能: 時・分表示、スモールセコンド、日付表示(スモールセコンドモデル)/時・分表示、センターセコンド、日付表示(センターセコンドモデル)
直径: 25.6mm
パワーリザーブ: 約42時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 27(スモールセコンドモデル)、21(センターセコンドモデル)

価格 & 発売時期
価格: 950ドル(日本円で約14万円)
発売時期: 発売中
限定: あり、各リファレンス100本

シチズン プロマスターより、ブランド初となる機械式GMTウォッチが登場。

プロマスターらしい頑強なパッケージにタフネスあふれるスペックを搭載した、パフォーマンスに優れるFlyer GMTウォッチが登場した。

シチズン プロマスターは1989年の登場以来、陸・海・空の分野で活躍するプロフェッショナルたちに向け、高い耐久性と卓越した機能性を有するアクティブな時計を作り続けてきたブランドだ。ダイヤルやリューズに施された矢印型のアイコンはより高い空の上、より深い海の底への挑戦を示すものであり、その意志は昨今のプロダクトに至るまで機能やスペックの面で徹底して反映されている。そんなシチズン プロマスターは2024年、生誕35周年を迎えた。そして記念すべき年の始まりを祝し、航空分野にフォーカスした“SKY”カテゴリに2本のニューモデルが投入される。それが、1月25日(木)に発売を控えたブランド初の機械式GMTウォッチ、メカニカル GMTだ。

プロパイロットの使用を視野に入れたSKYシリーズからは、これまでもワールドタイム機能を搭載したモデルが数多く輩出されてきた。だがそのなかに、4本目の針、すなわちGMT針をゼンマイの力で動かす古典的なGMTウォッチは見当たらず、例えば1994年にリリースされたナビホーク(SKYシリーズの記念すべき1本目だ)からしてすでに液晶とサブダイヤルを併用したデジタル制御のワールドタイマーを採用していた。あらかじめモジュールに登録されている都市の時刻をリューズとボタン操作で呼び出すことで、簡単に第二時間帯やUTC(協定世界時)を表示できる仕様だ。その後、2000年台には電波受信方式による調整を取り入れたモデルやGPS衛星電波時計搭載モデルなども続いたが、SKYシリーズとしては基本的に電子制御によるワールドタイム表示の形を取ってきた。

1994年のナビホーク。アナログ部とデジタル部の完全同期を図った多モーターコンビネーションウオッチ。UTC時刻のほか、アナログ部時刻、デジタル部時刻の3時刻同時表示が可能だった。

2016年のエコ・ドライブGPS衛星電波時計。GPS衛星電波時計、F900を搭載したモデルとして登場した。

まあこれは、プロマスターが高精度で高機能なプロフェッショナルツールにこだわってきたことの表れかもしれない。しかしブランド35周年にして、プロマスターは初めて機械式ムーブメントによって駆動する“Flyer”GMTウォッチを発表した。44.5mm径のソリッドなステンレススティール(SS)製ケースにグレーのメッキを施した固定式の24時間表示ベゼルが装着されていて、GMT針がこのベゼルを指し示すことで第二時間帯を知らせてくれる極めてアナログな時計だ。

フランジ部分は既存のSKYシリーズ同様に回転計算尺となっており、8時位置のリューズで操作することが可能だ。また、ベゼルの丸みを帯びた形状は航空機の機体をイメージしており、バンドのエンドピースに入れられた斜めのカットは翼断面に着想を得て空気の流れを表現したものだという。“プロマスター初の機械式GMT”という新たな取り組みを示す冠がついてはいるが、各ディテールはこの時計があくまでプロマスターのSKYシリーズに属するモデルであることを主張しているようにも見える。なお、ヘアライン仕上げを主体としたケースには要所にポリッシュによるミラー仕上げが施されており、全体のルックスにメリハリと高級感を生み出している。

防水性能は20気圧。搭載しているムーブメントはCal.9054で、最長約50時間のパワーリザーブと第2種耐磁を備えている。なお、今回のリリースでは、ベゼルのみにメッキを施したSSモデル Ref.NB6046-59Eと、ブレスを含めて全体にメッキを施したNB6045-51Hの2型が用意された。価格は前者が13万2000円(税込)、後者が13万7500円(税込)となっている。

ファースト・インプレッション
シチズンは同社のなかでも特に機械式時計に注力するブランドであるシリーズエイトから、2023年にFlyer GMT機能を搭載する880 メカニカルを22万円(税込)という価格でリリースした。2017年のチューダー ブラックベイ GMTの登場以来続いているFlyer GMT民主化の流れに、シチズンも合流した形だ(880 メカニカルについては、僕が去年、ジェームズが今年Hands-On記事を書いている。チェックして欲しい)。そして今回発売されるシチズン プロマスターのメカニカル GMTは、プロマスター SKYシリーズの正統進化というよりも、880 メカニカルに搭載されていたCal.9054を用いながら無骨なパイロットウォッチのパッケージで再構築したものだと僕は捉えている。

2003年のプロマスター エコ・ドライブ電波時計。

強いて言えば、メカニカル GMTは2003年にリリースされたプロマスター エコ・ドライブ電波時計を思い起こさせるデザインとなっている。針とインデックスの組み合わせにインナーベゼルの回転計算尺、リューズのローレット加工や特徴的なカッティングが入ったエンドピースなど、共通点は多い。だが、シチズンからのリリースには該当モデルの復刻やオマージュを匂わせる内容は一切見受けられない。直近のSKYシリーズを見てみても、デジアナ表示に43都市のワールドタイムを搭載し、それらをエコ・ドライブ光発電によって駆動させるハイスペックなモデルが目立っている。メカニカル GMTのデザインは、昨今の流れからするといささか唐突に見える。今作においてはプロマスター SKYシリーズのデザイン文脈を踏襲し、パイロットウォッチとしての“らしさ”を追求した結果、2003年のモデルに近いデザインに帰着したのではないかと考えている。

どちらかというとメカニカル GMTは、880 メカニカルに続く機械式GMTウォッチカテゴリの拡充に投じた一石としての意味合いが強いように思う。ムーブメントはそのままに、デザインの方向性や価格帯までも調整し、異なる層にアプローチをかけたというわけだ。880 メカニカルで特徴的だった情緒的な文字盤のあしらい(東京の夜景を表現したロマンチックなものだった)やツートンベゼルはその面影もなく、カラーと装飾を抑えたマッシブなデザインに終始している。

個人的には、この選択肢は非常に魅力的だと感じている。シチズンのFlyer GMTに価値を見出しつつも、880 メカニカルのコンセプチュアルなルックスがマッチしなかった人もいたのではないかと思っていた。(わかりやすいツールウォッチが好き、という僕の好みは置いておいても)シンプルなダイヤルデザインは、万人に受け入れられる受け皿として確実だ。また、税込で14万円を切る価格帯も注目すべきだろう。もちろんシリーズエイトは金属の表面仕上げに定評があるブランドではあるし、メカニカル GMTは固定式ベゼルのために第三時間帯まで表示できないといったデメリットもあるが、これまでFlyer GMTのベンチマークにされがちであったミドーのオーシャンスター GMTを大きく下回るプライスだ。GMTウォッチに求めるスペックが明確なら、メカニカル GMTは有力な候補となる。

ちなみに、個人的にはブレスまでブラックメッキで統一したRef.NB6045-51Hを推したい。リリースの画像では、サンレイダイヤルは控えめなグレーに見えるし、ダイヤル上の“GMT”表記やGMT針も全体に馴染むようモノトーンに抑えられている。まだGMT針の視認性にありがたみをおぼえるくらい旅をしていないからかもしれないが、視認性を重視する既存のSKYシリーズには見られないこのアプローチはかえって新鮮に映った。実際の色味がどうか、というところは実機で確認をしてみたい。

懸念すべきポイントがないわけではない。SKYシリーズとしては当たり前の寸法だが、直径44.5mmをどう捉えるかはあると思う。参考までに、ムーブメントを同じくする880 メカニカルは両回転式ベゼルを備えて直径41mmに収めていた(もちろん、880 メカニカルは10気圧防水でメカニカル GMTは20気圧防水と、ケースサイズはスペックにも反映されているのだが)。比較的小径が求められる昨今において、往年のパネライに迫るようなサイズ感は手首の上でどのように感じられるのだろう。写真を見た限りだがラグは短めに取られているし、厚みも12.7mmと少し控えめだ。より幅広い層に受け入れられる14万円以下のFlyer GMTにおいて、このサイズがどう影響するかは、タイミングがあれば追ってお伝えしたい。

基本情報
ブランド: シチズン プロマスター(CITIZEN PROMASTER)
モデル名: メカニカル GMT
型番:NB6046-59E、NB6045-51H

直径: 44.5mm
厚さ: 12.7mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤色: ブラック
インデックス: アプライド
夜光: 時分針、GMT針、インデックス
防水性能: 20気圧
ストラップ/ブレスレット: ステンレススティール

ケースバックには空のプロフェッショナルに向けて作られたことを主張する、パイロット用ヘルメットのイラストを刻印。

ムーブメント情報
キャリバー: 9054
機能: 時・分・秒表示、3時位置にデイト表示、GMT針による第二時間帯表示
パワーリザーブ: 約50時間(最大巻上げ時)
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 24

価格 & 発売時期
価格: 税込13万2000円(NB6046-59E)、税込13万7500円(NB6045-51H)

ジン レボリューションとコラボした暗闇で輝く新しいパイロットクロノグラフ。

レボリューションはジンとタッグを組み、イエローの夜光、スティールケース、クラシカルなベゼルなど、古いパイロットクロノグラフを比較的忠実に再現したクールな“ダークスター”を発表した。そして今回、両者は新しい(名前にやや矛盾があるかもしれない)“ブライトスター”をリリースした。ダークスターの製造量の倍にあたる300本が生産され、3600ドル(日本での入荷と価格未定)で入手可能なブライトスターには、数多くの魅力が詰まっている。

まず最初に、この新しい時計はよりモノトーンカラーでまとめ、43mmのSSケースはジン独自のテギメントテクノロジーで仕上げている。テギメントとは表面硬化の一種で、硬度(および耐傷性能)を標準的なSSの5倍にまで高めたものだ。テギメント加工されたこのSSはPVDブラックでコーティングされている。ほとんどの場合、SSに圧が加わるとひび割れや剥離、剥がれが生じることが多いため、(実用的にも審美的にも)特に優れた効果を発揮する。ベゼル、プッシャー、およびリューズも同様の加工が施されている。

今回の新作は両方向回転ベゼル、30分積算計、鮮明で読みやすい針、スーパールミノバインデックスを備えたパイロット用クロノグラフ(セリタ製SW510を搭載)だ。ダイヤルには(レボリューションのブランド名にふさわしい)明るく輝く星があしらわれており、サファイア風防を使用。ブンドストラップで提供されるほか、追加でNATOストラップも付属する。

この新しいジン 155S ブライトスターをひそかに見る機会を得たのだが、私がブラックケースの時計にどれほど心を奪われているか知っている人なら驚くことではないが、私の目を引いたことは確かだ。

Sinn x Revolution Bright Star
数人が時計を手に取るなか、新たにテギメント加工されたケースと、シリーズ史上初のサファイア、また完全にブラックアウトされた初の155モデルを評価していたのは私だけではないようだった。レボリューションはコーティングに力を入れているようで、最近リリースされたウニマティックとのモデルも注目されているようだった(そちらはもっと派手なブルーセラミックだが)。直径43mmと、確かに大ぶりだが、100mの防水性と大きくて読みやすいダイヤルを備えているため、目的に合わせてつくられたツールとして、空から海への移行がうまくいくはずだ(ただし、あまり早く移行する必要はない)。

基本情報
ブランド: ジン(Sinn)
モデル名: 155S レボリューションII(155 S Revolution II)

直径: 43mm
厚さ: 推定15.15mm(過去のリリースに基づく)
ケース素材: ブラックハードコーティングを施したステンレススティール(テギメント加工)
文字盤: ブラック
インデックス: アラビアインデックス、ミニッツトラック、両方向回転パイロットベゼル
夜光: あり、スーパールミノバ
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: ブンドストラップ(NATOストラップ付属)

Revolution Sinn Bright Star
ムーブメント情報
キャリバー: セリタ製SW510
機能: 時・分・スモールセコンド、クロノグラフ(30分積算計)
パワーリザーブ: 約56時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 27
追加情報: 高い耐磁性能

価格 & 発売時期
価格: 3600ドル(日本での価格未定)
発売時期: 発売中(日本への入荷未定)
限定: あり、世界限定300本

多様な時計を生み出すパルミジャーニ・フルリエらしい答えを出した。

パルミジャーニ・フルリエから、トンダ PF マイクロローター ゴールデン・シエナが登場。

2021年9月の誕生以来、控えめでピュアなミニマルスタイルを追求し続けるトンダ PFコレクション。なかでもトンダ PF マイクロローターは、特にパルミジャーニ・フルリエの大きな特徴であるエレガンスと奥ゆかしさの象徴、“不必要なものすべてを取り除き、本質のみを生かす”というブランドフィロソフィーを体現するモデルとして、時計をよく知る愛好家を中心に高く評価されてきた。そんなトンダ PF マイクロローターに魅力的な新作が加わった。

2024年の新作として発表されたのは、トンダ PF マイクロローターのノーデイトモデルだ。もともとミニマルなデザインのモデルではあるが、日付窓をダイヤルから取り去ることで、より一層表現の純度が増し、繊細なカラーリングと装飾が施されたダイヤルの存在が強調されている。この新作の発表に際し、パルミジャーニ・フルリエCEO、グイド・テレーニ氏は次のようなコメントを寄せた。

「新しくトンダ PF マイクロローターを製作するにあたり、私たちは“至上の純粋主義者”へ向けて、明瞭さを体現するものを届けようと努めました。奥ゆかしさとタイムレスな美しさに対するメゾンのビジョンが、すべての要素に反映されています。複雑な読み取りを省いたミニマルデザインと、ゴールデン・シエナのダイヤルカラーのニュアンスまで、すべてのディテールは美観的な純粋さにこだわって導かれています」

日付表示がないところも本作の特徴ではあるが、気品と穏やかな雰囲気を併せ持つダイヤルのゴールデン・シエナカラーも魅力のひとつだ。シエナとは、イタリア・トスカーナ州にあるシエナの町のことであるが、同時にかつて存在したシエナ共和国の採掘場で採取され、人類が最も古くから用いていたという土を原料とする天然顔料の1種も指している。パルミジャーニ・フルリエでは独自性を追求し、自然の彩りを表現するダイヤルとして、まさにゴールドのように煌びやかでありながら落ち着いたニュアンスのカラーリングで表現した。

そんなダイヤルカラーの魅力をさらに強調するのが、ブランドのシグネチャーモチーフであるバーリーコーン(麦の穂)ギヨシェだ。ブランドの基準に則り、ダイヤルには精巧なギヨシェが手彫りで施されているが、バーリーコーンの極小パターンが繊細な質感を与え、ダイヤル全面の広い面積にギヨシェが刻まれているため、針の存在が引き立っている。必要最低限な時・分表示のみを残し、パルミジャーニ・フルリエらしい視認性の高いクリアなダイヤルに仕上げられた。

そして搭載するのは、厚さ3.07mmのCal.PF703である。基本的には既存のトンダ PF マイクロローターに採用されているのと同じムーブメントで、マイクロローター式の自動巻き機構を備えており、地板にはペルラージュ、輪列を押さえるブリッジにはコート・ド・ジュネーブ、そしてプラチナ製ローターにもバーリーコーン装飾が施される。こうした装飾のほとんどは手作業で行われているといい、ダイヤルに引けを取らないほど丁寧に仕上げられている。

価格は既存のデイト付きSSモデルと同じ370万7000円(税込)で、発売は2024年初夏を予定している。なお、それほど数多く生産される時計ではないが、限定モデルではなく通常のコレクションとして展開される。

ファースト・インプレッション
冒頭でも触れたとおり、控えめでピュアなミニマルスタイルがトンダ PFコレクションの真髄と言える。であれば、“トンダ PF マイクロローターに日付は不要ではないか?”ということは、コレクションのローンチ当初から議論がされていた。時計好きのなかには日付不要派が多いことに加え、特にパルミジャーニ・フルリエの場合、そのデザインやスタイルはどちらかと言えばドレッシーな立ち位置にある。一方で、時計業界では圧倒的に日付表示ありがスタンダードだ。そうしたこともあり、日付は必要か不要かということは、ブランドのなかでも大きな関心事となっていたようだ。

先日公開したグイド・テレーニ氏のインタビューの際に、実はこの日付の有無について質問をしていた。氏によれば、最初のモデルに日付を付けたのは、日付がないとダイヤルの表情がのっぺりし過ぎるのではないかということで付ける判断に至ったという。もちろん日付表示を入れるにあたっては、12時側のPFエンブレムの対角線上にレイアウトしてバランスを取り、カレンダーディスクもダイヤルカラーに合わせるなど、繊細な配慮がなされた。

ただし、トンダ PFコレクションにおいて日付表示がないモデルは初めてというわけではない。過去にローンチしたトンダ PF GMT ラトラパンテやミニッツ ラトラパンテ、そして36mmモデルなどでは日付表示は省略されている。こうした既存のモデルでは日付表示がなくとも市場で好評だったこともあり、今回のゴールデン・シエナではユーザーの選択の幅を広げるためにノンデイトとしたそうだ。

デイトの有無以外の仕様は既存モデルも新作も変わらない。どちらもケースは直径40mmに対して、厚さ7.8mm、ムーブメントも直径 30.6mmに対して、厚さ3.07mmとまったく同じだ。40mmのノンデイトモデルはまだ本作のみだが、デイトの有無で選べるようになったのだ。

筆者はグイド氏の“ユーザーの選択の幅を広げるため”というコメントに、とても合点がいった。パルジャーニ・フルリエにおける最も大切なコアバリューについてグイド氏はインタビューのなかで、周囲にひけらかすのではなく、自身が満足を得ることを大切にする“プライベートラグジュアリー”が非常に大事だと答えていた。生産性やあまねく誰かのためではなく、ユーザーの満足を高めるために豊富な選択肢を用意する。まさにブランドが掲げるコアバリューを体現するような新作ではないだろうか。

日付は必要か不要か。パルジャーニ・フルリエはこの果てしない論争に、是か非かではなく、ユーザーの求めに応じてどちらも提供するという、最も理想的なカタチで決着を付けた。

基本情報
ブランド: パルミジャーニ・フルリエ(Parmigiani Fleurier)
モデル名: トンダ PF マイクロローター ゴールデン・シエナ(Tonda PF Micro-Rotor Golden Siena)
型番: PFC914-1020021-100182

直径: 40mm
厚さ: 7.8mm
ケース素材: ステンレススティール、プラチナ950製ローレット加工ベゼル
文字盤色: ゴールデン・シエナ(バーリーコーン模様の手彫りギヨシェ)
インデックス: ハンドアプライド、ロジウム加工
夜光: なし
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: ポリッシュ/サテン仕上げのSS製ブレスレット、フォールディングクラスプ

ムーブメント情報
キャリバー: PF703
機能: 時・分表示
直径: 30.6mm
厚さ: 3.07mm
パワーリザーブ: 48時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万1600振動/時
石数: 29
クロノメーター認定: なし
追加情報: プラチナ950製マイクロローター、バーリーコーン(麦の穂)模様のギヨシェ、コート・ド・ジュネーブ、ペルラージュ装飾

価格 & 発売時期
価格: 370万7000円(税込)