ジン レボリューションとコラボした暗闇で輝く新しいパイロットクロノグラフ。

レボリューションはジンとタッグを組み、イエローの夜光、スティールケース、クラシカルなベゼルなど、古いパイロットクロノグラフを比較的忠実に再現したクールな“ダークスター”を発表した。そして今回、両者は新しい(名前にやや矛盾があるかもしれない)“ブライトスター”をリリースした。ダークスターの製造量の倍にあたる300本が生産され、3600ドル(日本での入荷と価格未定)で入手可能なブライトスターには、数多くの魅力が詰まっている。

まず最初に、この新しい時計はよりモノトーンカラーでまとめ、43mmのSSケースはジン独自のテギメントテクノロジーで仕上げている。テギメントとは表面硬化の一種で、硬度(および耐傷性能)を標準的なSSの5倍にまで高めたものだ。テギメント加工されたこのSSはPVDブラックでコーティングされている。ほとんどの場合、SSに圧が加わるとひび割れや剥離、剥がれが生じることが多いため、(実用的にも審美的にも)特に優れた効果を発揮する。ベゼル、プッシャー、およびリューズも同様の加工が施されている。

今回の新作は両方向回転ベゼル、30分積算計、鮮明で読みやすい針、スーパールミノバインデックスを備えたパイロット用クロノグラフ(セリタ製SW510を搭載)だ。ダイヤルには(レボリューションのブランド名にふさわしい)明るく輝く星があしらわれており、サファイア風防を使用。ブンドストラップで提供されるほか、追加でNATOストラップも付属する。

この新しいジン 155S ブライトスターをひそかに見る機会を得たのだが、私がブラックケースの時計にどれほど心を奪われているか知っている人なら驚くことではないが、私の目を引いたことは確かだ。

Sinn x Revolution Bright Star
数人が時計を手に取るなか、新たにテギメント加工されたケースと、シリーズ史上初のサファイア、また完全にブラックアウトされた初の155モデルを評価していたのは私だけではないようだった。レボリューションはコーティングに力を入れているようで、最近リリースされたウニマティックとのモデルも注目されているようだった(そちらはもっと派手なブルーセラミックだが)。直径43mmと、確かに大ぶりだが、100mの防水性と大きくて読みやすいダイヤルを備えているため、目的に合わせてつくられたツールとして、空から海への移行がうまくいくはずだ(ただし、あまり早く移行する必要はない)。

基本情報
ブランド: ジン(Sinn)
モデル名: 155S レボリューションII(155 S Revolution II)

直径: 43mm
厚さ: 推定15.15mm(過去のリリースに基づく)
ケース素材: ブラックハードコーティングを施したステンレススティール(テギメント加工)
文字盤: ブラック
インデックス: アラビアインデックス、ミニッツトラック、両方向回転パイロットベゼル
夜光: あり、スーパールミノバ
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: ブンドストラップ(NATOストラップ付属)

Revolution Sinn Bright Star
ムーブメント情報
キャリバー: セリタ製SW510
機能: 時・分・スモールセコンド、クロノグラフ(30分積算計)
パワーリザーブ: 約56時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 27
追加情報: 高い耐磁性能

価格 & 発売時期
価格: 3600ドル(日本での価格未定)
発売時期: 発売中(日本への入荷未定)
限定: あり、世界限定300本

多様な時計を生み出すパルミジャーニ・フルリエらしい答えを出した。

パルミジャーニ・フルリエから、トンダ PF マイクロローター ゴールデン・シエナが登場。

2021年9月の誕生以来、控えめでピュアなミニマルスタイルを追求し続けるトンダ PFコレクション。なかでもトンダ PF マイクロローターは、特にパルミジャーニ・フルリエの大きな特徴であるエレガンスと奥ゆかしさの象徴、“不必要なものすべてを取り除き、本質のみを生かす”というブランドフィロソフィーを体現するモデルとして、時計をよく知る愛好家を中心に高く評価されてきた。そんなトンダ PF マイクロローターに魅力的な新作が加わった。

2024年の新作として発表されたのは、トンダ PF マイクロローターのノーデイトモデルだ。もともとミニマルなデザインのモデルではあるが、日付窓をダイヤルから取り去ることで、より一層表現の純度が増し、繊細なカラーリングと装飾が施されたダイヤルの存在が強調されている。この新作の発表に際し、パルミジャーニ・フルリエCEO、グイド・テレーニ氏は次のようなコメントを寄せた。

「新しくトンダ PF マイクロローターを製作するにあたり、私たちは“至上の純粋主義者”へ向けて、明瞭さを体現するものを届けようと努めました。奥ゆかしさとタイムレスな美しさに対するメゾンのビジョンが、すべての要素に反映されています。複雑な読み取りを省いたミニマルデザインと、ゴールデン・シエナのダイヤルカラーのニュアンスまで、すべてのディテールは美観的な純粋さにこだわって導かれています」

日付表示がないところも本作の特徴ではあるが、気品と穏やかな雰囲気を併せ持つダイヤルのゴールデン・シエナカラーも魅力のひとつだ。シエナとは、イタリア・トスカーナ州にあるシエナの町のことであるが、同時にかつて存在したシエナ共和国の採掘場で採取され、人類が最も古くから用いていたという土を原料とする天然顔料の1種も指している。パルミジャーニ・フルリエでは独自性を追求し、自然の彩りを表現するダイヤルとして、まさにゴールドのように煌びやかでありながら落ち着いたニュアンスのカラーリングで表現した。

そんなダイヤルカラーの魅力をさらに強調するのが、ブランドのシグネチャーモチーフであるバーリーコーン(麦の穂)ギヨシェだ。ブランドの基準に則り、ダイヤルには精巧なギヨシェが手彫りで施されているが、バーリーコーンの極小パターンが繊細な質感を与え、ダイヤル全面の広い面積にギヨシェが刻まれているため、針の存在が引き立っている。必要最低限な時・分表示のみを残し、パルミジャーニ・フルリエらしい視認性の高いクリアなダイヤルに仕上げられた。

そして搭載するのは、厚さ3.07mmのCal.PF703である。基本的には既存のトンダ PF マイクロローターに採用されているのと同じムーブメントで、マイクロローター式の自動巻き機構を備えており、地板にはペルラージュ、輪列を押さえるブリッジにはコート・ド・ジュネーブ、そしてプラチナ製ローターにもバーリーコーン装飾が施される。こうした装飾のほとんどは手作業で行われているといい、ダイヤルに引けを取らないほど丁寧に仕上げられている。

価格は既存のデイト付きSSモデルと同じ370万7000円(税込)で、発売は2024年初夏を予定している。なお、それほど数多く生産される時計ではないが、限定モデルではなく通常のコレクションとして展開される。

ファースト・インプレッション
冒頭でも触れたとおり、控えめでピュアなミニマルスタイルがトンダ PFコレクションの真髄と言える。であれば、“トンダ PF マイクロローターに日付は不要ではないか?”ということは、コレクションのローンチ当初から議論がされていた。時計好きのなかには日付不要派が多いことに加え、特にパルミジャーニ・フルリエの場合、そのデザインやスタイルはどちらかと言えばドレッシーな立ち位置にある。一方で、時計業界では圧倒的に日付表示ありがスタンダードだ。そうしたこともあり、日付は必要か不要かということは、ブランドのなかでも大きな関心事となっていたようだ。

先日公開したグイド・テレーニ氏のインタビューの際に、実はこの日付の有無について質問をしていた。氏によれば、最初のモデルに日付を付けたのは、日付がないとダイヤルの表情がのっぺりし過ぎるのではないかということで付ける判断に至ったという。もちろん日付表示を入れるにあたっては、12時側のPFエンブレムの対角線上にレイアウトしてバランスを取り、カレンダーディスクもダイヤルカラーに合わせるなど、繊細な配慮がなされた。

ただし、トンダ PFコレクションにおいて日付表示がないモデルは初めてというわけではない。過去にローンチしたトンダ PF GMT ラトラパンテやミニッツ ラトラパンテ、そして36mmモデルなどでは日付表示は省略されている。こうした既存のモデルでは日付表示がなくとも市場で好評だったこともあり、今回のゴールデン・シエナではユーザーの選択の幅を広げるためにノンデイトとしたそうだ。

デイトの有無以外の仕様は既存モデルも新作も変わらない。どちらもケースは直径40mmに対して、厚さ7.8mm、ムーブメントも直径 30.6mmに対して、厚さ3.07mmとまったく同じだ。40mmのノンデイトモデルはまだ本作のみだが、デイトの有無で選べるようになったのだ。

筆者はグイド氏の“ユーザーの選択の幅を広げるため”というコメントに、とても合点がいった。パルジャーニ・フルリエにおける最も大切なコアバリューについてグイド氏はインタビューのなかで、周囲にひけらかすのではなく、自身が満足を得ることを大切にする“プライベートラグジュアリー”が非常に大事だと答えていた。生産性やあまねく誰かのためではなく、ユーザーの満足を高めるために豊富な選択肢を用意する。まさにブランドが掲げるコアバリューを体現するような新作ではないだろうか。

日付は必要か不要か。パルジャーニ・フルリエはこの果てしない論争に、是か非かではなく、ユーザーの求めに応じてどちらも提供するという、最も理想的なカタチで決着を付けた。

基本情報
ブランド: パルミジャーニ・フルリエ(Parmigiani Fleurier)
モデル名: トンダ PF マイクロローター ゴールデン・シエナ(Tonda PF Micro-Rotor Golden Siena)
型番: PFC914-1020021-100182

直径: 40mm
厚さ: 7.8mm
ケース素材: ステンレススティール、プラチナ950製ローレット加工ベゼル
文字盤色: ゴールデン・シエナ(バーリーコーン模様の手彫りギヨシェ)
インデックス: ハンドアプライド、ロジウム加工
夜光: なし
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: ポリッシュ/サテン仕上げのSS製ブレスレット、フォールディングクラスプ

ムーブメント情報
キャリバー: PF703
機能: 時・分表示
直径: 30.6mm
厚さ: 3.07mm
パワーリザーブ: 48時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万1600振動/時
石数: 29
クロノメーター認定: なし
追加情報: プラチナ950製マイクロローター、バーリーコーン(麦の穂)模様のギヨシェ、コート・ド・ジュネーブ、ペルラージュ装飾

価格 & 発売時期
価格: 370万7000円(税込)

オメガは、ブランド独自の18Kムーンシャイン™ゴールドまたはセドナ™ゴールドを使用した、

新しいバイカラーのオメガ スピードマスター ムーンウォッチモデルを発表した。バイカラーのニューケースとブレスレットを除けば、基本的には私たちがよく知るムーンウォッチである。つまりゴールドのセンターリンクを持つブレスレットに42mmのケース、サファイア風防&シースルーバック、そしてオメガの手巻きマスター クロノメーターCal.3861を使用しているということだ。これらの新しいムーンウォッチは、どちらもセラミックのセラゴールド™製ベゼルを備えている。針と同様、ムーンシャイン™ゴールドバージョンはシルバーのサンレイダイヤルとムーンシャイン™ゴールドのインダイヤルを持ち、セドナバージョンにはセドナ™ゴールドのPVDコーティングが施されている。

新しいバイカラースピードマスターはともに279万4000円(税込)であり、オメガによれば、現在一部のオメガブティックで購入可能だという。

我々の考え
振り返ってみれば、オメガがまだツートンのムーンウォッチを出していなかったのは意外だった。オメガは2019年に、アポロ11号50周年記念モデルで豪華なフルムーンシャイン™ゴールドモデルを発表。そのあとツートンオプションを提供するのは自然な流れである。その記念限定モデルのあと、オメガは独自のゴールド合金を一般生産へと展開した。2022年には、既存のカノープス™ゴールド(独自のホワイトゴールド合金)とセドナ™ゴールド(ローズゴールド)のラインナップに、ムーンシャイン™ゴールド(イエローゴールド合金)のムーンウォッチを追加した。ツートンは、オメガが1983年に最初のツートンスピードマスターを発表して以来、バックカタログに掲載されてきたものでもある。

オメガがフルゴールドのムーンウォッチに継続的に取り組んでいることを考えると、標準のステンレススティール製ムーンウォッチと、それらのより豪華な金無垢製スピーディのあいだにツートンモデルを挟むのは自然な流れのように思う。フルゴールドのムーンウォッチはすべて650万円以上であるのに対し、標準的なソリッドバックのスピードマスター プロフェッショナルは107万8000円(税込)で手に入る。

新しいバイカラーのスピードマスターは、ツートンデイトナ(税込で293万3700円)よりも14万円ほど安く設定されている。スピードマスターとデイトナは直接比較できるものではないが(理由はいろいろあるが、ここでは省略する)、少なくとも言及する価値はあると感じた。

また既存のムーンウォッチとは異なり、これらはセラミックのセラゴールド™ベゼルが採用されていることも興味深い。セラミック製のリングを持ち、ブラックのタキメータースケールにはセラゴールド™が使用されている。これはセラミックとゴールドの混合物であり、アルミニウムインサートを使用していた従来のムーンウォッチモデルとは異なる。今後、この技術がより広く展開される可能性もあるだろう。

ともあれ、これらが新しいムーンウォッチのバイカラーモデルである。最初に画像を見た限り、私の目にはムーンシャイン™ゴールドのほうがより優れて見えた。シルバーダイヤルは主にSSを主体としたパッケージとマッチしており、ブラックベゼルとのコントラストも美しい。ただいくつかのプレス用画像だけで判断するのは、初デート前に行うオンラインデートのようなものだ。まずは実物を見てから判断しようではないか。

オメガ スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル。Ref.310.20.42.50.02.001(18Kムーンシャイン™ゴールド)、Ref.310.20.42.50.99.001(セドナ™ゴールド)。42mm径、13.2mm厚、ラグからラグまで47.5mm。サンブラッシュ仕上げの文字盤とセラミック製セラゴールド製ベゼル。METAS認定のマスター クロノメーターCal.3861を搭載。約50時間パワーリザーブ。50m防水。サファイア風防とサファイア製シースルーバック。望小売価格はともに279万4000円(税込)。

これまでにも限定モデルとしてキングセイコーの名が登場することはあったが、

しかし2022年のそれは待ち望まれたブランドとしての復活であり、キングセイコーの新たな夜明けとなる意義深い出来事となった。

初代キングセイコーが登場した60年代初頭は、東京が大きく様変わりしようという時期でもあった。街の風景ばかりでなく、生活習慣や社会のスピード感が変わっていくなか、新たな都市のライフスタイルにふさわしいモダンな時計が求められた。そんななか、デイリーユースにふさわしい実用性・デザイン・価格をバランスよく提供し当時の人々に受け入れられたのがキングセイコーだった。ブランド復活に当たり、かつてのキングセイコーが備えたものづくりの哲学も継承。新しいキングセイコーの開発のベースにはブランドらしさが最も強く打ち出されたモデルとして、1965年に登場した2代目のKSKが選ばれた。

KSKは平面で構成されたシンプルで潔いラウンドケースに、太い針とインデックス、ラグが力強さを伝える一方、12時位置には優美なライターカットのインデックスをさり気なく配し、個性をアピールした。こうしたオリジナルのモチーフを継承しつつ最新技術を盛り込み、現代的な美意識でその魅力に磨きをかけた。新設計のブレスレットはシャープな質感にも関わらずしなやかな動きで肌当たりも柔らかく、長時間つけても心地よい装着感を重視。かくして日常を豊かに彩る現代のエレガンスウォッチとしてキングセイコーは再構築されたのである。デビュー翌年には新たに日付表示を備えたシリーズも登場。さらに新たなダイヤルのカラーバリエーションや装飾スタイルを加えてきた。

そして2024年。キングセイコーの名が広まるなか、新たなコレクションとして導入された新作がKS1969である。

モチーフとなったのは、その名が示すように1969年に登場しブランドの歴史に名を残す45KCM。KCMとはキングセイコー カレンダー クロノメーターを意味し、10振動の45系手巻きムーブメントを搭載したことで時計愛好家から知られている。その高精度にふさわしい新たなデザインとして採用されたのが、それまで主流だった2代目のKSKのような多面構成とは異なる優美な曲線からなるよりドレッシーなケースであり、それはキングセイコーにおける第3の転換点に位置づけられるようなブランドを代表するスタイルになったのである。

丸みを帯びた優美な造形を現代によみがらせ、よりドレッシーに昇華

キングセイコーに加わったKS1969は、ラグが一体化した丸みを帯びたケースが特徴だ。これは60年代後半に登場し大きなデザイントレンドになった、いわゆる樽型のケースラインを思わせる。ともすればそのフォルムに目を奪われがちだが、キングセイコーにおいては薄さの追求こそが肝要と商品企画担当者の大宅宏季氏は言う。

「大前提として、キングセイコーは昔のモデルを復刻させるのではなく、かつてのキングセイコーから普遍的なデザインを見いだし、それを現代の技術でアップデートさせていくということがコンセプトとしてあります。その上で今回はよりドレッシーなスタイルに方向を定め、現代的な要素として自動巻きムーブメントを搭載しながら薄型で手首になじむデザインをテーマとしました。そこで選ばれたのが1969年の45KCMであり、キングセイコーの新たな表現として生まれたのがKS1969ということです」

デザイナーの松本卓也氏は45KCMのディテールについてこう説明する。

「こうした樽型のフォルムは、これまでにもかつてのキングセイコーなど60年代のほかのモデルでも採用していました。ただそのなかで当時の45KCMが目指したのは薄さだったのではないかと思います。それは横から見たときにも一目瞭然です。ケースのラインはラグの先端に向かって下げて細く絞っていくとともに、ケース上面の曲面曲率を変えることで視覚的に薄さを演出し手首にフィットする感覚も巧みにデザインしています」

一般的な造形手法では側面の厚みが残ってしまい、ただ型抜きしたように見えるが、有機的な曲面で構成し優美な薄さを表現した。

「どうしたら美しいプロポーションを持った時計が作れるか。数多ある樽型ラウンドケースで、キングセイコーならではの理想の造形を当時のデザイナーが追求していたことが伝わります」と松本氏。大宅氏がこれに続ける。

「2代目と呼ばれるKSK以降、搭載ムーブメントの多様化とともにデザインの幅も広がりました。そのなかで45KCMはそれまでの直線基調から曲線的な新しいデザインを取り入れ、型にはまらないクリエーションをした点で、以降のモデル展開に当時影響を与えたと言えます。だからこそ新しいキングセイコーの次なるモデルにふさわしいと考えたのです」

新作のKS1969では1969年の45KCMの特徴を継承しつつさらに磨きをかける一方、新しいキングセイコーならではの現代的なデザインを取り入れている。松本氏はこう説明する。

「12時のインデックスは、デザインコードとして今後ブランドのひとつのアイコンになると考えました。既存のコレクションではオリジナルにも見られたライターカットを再現しましたが、KS1969では新たに“矢羽根”をイメージしたV字形の立体的な模様を入れ、的に向かってまっすぐ突き進んでいく矢のように未来に向かって前進する躍動感を表現しました。オリジナルの時・分針はケースに合わせた繊細なシェイプの中央にラインの入る峰カットだったのに対し、KS1969では3面カットにしました。多面になることで光を受けて視認性が向上し、美観にもつながっています」

新設計した多列ブレスレットもコレクションに新たな魅力を添えている。駒の長さを短くすることで滑らかに動き、表面にカーブをつけてドレッシー感を醸し出す。これも60年代のキングセイコーのブレスレットからヒントを得たと言う。ちなみに販売されているオプションストラップとは互換性があるので、好みによって換装もできる。

特筆すべきはダイヤルだ。レギュラーでシルバー、パープル、グリーンを揃えるが、一般的なブラックやネイビーなどのカラーは今のところラインナップされていない。

「キングセイコー発祥の東京から着想を得たカラーコンセプトに基づき、シルバーは東京のビル群やモダンな風景を表現し、グリーンでは世界の都市のなかでも公園が多い東京の緑をイメージし、葉が重なり合う様を表現するためにグラデーションを施しています。まったくの新色となるパープル(江戸紫)は、江戸時代に京都の京紫に対して江戸ならではの紫を染め物で表現したことから生まれ、歌舞伎でも親しまれました。そうした由来から東京都のイメージカラーにも使われており、東京らしい色ということで選んでいます」と大宅氏。そしてそれぞれのカラーの美しさを引き出すのが仕上げと松本氏は説明する。

1日限りの時計イベントを楽しんだ。

インターセクトウォッチショーは2021年に誕生した。ノダス ウォッチがブルワリーで主催したシンプルな時計ミートアップであり、パンデミックの影響で45人に制限された参加者を迎え、そしていくつかの友好的なブランドが展示のために時計を提供した。

先週ダウンタウンのロングビーチで開催されたインターセクト ロサンゼルス 2024には600人以上の参加者が集い、私はそのうちのひとりだった。インターセクトはもともとロサンゼルスから始まり、オースティンやアトランタでもイベントが開催され、さらに多くの開催地が計画されているが、今回のイベントはこれまでで最大の規模であった。20以上のブランドが参加し、フォーメックス、ノダス、ジャックメイソンの3ブランドが共同でインターセクトの組織と運営を行った。

インターセクトは規模と野心を拡大しながらも、当初のブルワリーで行われていたミートアップの雰囲気をほぼ維持している。この日のショーは、一般的に社会通念上許容される時間より少なくとも1時間前には、コールドコーヒーではなくたっぷり注がれたビールが提供された。フードトラックからは30個のタコス・アル・パストールが注文され、真夜中を過ぎてもロングビーチに来ることができる人たちのために配られた。

少なくとも数回は、地元のコレクターとともにソファに座り、彼らが所有するヴィンテージやマイクロブランドウォッチなどが詰まったウォッチロールを広げる場面があった。これがインターセクトを一般的な“トレードショー”とはひと味違ったものにしている。依然として時計は販売されていたし、実際にいくつかは売れたが、どちらかというと気軽な集まりといった雰囲気である。

私は1日中カメラを構え、ブランドの展示はもちろん南カリフォルニア中から集まった時計愛好家たちの手首に輝く時計まで、あらゆるものを見て回った。会場であるブルワリーの2階にある風通しのいい空間では、クラフトビールや驚くほど美味しいニューヨークスタイルのピザが提供されるなど、リラックスした雰囲気である。賑わってはいたものの、しばらくぶらぶらしてから自身の時計について話をしたい人のためのスペースも用意されていた。ショー自体で利益を上げるのではなく、参加ブランドが運営費を分担しているため少しゆったりとしたムードであり、ショーを“価値あるもの”にしようとするプレッシャーも少ない。

次回のインターセクトショーは11月にテキサス州オースティンで開催される予定だ。詳細は彼らのサイトで確認してもらうとして、ここではロサンゼルス版の写真をお楽しみいただきたい。

ノダス×レイブンによるトレイルトレッカーは、参加ブランドから発表された今年の新作のなかで最もお気に入りの1本。ジェームズ(・ステイシー)もこちらのレビューで気に入っているようだ。ノダスとレイブンの両ブランドもインターセクトL.A.に参加していたようだ。

ノダスの創業者であり、インターセクトウォッチショーの発案者でもあるウェスリー・クウォック(Wesley Kwok)氏。

彼はノダスのセクターGMTを着用。

クリストファー・ウォード ベル カントは、このようなショーでは常に目立つ存在である。そのチャイムを聞くために人々が列をつくり、その音色はいつも驚きとよろこびをもたらす。

スタンダード H(Standard H)のウェスリー・スミス(Wesley Smith)氏は、ストラップ・ハビットとのコラボレーションによる新しいストラップをIWC トリビュート・トゥ・3705にセットし、身につけていた。

ヴェロ オープンウォーター 38

マットのスティールケースとセラコートベゼルが、楽しくも控えめな雰囲気を醸し出している。

ヤヌス・モーターサイクルズとのコラボレーションによるロリエ ランブラー(8月発売予定)。36mmのヘサライト風防、ミヨタ製ムーブメントを搭載し、価格は500ドル(日本円で約7万7000円)だ。ヴィンテージの雰囲気がトラブルなしで味わえる。

クリストファー・ウォード スーパーコンプレッサーの楽しいアレンジ。そう、これはダイバーが潜水する際、水圧を利用して裏蓋をガスケット(パッキン)に押し付けることで防水性を高める、本物のスーパーコンプレッサーケースである。

ミドーの“レインボーダイバー”(のちほど登場)をほうふつとさせるデザイン。

フォーメックス フィールド オートマティック。サンドブラスト仕上げのチタン製だ。

ワンちゃんも大歓迎。

アスター&バンクスの新しいシーレンジャー M2をチェックしている。こちらはふたつのリューズとインナー回転ベゼルを備えている。

最高のGMTマスター 6542。

この素晴らしいコレクターは、“Watches In The Wild: アメリカ時計大紀行 エピソード3”にて、別の時計を着用している様子を見ることができる。

ジャックメイソン ストラトオータイマー GMT

シールズの“シーストーム”モデル…これは素晴らしいスキンダイバーウォッチだが、私はブランドの次なるデザインに期待している。

先日リリースされたノダス キャニオン “スターリーナイト”は、マット・ファーラー(Matt Farah)氏とのコラボレーションにより誕生した。ブルーの文字盤は夜空からインスピレーションを得ており、ゴールドアクセントのパーツが少しドレスアップした雰囲気を加えている。

文字盤が主役だが、私はノダスがキャニオン(およびほかのいくつかのモデル)で採用しているリューズも気に入っている。しかも、このリューズはねじ込み式だ。

Mk IIは、おなじみのヴィンテージやミリタリークラシックに現代的なアレンジを加えたモデルだ。

カルティエのサントスを身につけながらクリストファー・ウォードの商品を眺めるのには、何かとても魅力的なものがあると思う。

ヴィンテージのロレックス デイトジャスト 1601、グレーの“ゴースト”ダイヤル。

新しいファーラー モノプッシャー GMT。

フォーメックス エッセンス“スペースゴールド”。フォーメックスとその姉妹会社であるデメックスは常に革新を続けており、その新しいゴールドメテオライトダイヤルはその一例である。

フォーメックスはメテオライトをカッティングしたあと、それを18Kローズゴールドでメッキする方法を考案した(メテオライトは鉄分を多く含むため電気メッキが可能なのだ)。

ゴールドといえばヴィンテージのゴールドホイヤー カマロだろう。

シェイ(Shay)氏がオリンピックの精神を感じさせるオメガ シーマスターを眺めている。

ジギーとノダス。

マリン インスツルメンツ スキンダイバー。ポーラーダイヤル、ブラックPVDケース、そして気の利いたベゼルインサートが、洗練された美しいダイバーズウォッチを生み出している。